SS ディーバの過去
※推奨読了話数058話までくらい。
Q.ディーバって誰?
A.ハパンナ子爵に仕えている兵士長であり、元冒険者のサモナー。モンスターを従える者の中では、ハパンナの街で五指に入る。主人公とは、モンスターバトルをしたこともある。
俺の名前はディーバ。ハパンナ子爵の元で兵士長として働いている。
見た目はぱっとしないおっさんだが、これでも昔は凄かった。
俺は兵士長になる以前まで、Aランク冒険者として活躍していたのである。
仲間たちと共に、リジャンシャン樹海やダガルマウンテンへと挑んだ。
そこで苦戦をしながらも俺たちは成果を残し、評価を上げていった。
強いモンスターも使役できたし、順風満帆な冒険者生活を送っていた感じだ。
あの時は俺たちなら、どこまでも行けるという全能感に満ちていた。
と言っても、それからAランク冒険者になってすぐに、引退をしたんだけどな。
理由はAランクの依頼を受けた時に、死にかけたからだ。
実際俺は、Bランク冒険者の期間が長い。それは仲間たちも同様だった。
本来俺の実力は、Bランク冒険者が精々だったのだろう。
Aランクまで上がれたのは、実力以上に運が良かったんだ。
故にこのまま続ければ、俺たちが命を落とすのは間違いない。だから冒険者としては、ここまでにした感じだ。
しかしそうは言っても、俺はこのハパンナの街では五本の指に入る強者でもある。それは、Bランクのロックゴーレムを使役しているからだ。
Bランクモンスターは、並みの才能では使役することはできない。大抵は良くてCランクモンスターまでが、精々だ。
なのでBランクモンスターであるロックゴーレムを使役しているだけで、俺は優れたサモナーだと断言できる。
けれどもまあ、それでも上には上がいるんだけどな。
以前俺は王都の本選にも出場したが、Bランクモンスターを複数使役している者や、Aランクモンスターを従えている者たちと出会った。
自分の身の丈ってやつを、ここで思い知らされた感じだ。そうした者たちが、国の代表となるのだろう。
だがこの王都の本選に出場しただけで、大きな実績なのもまた事実である。
実際俺は、騎士になる事も可能だった。騎士は有事の際の戦力としての役割に加えて、村や小さな町の領主代理を兼務する、半分貴族みたいな役職だ。
あとは敵国に最前線で立ち向かう、南部騎士団と東部騎士団からのオファーが来ていたのである。
そのルートで活躍すれば、男爵などの本当の貴族になれたかもしれない。
だがその代わりに責任はもちろんのこと、より高い命の危険が付きまとう。
名声や金は手に入るが、そんな重荷は御免だね。正直金銭は、十分貯めることができていた。
幼馴染だった妻とも結婚できたし、息子も生まれている。なので俺は地位や名声ではなく、安定を選択した。
兵士長になったのは、何もしないでダラダラ過ごすのは暇すぎたし、何より息子から尊敬される父親でありたかったからだ。
故に俺は半分趣味のような形で、兵士長の座についている。
必死で働いている周りには申し訳ないが、気楽に働かせてもらう。もちろん、やるからにはサボったり不正はしない。ただ、肩の力を抜くだけだ。
なのでこのまま気楽に、定年まで働いて行こうと思う。俺の実力なら、それが可能だった。
しかしそんなある日のこと、俺の目の前に彼が現れる。そう、ジン君という名の少年に、俺は出会ったのだ。
どうやらこのジン君は、この街のダンジョンを踏破したらしい。
その実力がつい見たくなって、俺はジン君と模擬戦をすることにした。
正直負けるつもりはなかったが、俺はあっさりと敗北をしてしまう。
これには、流石に驚いた。
何となく他にも隠し玉を持っている気がするし、実力は既に俺以上だろう。見た目の年齢からして、これは将来が期待できる。
ジン君のような者が、国の代表として活躍するのだろう。
これからジン君がどのような活躍をしていくのか、とても楽しみだ。
実際俺はこの後、ジン君の活躍を目の当たりにすることになる。
ジン君は俺の想像を、どこまでも越えていく少年だった。




