359 神授スキルの真の効果
神授スキルの真の効果は、意識するとその瞬間に脳内に思い浮かんでくる。
これは……凄いな。
俺はその内容を、自分なりに脳内でまとめてみた。カード召喚術と二重取りには、それぞれ三つの真の効果が目覚めている。
その内容は、以下の通りだ。
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【カード召喚術の真の効果】
1.モンスターの覚醒
効果
・配下のランクを一時間二つ上昇させる。
※ただし最大SSランクまで。
・発動の代償で十日間ランクが三つ下がる。
※この代償は軽減されない。Fランクより下にはならない。代償中はこの効果の対象にできない。
備考
上昇するのは基礎能力や魔力などであり、新たなスキルを獲得するということは無い。見た目が変わることもないようだ。
真に恐ろしいのは、一日の発動回数に制限がないことであり、Cランクのモンスターに使えば基礎能力などとはいえ、Aランク相当になる。
実質Aランクモンスター数百体を瞬時に召喚できるとなれば、大抵の敵は成す術がないだろう。
あと使用することは少なそうだが、Fランクモンスターに使用すれば、ある意味代償無しで発動できたりもする。
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2.強制ランクアップ
効果
・本来必要なコストの倍を支払うことで、対象を強制的にランクアップさせる。
※ただし通常のランクアップとは違い、特殊なランクアップ先へと進化する可能性が著しく下がる。
※また通常のランクアップとは違い、本来その種族が持っていないスキルを獲得する可能性が著しく下がる。
※最大Sランクにまでランクアップが可能。
・対象の強さに応じて必要な神力が増大する。
・代償としてランクアップから三日間は、対象の基礎能力が半減する。
備考
名付けや絆を育む必要もなく、また実戦などの経験も不要になることから、その有用性は高い。
通常のランクアップでは、同ランクのカードが十枚必要になる。
だがこの強制ランクアップの場合、必要枚数が二十枚になるということだろう。
もちろん対象のランクより高かったり低かったりすれば、その分必要カード枚数は上下する。
また通常のランクアップよりかは、幾分か弱くなるようだ。まあ、苦労して進化させた個体と同等の進化をされたのでは納得しづらいので、これは逆によかったかもしれない。
あとは同種類のカードを1,000枚揃えれば、そこから二枚くらいは二ランクまで上げられる。CランクならAランクだ。
※進化させる1枚と消費する20枚の合計21枚必要なため。
ある意味、簡易版オーバーレボリューションといった感じだろう。
感覚が若干麻痺していて控えめに見えるが、十分に強力な効果である。
◆
3.瀕死のモンスターをカード化
効果
・対象を倒していなくとも、瀕死に近いダメージを与えることでカード化することができる。また精神的に追い詰める事でも可能。
・カード化に対するあらゆる耐性、無効化、対策などを無効化する。それによる悪影響を排除する。
・一ヶ月に一度だけ発動可能。ただし失敗した場合は一度にカウントされない。
・対象の強さに応じて必要な神力が増大する。
・発動後は代償としてカード化した対象のランクに応じたカードを捧げる必要がある。それまではそのカードを使用することはできない。
備考
肉体的ダメージと精神的ダメージの合算でも、一定のラインを越えていれば発動する。
また捧げるカードは、その対象と同じランクになるように点数をそろえる必要があるようだ。
例
対象=Sランク
必要合計点数100
↓
Sランク 1枚=100
Aランク 1枚=10
Bランク 1枚=1
Cランク 1枚=0.1
なのでAランク9枚、Bランク9枚、Cランク10枚で合計100点でも可能。
これの優れている点は倒した際に肉体の消失でカード化できなかったり、倒したあとに魂の消失や逃亡を防げる点だろう。
つまりこの効果を使えばモンスターである限り、俺のカード召喚術から逃れるすべはない。
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【二重取りの真の効果】
1.返還
効果
・二重取りで増やしたものを、返還することができる。返還したものの価値や能力によって変わるエネルギーを、ストックすることができる。
・ストックしたエネルギーは、条件緩和や追加進化の発動や代償に使用することが可能。
備考
これ自体には、代償は存在していない。他の効果を補助するもののようだ。またエネルギーをストックしておけば、他の効果の代償を実質無しにできる。
他の二つを使うのに実質不可欠なため、いらないものはどんどん返還していくべきだろう。
むしろエネルギーを蓄えるために、返還目的で二重取りを発動させる必要があるかもしれない。
◆
2.条件緩和
効果
・返還によって得たエネルギーを使い、手に入れたものに対して、二重取りを発動することができる。
※通常の二重取りを含めて一度発動した対象及び、増えた対象には発動することはできない。
※神授スキル及び、神授スキルの影響下にあるものに対しては、発動することができない。
・一日に三度発動することができる。
・発動する対象の希少価値や能力によって、必要な神力が増大する。
・代償として発動した対象に釣り合うまで、通常の二重取りの発動がスキップされる。また代償の未払いが続くと、支払いが完了するまでこの効果は発動しなくなる。
備考
