SS デガロVSカボン
※推奨読了話数077話までくらい。
Q.デガロって誰?
A.ハパンナモンスター園を任されている人物。本編だと数行くらいしか登場していない。
Q.カボンって誰?
A.モンスター園を襲撃した人物。二次予選で主人公に敗れている。
私の名前はデガロ。このハパンナモンスター園を任されています。
今でこそ中年になり脂肪を蓄えてしまっていますが、昔はテイマーとして名をはせていました。
これでも、ハパンナの街では五本の指に入る実力者です。まあ流石に、ハパンナ子爵様の元にいるディーバさんには負けますがね。
それに私は、モンスターバトルの方はもうほとんど引退しているようなものです。なので昔より、実力は下がっているでしょう。
しかしそれでも、この状況下ではそうも言っていられません。
「ちくしょう、何で俺様がこっちなんだよ。イライラするぜ」
そう言って現れたのは、スキンヘッドをした巨漢の男です。
その背後には、ここら辺ではまず見かけないCランクモンスター、リビングアーマーを連れていました。しかもその数は、五十体もいます。
加えてリビングアーマーたちは、よく分からない道具を持っているようでした。黒っぽく、長い杖のような何かです。
よく分かりませんが、とても嫌な予感がしますね。それにこの男の態度は、明らかに普通ではありません。
男がやって来たときから、それはふつふつと感じています。
長年の感とでも言いましょうか、これから男がとる行動がおおかた予想できました。
なので私は、事前に従業員たちに預かっているモンスターたちの避難を命じています。またこのことを、衛兵の詰所へ知らせに行ってもらいました。
私のすべきことはこの男の足止めと、可能であれば撃退になります。従業員と預かっているモンスターたちのために、私は逃げるわけには行きません。
そうして私は、従えている自分のモンスターたちを連れて、男と対峙しました。
「初めまして。私はこのハパンナモンスター園を任せていただいている、デガロと申します。このたびは、どのようなご用件でお越しになったのでしょうか?」
私は口調では穏やかでしたが、既に臨戦態勢です。なので男の次の言葉を聞いて、すぐに動くことができました。
「はんっ、そんなことはどうでもいい。モンスターを含めて、てめえらには死んでもらうんだ――」
その瞬間、私はモンスターたちに命令を出します。この数を相手に勝つのは、まず不可能でしょう。なので、ひたすら時間稼ぎに徹しさせます。
「てめっ!? まだ話してる途中だろうが! 決めたぜ! おめえら、まず邪魔なモンスターどもをブチ殺せ!」
「――!?」
男がそう言った瞬間、リビングアーマーが動きました。あの持っていた物から、何かが飛んできます。それにより、なんと私の使役しているモンスターの大半がやられてしまいました。
何という威力でしょう。Cランクモンスターが、出せる威力ではありません。これはおそらく、生きて帰ることはできませんね。
ランクの低いモンスターがこれを受ければ、まず助からないでしょう。高ランクモンスターでも、受ければただでは済みません。
またリビングアーマーはそもそも、守りが得意なモンスターです。なのでまさか、ここまでの高火力を出せるとは予想できません。
それにこれだけの数のモンスターを、男が一度に扱えるとは思ってもいませんでした。やりようは、いくらでもあると考えていたのです。
ですがそれも、一言で済むのなら話は別でしょう。見たことも聞いたこともない物に警戒はしていましたが、これはまず所見ではほぼ避けられません。
まさかあれほどの速度で、一斉遠距離攻撃をしてくるとは……。大変、おそろしい武器です。
しかしだからこそ、この男をこのまま通す訳には行きません。通してしまえば避難途中の者たちに、大きな被害が出ることは間違いないでしょう。
私にも、テイマーとしての意地があります。見た限りこの男がモンスターを従える者として、三流なのは経験からよく分かりました。
これだけの数とランクのモンスターを使役できているのは、何か理由があるのでしょう。
それについては、知ることができません。ですがそれは、もういいのです。私はこの命がある限り、時間を稼ぐ。それがもう、全てなのですから。
「ここから先は、通しません」
男に対して、私は強くそう言い放ちました。
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そうして最終的に私は、十四体のリビングアーマーを倒しました。時間もそれなりに稼げましたし、よくやった方でしょう。
ですがこの男がこれからする事を思うと、悔しくてなりません。私は消えゆく自分の命を感じながら、上空をぼんやりと眺めていました。
するとそこへ、何かがやってきます。
そして奇跡が起きたのか、あのリビングアーマーたちが鎖に攫われて、上空で爆発しました。
「ああ……よかった……」
私の時間稼ぎは、無駄ではなかったようです。これでもう、思い残すことはありません。
そうして私の意識は、闇に飲まれました。




