334 ファントムワールド ⑫
※すみません。前回が長かった代わりに、今回は少し短いです。
廊下を進んでいると、少しして十字路に辿り着く。そして左からはゲヘナデモクレス。右からはレフがやってきた。
「ようやくの再会であるな! 我は当然――」
「にゃあん!」
するとゲヘナデモクレスが何か言う途中で、レフが俺に飛びついてくる。当然俺は、それを受け止めた。ちなみに邪魔な爪は消している。
「無事だったようだな。よかった」
「にゃにゃん!」
「なっ! うらやま――けしからん! この状況を理解しているのか! この駄猫めぇ!」
「ふにゃ゛ぁ゛!」
この状況では不謹慎だと思ったのか、ゲヘナデモクレスがレフの尻尾を掴み持ち上げた。
「すまない。そういう状況じゃなかったな。レフを下ろしてやってくれ」
「ぬぅ。わ、わかればよいのだ!」
「フシャァ―!」
俺の言葉にゲヘナデモクレスは頷くと、レフを床に下ろす。対するレフはというと扱いに不満があるのか、毛を逆立ててゲヘナデモクレスに唸っていた。
とりあえずレフを宥めると、俺たちは情報交換をし始める。
それによりゲヘナデモクレスとレフは、やはりアルハイドの言葉通り、何もない真っ暗な空間にいたようだ。
何をしても抜け出すことが出来ずに、途方に暮れていたところ、ついさっき突然廊下へと移動したらしい。
おそらくそれは、俺が廊下に移動したタイミングと同じだろう。これもアルハイドが言っていた通り、解放条件は俺がこの廊下に辿り着くことだったのだと思われる。
特に敵なども現れなかったみたいなので、本当に隔離されていただけのようだ。
そして俺は同時に、気になっていたことをゲヘナデモクレスに訊いてみる。
「そういえば戦闘中に魔剣が突然現れたんだが、ゲヘナデモクレスが送ってくれたんだよな? 声も聞こえてきたし、いったいどうやったんだ?」
隔離されていたのにもかかわらず、どうやって俺の元に魔剣を送れたのか、とても気になっていた。
それに対してゲヘナデモクレスは少々沈黙しながらも、数秒後に回答し始める。
「……おそらく、我の想いが通じたのであろう。な、汝は一応我の創造主であるからな! 我の知らぬ場所でやられていたのでは、たまらぬのだ!
その魔剣については、しばしの間汝に預けておこう! 我といずれ決着をつけた時に汝がもし勝利したのであれば、正式にくれてやろう!」
「……そうか」
「そうである!」
何か隠し事をしているような気がするが、無理に訊くのは止めておこう。
勘違いしそうになるが、ゲヘナデモクレスとは一時休戦しているような状況だ。いずれは戦う運命にある。
だとすれば、できる限り手の内は隠しておきたいのだろう。しかしあの魔剣のおかげで助かったのも事実だ。そのことには、とても感謝している。
「わかった。深くは訊かない。でもありがとな。あの魔剣が無ければ、かなり危なかったかもしれない」
「ふ、ふははははははははは!! あ、あれくらい大したことではない! わ、我にかかれば、造作もないことである!」
ゲヘナデモクレスはそう言うが、とてもうれしそうだった。おそらくあの魔剣は、会心の出来だったのだろう。魔剣が評価されて、気分が良かったのだと思われる。
「ニャニャ……」
「ん? ああ、そうだな。そろそろ行こう」
するとレフが俺の足を軽く叩き、先に行くべきだと促してきた。
レフの言う通り、情報交換は終わったので先へと進むべきだろう。いつまでもここにいても、仕方がない。
また作戦は事前に決めた通りにして、あとは臨機応変に戦うことにした。ここで作戦を決めるのは、流石に愚策だろう。赤い煙は間違いなく、こちらを監視しているに違いない。
繋がりを使っての作戦会議も、最低限にしておく。もしかしたら、こちらの方も筒抜けである可能性もある。
それに、油断は一切できない。あのフレッシュゴーレムを、時間稼ぎで使うほどだ。赤い煙は、それ以上に強いと考えた方がいいだろう。
魔神剣が増えたものの、俺の手札は依然として少ない上に、フレッシュゴーレムとの戦いは、赤い煙に当然見られていたと思われる。手の内は、かなり知られているはずだ。
実力と情報、どちらも不利という可能性が高い。これは、厳しい戦いになるだろう。
しかしそれでもゲヘナデモクレスとレフが、ほとんど消耗していないのが救いである。だがそれ込みでも、赤い煙が有利なのは間違いない。
でなければ先に、ゲヘナデモクレスとレフをどうにかして、始末していたはずだろう。その点で言えば、生存していたのはまだ赤い煙が、こちらを舐めている証拠かもしれない。
それと一応いくつか奥の手は考えてあるが、果たしてどこまで通じるかどうか……。正直、勝率はよろしくないだろう。様々な面で、こちらが不利な状態だ。
だがそれでも、立ち向かうしかない。ここまできて、逃げるという選択は無いし、逃げられないだろう。俺たちか赤い煙、どちらかが滅びるまで戦うしかない。
そうした思考を回しながら進んでいると、ようやく目の前に扉が現れる。それは両開きの巨大な扉であり、既に開いていた。
だが内部を見ることはできず、まるでシャボン液の虹色の膜が張ってあるかのように、波打っている。
どう見てもこの先にボス、いや今回の場合は、ラスボスが待っているような雰囲気だな。
俺は一度ゲヘナデモクレスとレフに視線を向けたあと、軽く深呼吸をする。
「行くぞ。最後の戦いだ!」
「ふはは! まかせるがよい! 我の力を見せてやろう!」
「にゃにゃん! にゃふふん!」
ゲヘナデモクレスとレフは、まるで緊張していないかのように、声を上げた。頼もしい限りである。
思えば、この大陸に来てから様々な事があったな。長かったようで短い冒険も、これでお終いだ。
絶対に、赤い煙を倒してみせる。
そして俺も気持ちを引き締めると、扉の先へと足を踏み入れるのだった。
最新話に追いつきました。
明日1話更新して、そこからは隔日更新になります。
引き続き、モンカドをよろしくお願いいたします。




