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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第九章

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329 ファントムワールド ⑧


 だが生憎(あいにく)、一撃で倒す訳にはいかなかない。ヤミカとの約束で、勇者たちの魂を回収する必要がある。


 故に発動したのは、文字通りV字に斬り裂く剣系の上級スキルだった。


 またこのスキルの優れているところは、僅かに距離やサイズ差があっても、相手に会わせて斬撃を変えるところだろう。


 結果としてフレッシュゴーレムの両手両足を、綺麗に切断することに成功した。


 そして魔神剣から片手を離してマジックシックルを発動すると、ファストシックルを続けて使用する。


 ファストシックルはダメージが0.7倍に落ちるが、その代わりに攻撃速度が劇的に上昇するスキルだった。


 なので手足を失ったことに理解が追いついていないフレッシュゴーレムから、魂を回収するのは容易である。


 だが流石にそこまでくれば、フレッシュゴーレムも反撃に出てきた。


「ラ゛イ゛ト゛ア゛ロ゛ー」


 しかしその言葉が(むな)しく周囲に響くだけで、スキル自体は発動しない。


 おそらく不完全な勇聖(ゆうせい)なる冥戦(めいせん)の効果により、ダメージを受けすぎたことで、スキルの一部が使えなくなったのだろう。


 確か、『一定のダメージを受けるたびに、魂が剥がれ落ちて弱体化していく。また末端のスキルから使用不可能になっていく』という効果があったはずだ。


 「ラ゛イ゛ト゛ア゛ロ゛ー! ラ゛イ゛ト゛ア゛ロ゛ー! ラ゛イ゛ト゛ア゛ロ゛ー!」


 しかしそれを理解していないフレッシュゴーレムは、何度もライトアローを連呼する。だが当然、それで発動することは無い。


 俺はそんな中でも薄皮を削るようにして、少しずつフレッシュゴーレムにダメージを与えていく。


 この魔神剣であれば何も効果を付与しなくても、普通に攻撃が通った。


「ラ゛イ゛ト゛レ゛ーサ゛ー! ラ゛イ゛ト゛ウェ゛ーフ゛! ラ゛イ゛ト゛ク゛ラ゛ッ゛シュ゛! ラ゛イ゛ト゛ア゛ーマ゛ー」


 そして無い知恵を絞ったのか、次々に別の攻撃魔法を唱えるフレッシュゴーレム。


 しかしその時にはもう、ほとんどのスキルが使用不可能になっていた。


 俺が攻撃し続けていたこともそうだが、ゾンビとはいえこの出血量だと、流石に支障がきたすのだろう。


 周囲はフレッシュゴーレムの血だまりで大変なことになっており、同時に酷い悪臭が漂っていた。


 さて、そろそろフレッシュゴーレムを倒せそうだが、残りの魂を全て回収できるかどうかは、たぶん賭けになりそうだな。


 するとそう思った直後だった。フレッシュゴーレムの中にあった勇者たちの魂が、三つに分裂したのである。


 おそらく魂が剥がれすぎて、一つに纏まることができなくなったのだろう。しかしこれは俺にとって、最高の出来事だった。


 なぜなら三つに分かれたことで、それぞれの魂が体内で流動し始めたからである。


 これなら間違いなく、盗賊の極意の効果範囲だ。俺はその隙を見逃さず、慎重に攻撃を行っていく。


 そして三つの内の一つをまず奪う。見ればフレッシュゴーレムから、聖女の慈愛の神授スキルなどが消えていた。


 おそらく今の魂は、聖女のものだったのだろう。それが無くなったことで、聖女の神授スキルや所持してたスキルなどが、無くなったのだと思われる。


 続いて次に奪い取ったのは、勇者の魂。この時点で、俺は一つの賭けに勝っていた。


 理由は単純であり、残った大戦士の本能には、一度だけ死亡ダメージから生き残る踏ん張りのスキルがあるからだ。


 もはや勇者と聖女の力を失ったフレッシュゴーレムでは、威力の低い攻撃でも命取りになる。魂を回収する前に倒してしまったら、本末転倒だった。


 故に俺はまるで動物を撫でるように、マジックシックルを消した素手ではたいていく。


 直接攻撃が発動のキーになっているので、これで十分に盗賊の極意が発動するだろう。


 するとそのとき、残ったのが女戦士の魂だったからか、フレッシュゴーレムが最後にこう口にした。


「落゛ち゛た゛肉゛は゛、も゛う゛食゛へ゛な゛い゛」


 それが女戦士にとっての、一番の心残りだったのだろう。


 こうして最後の魂も、盗賊の極意によって奪うことができたのである。


 しかしそれでも、フレッシュゴーレムは生きていた。魂の無い、植物状態とも言える状態で。


 また途中で気がついたのだが、フレッシュゴーレムのスキルが使用不可能になると、スキルの文字が灰色になっていたのだ。


