SS プルヌ村の受付嬢
※推奨読了話数122話までくらい。
Q.プルヌ村の受付嬢って誰?
A.エルフの大陸にあるプルヌ村の冒険者ギルドにて、受付嬢をしていた女性。転移者である自称ハイエルフの元へ行くようにと、ジンに勧めた人物。名前は、キィーリア・プルヌという。
プルヌ村の冒険者ギルドは、閑散としていた。一応創造神の威光もあるので、存在だけはしている。
しかし利用者は少なく、依頼も掲示板等には貼っていない。何か依頼を受けるのであれば、受付嬢であるキィーリア・プルヌに直接訊く必要がある。
けれども依頼を受けに来る者は、かなり少ない。同様に依頼を出す者も、当然少なかった。
エルフは何かあるようなら、冒険者ギルドではなく、知り合いに声をかけることが多いからだ。
そもそもエルフは、種族的に人族よりも能力が高い。また主食となる食材も、フライングモスボールから楽に手に入る。
肉についても弓か魔法で、ホーンラビットを仕留めれば十分だ。更に言えば村の中では物々交換が主流であり、金銭は定期的に来る行商人に使われることが多い。
それ以外にも一応経済は回っているが、とても緩やかだ。故に、村の冒険者ギルドは閑散としているのがデフォルトなのである。
受付嬢も基本常駐しているのは一人であり、ギルドマスターは村長が兼任しているのが普通だ。
なので冒険者として活躍したい者は、ダンジョンが近くにある村か、大村や中央に行くしかない。
けれどもそんな閑散としていても、潰れないのが冒険者ギルドの凄いところであった。これには創造神の力も関係しているのだが、それは割愛する。
故にほとんど何もせずにいるだけで給料が出る、ホワイトな職場と言えるだろう。受付嬢のキィーリア・プルヌも、暇なときは昼寝をしていることがしょっちゅうだ。
しかしそれで罰せられることもなく、叱られることもない。用があれば、その都度起こされるだけだ。
人族の職場であれば一大事だが、寿命が長く基本ゆったりとしているエルフの村では、気にされることはない。
なのでその日もキィーリアは眠りこけていたのだが、そこへ偶然にも、ジンと名乗る少年が現れたのである。明らかに村外の者であり、訳アリの子供に見えた。
するとジンを見たキィーリアは、そこである有名な話を思い出す。
それは大村や中央、その周辺などでは力を持つ氏族がいるのだが、役に立たないと判断された子は放逐されてしまうのだ。
またその時の常套句が、Aランク冒険者になったら戻って来てもいいと言うのである。
だが仮に数十年~数百年かけてAランクになったとしても、碌なことにはならないことが多い。
氏族は特に選民意識が強く、一度放逐した者が戻って来ても、自身の判断を決して間違いだったとは認めないのである。
しかも嫌なことに、ランクの上げやすい大村や中央に行くことは禁止していることが多い。
これは建前としては、親戚に助けを求めさせない事や、他の氏族に情報を僅かでも与えないためとなっていた。
けれども実際にはどこかの村に永住して、氏族の世界にはもう二度と入って来るなということである。
故にAランクになってもし戻ったとしても、危険な役回りを押し付けられて、使い潰されるのがおちだった。
なのでそれを予想して実際に訊けば、ジンと名乗る少年は十五歳で、村名と氏族名は無いという。結果キィーリアは自身の予想が間違いないと判断して、胸を痛めた。
だからこそ氏族など関係なく、エルフに平等なハイエルフについて、話したのである。
けれどもジンはそれを拒否して、逃げ出してしまった。キィーリアが追いかけるも、ジンをすぐに見失ってしまう。
純粋な善意から言ったことだったが、自身の失敗にキィーリアは心を痛める。
キィーリアの中では、それだけ追い出された氏族にジンは執着があるのだと、そう判断をした。
であれば事を急かさず、まずはゆっくりと心を開くように誘導するべきだったと自責の念に駆られる。
なのでキィーリアは周囲の知り合いに声をかけて、ジンの捜索をお願いした。
だが結局最後までジンは見つからず、近場の村の情報も集めたが、足取りが全く掴めずじまいである。
ここまで情報が無いのであれば、村を避けているのだろう。飢えることは無いとは思うが、少し遠くに行けばDランクのモンスターがいるので心配だった。
キィーリアはいなくなったジンのことを思いながら、どうか無事でいてほしいと祈る。そしてまた会う時があれば、自分の安易な発言を謝ろうと決意するのだった。