ある意味自身が手に入れたものであれば、ほとんどのものに二重取りが発動できるようだ。
例として拾った石でも発動できてしまうほどに、条件が緩和されている。
またもしも奴隷などを買った場合、これによって二人に増やすことも可能だろう。もちろん、そんなことは面倒なのでしないが。
狙ったものに二重取りを発動できるのは、大変強力な効果といえるだろう。
しかし神授スキルであるカード召喚術には干渉できないため、カードは増やせない。なのでレフを二匹に増やすことも不可能。
おそらく神に関するものにも、使えない気がする。神授スキルに匹敵するか、それ以上のものには使えないと考えた方がいいだろう。
◆
3.追加進化
効果
・返還によって得たエネルギーを使い、二重取りによる進化をもう一段階行う。
※ただし進化限界を迎えている場合、発動しない。また称号や一部の対象には、効果を発動しない。
・一日に三度発動することができる。
・発動する対象の希少価値や能力によって、必要な神力が増大する。
・代償として発動した対象に釣り合うまで、通常の二重取りでの進化がスキップされる。また代償の未払いが続くと、支払いが完了するまでこの効果は発動しなくなる。
備考
たとえば、精神耐性(小)が対象の場合、最初の進化で精神耐性(中)になる。そしてこの効果により、精神耐性(大)になる感じだった。
また魔神剣を得た時にも進化限界を迎えていなければ、更なる進化ができた可能性がある。
しかし神力や代償の支払いが膨大になり過ぎる可能性もあるので、実際には不可能だったかもしれない。
また称号や一部の対象にも効果は発動しないので、魔神剣にはそもそも発動しなかった場合もある。
おそらくこの効果も、神に関するものには使えない気がした。神授スキルに匹敵するか、それ以上のものにも使えないと考えた方がいいだろう。
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以上が、神授スキルの真の効果の内容である。
代償こそあるものの、どれも強力な効果だった。何より、お目当ての効果もやはり存在していたようである。
何となく赤い煙は、倒してもカード化から逃れるような気がしていた。しかし瀕死のモンスターカード化によって、それも可能になるだろう。
どのような対策をしていようとも、それを無効化してカード化できるようだった。加えて倒しきらずとも、弱らせればカード化できるのも地味に助かる。
もちろん、他の真の効果も使い道は様々だ。俺と文香の目標である、最強の軍団を作るというのも達成しやすくなっただろう。
そして赤い煙との戦いも、大きく動くことになるのは間違いない。
故に俺はさっそく思考加速で新たな作戦を練ると、それを実行に移し、二体の配下を召喚した。
「出てこい」
種族:ホワイトキングダイル(グイン)
種族特性
【水光属性適性】【水光属性耐性(大)】
【威圧】【顎強化(大)】
【狂化】【悪食】【自然治癒力上昇(大)】
エクストラ
【イレギュラーモンスター】
スキル
【水弾連射】【ウォーターブレス】
【ライトウェーブ】【ライトベール】
【縮小】【魔力操作上昇(小)】
【魔力上昇(小)】【精神耐性(小)】
【ライトシールド】【ウォーターランス】
装備
・理性の首輪
・万能の鞍
種族:イリュージョンフェアリー(リーフェ)
種族特性
【幻妖精】【空属性適性】【空属性耐性(中)】
【精神耐性(大)】【フェアリーステップ】
【イリュージョンチェンジ】【貫通幻夢】
【魔法制御】【気配感知】【飛行】
【隠密】【アイテムポケット】
エクストラ
【ランクアップモンスター】
スキル
【サイコカッター】
装備
・偽装擬態のネックレス
更にそこへカード召喚術の真の効果である、モンスター覚醒を発動させる。すると黄金のオーラのようなものが、一瞬グインとリーフェの体へと宿った。
それによって、Aランクモンスターだった二体は、基礎能力や魔力が一時間だけSSランクへと至る。
「グォオ!」
「わぁ! ごしゅ、これすご~い!」
この変化には即座にグインとリーフェも気がついたようで、驚きと共に喜びの声を上げる。だが当然これには、赤い煙も気がつく。
「なんだなんだぁ!? まだ隠し玉があったのかぁ? それとも、消えたあいつが何かした結果得たものなのかぁ? あり得ないくらいに強化されたのを、俺様も感じたぜぇ!
でもよ~。調子に乗るなよなぁ! 俺様の奥の手が、あれだけだと思うなよぉ! 格の違いってやつを、みせてやるぜ~! ひひゃひゃ!」
そう言って前の幻の魔王への暴言を止めると、俺たちへと目を向けた。
しかし言葉ではそう言っているが、これまでとは違い、赤い煙からどこか真剣な雰囲気を感じる。
おそらくグインとリーフェが、SSランク級の力を手にしたことを感じ取ったのだろう。流石の赤い煙も、油断はできない状況と判断したのかもしれない。
ちなみにこの覚醒は、俺自身には効果が無さそうである。融合していても、それは変わらない。まあ元々上限であるSSランク級だと思うので、使えても意味は無かったかもしれない。
それと俺の手には現在、魔神剣もある。この戦いではまだ使ってはいないが、きっと赤い煙にも届くだろう。ここで一気に、畳みかけさせてもらう。
「今度こそ、最終ラウンドだ。お前との戦いも、ここで終わらせてもらう」
「新しい力を得たからって、イキりやがってよぉ~。むかつくぜぇ。でもよ~。最高に面白れぇなぁ! いいぜぇ。こいよぉ! ひひゃひゃ!」
俺と赤い煙はそんな風に言葉を交わすと視線をぶつけあい、一瞬の静寂を挟むと、互いに動き出すのであった。