 そしてそれは神授スキルと称号、不完全な勇聖(ゆうせい)なる冥戦(めいせん)以外の全て(・・)に適応されていたのである。


 つまり何が言いたいのかというと、自己崩壊ですら使用不可能になっていたのだ。故に生命力と魔力が一定量を下回っても、肉体が灰になる事はなかったのである。


 これは途中、試しに超級生活魔法の治療を使用して効果があったので、完全に無効になっていると確信した。自己崩壊のスキルは、回復効果も無効にするからである。


 ちなみにその時点はまだ神授スキルによって光属性適性があったので、アンデット系故の回復によるダメージは受けなかった。


 もし先に魂を奪って神授スキルを失っていた状態であれば、ランクが高くても弱っていることもあり、回復によるダメージを受けていたかもしれない。


 そして無効になっていたのは、魂への(くさび)もだった。その結果として倒されても、即座に魂が消滅することが無くなった可能性が高い。


 だがそれを確認する(すべ)は、攻撃中は無かった。しかしそれも、先ほど女戦士が最後の言葉を口にしたことで、無効になっていることを理解したのである。


 おそらく魂への(くさび)によって、個の大部分の抑制がなくなっていたからだろう。


 あれほど悩んだ魂を奪う方法は、分かってしまえば簡単なことだったのである。


 不完全な勇聖(ゆうせい)なる冥戦(めいせん)のエクストラは、そのスキル自体も不完全だったのだろう。


 (みずか)らが作り出した自己崩壊のスキルも、最後は使用不可にしてしまったのだから。もう少し俺の思考が柔らかければ、それに気がついていたのかもしれない。


 あるいは俺も自分では気がついていなかっただけで、そうとうの(あせ)りや不安があったのだろう。たぶんそれ故に考えすぎで、逆に視野が狭くなっていた。


 そのことについては反省をしつつ、魂の無い生きているだけのフレッシュゴーレムを再度鑑定してみる。



 種族:不完全な勇聖(ゆうせい)なる冥戦(めいせん)のフレッシュゴーレム

 種族特性

【-】



 フレッシュゴーレムは勇者たちの魂を失ったことで、そのスキルを全て失っていた。魂が無いので、それも当然だろう。


 もはやスキルが魂に宿っていることは、疑いようもない。ヤミカの魂からスキルを得ていた以上、それは間違いなかった。


 であれば不完全な勇聖なる冥戦や、魂への(くさび)がどこに行ったのか気になってしまう。


 最悪の場合女戦士の魂についている可能性もあるが、収納した魂は無事に魂庫に収まっている。魂への(くさび)で、消滅している様子はない。


 よかった。最後の賭けに勝ったみたいだな。


 正直全て回収した後に消滅するようであれば、もはやどうしようもなかった。なので、俺はこの結果に安堵(あんど)する。


 それにしても、この魔神剣には助けられた。たぶんこれが無かったら、ここまで楽に魂を集めることはできなかっただろう。


 一応神力を使いまくれば、倒せた可能性は高い。フレッシュゴーレムは、ほとんど本能だけで戦っていた。おそらく隙も、それなりに作れたことだろう。


 しかしその代償に、赤い煙戦での勝率が(いちじる)しく下がるはずだ。なのでこの魔神剣には、とても感謝をしている。それに赤い煙戦でも、この魔神剣は活躍をしてくれることだろう。


 そう思いながら、俺は神力の消費を抑えるために、魔神剣を自身の体の中に収納する。


 これは魔神剣に内包されている『剣心一体』の効果により、実現していることだった。その効果によって俺自身が剣の鞘になり、自由に取り出すことができるのである。

 

 さて、これでヤミカとの約束は果たした訳だが、ここからどうすればいいんだ?


 すると、俺がそう意識した時だった。再び俺の精神は、あの真っ白な空間へと飛ばされる。


 そしてその空間には、ヤミカがいた。加えて勇者、聖女、女戦士と勢ぞろいである。


 するとヤミカを除いた三人から、強い視線を感じた。


 なんか凄く(にら)まれているが、大丈夫だろうか?


 まあ、赤い煙が原因とはいえ、俺が殺して同時に救った訳である。つまりこれは、ある意味マッチポンプでもあった。


 なのでそれを知った上で感謝をしていたら、逆に怖い。それにたぶん見た感じ、ヤミカから情報は得ている気がした。


 であれば、勇者たちが俺を睨んでいる理由も頷ける。ここはひとまず、それは気にしないことにしよう。無事に終われば、それでいい。


 故に俺は少々居心地を悪く感じながらも、三人の視線には気づかない振りをする。


 そしてヤミカのお願いがこれで無事に終わることを、俺は切に願うのだった。



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