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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第九章

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321 城のダンジョン ㉜


 融合が終わったのか、視界が戻ってくる。全身から、とてつもない全能感が湧き上がっていた。


 視界の高さは少し高くなっていることに加えて、視野は真後ろ以外はほとんど収まっている。


 ふと両手を見れば、人の手の形を残しつつ、鋭い鳥類の足のような質感だった。ちなみに色は黒く、指はちゃんと五本ある。


 また黒く鋭い爪が伸びており、鳥類というよりも、どこか人型をした竜のような手と表現した方が近いかもしれない。


 加えて足も同様であり、(むき)き出しの黒い鳥類のものが見えた。


 すると俺の姿を見た赤い煙が、愉快そうに声を上げる。


「ひひゃひゃ! 何が起きたかと思えば、面白れぇ! お前、配下のモンスターと融合もできたのかよぉ!

 さっきまで最悪な気分だったが、これは最高だぁ! それに、姿も実に俺様好みだぜぇ! お前もこれで、自分の姿を確認してみろよぉ!」


 そう言って気分を良くした赤い煙が、どこからともなく巨大な姿見のような物を作り出す。


 なっ……これが、融合した俺の姿なのか?


 そこに映っていたのは、何とも中二病的な存在だった。


 まず目立つのは、その頭部だろう。カラスを模した黒いマスクをしており、どこかペストマスクを彷彿とさせた。


 しかし目の位置は、鳥のように左右についている。視野が広かったのは、これが原因だったようだ。


 また同じく黒いハットを被っており、黒い羽が髪のように生えていた。


 そして衣服については、どこか中世の黒い医者の服? のような印象を受ける。これもペスト医師という、そんな感じだった。


 他にも背中には黒い翼があり、自由に動かせる。なので広げて動かしてみると、外側の中心に白いドクロの模様があった。


 これはアンクの翼にも同様のものがあったので、それが関係しているのだろう。


 ちなみに体つきはスラっとしているが、女性的過ぎてはいない。中性的な印象だ。おそらく性別は無性だろう。


 そしてここまでの全体的な印象としては、竜のような鳥類の手足に、白いどくろ模様のある黒い翼を生やした、全身真っ黒なペスト医師である。


 確かにゴスロリ服のメスガキ少女よりはマシだが、これはこれで黒歴史になりそうだった。


 あの時ヤミカはどこか誇ったような表情をしていた気がするので、素でこれを選んだのだろう。


 少々、中二病的過ぎではないだろうか? いや、ヤミカの見た目の年齢的に、それくらいの年頃か……。


 だとすれば、普通にこれがかっこいいと考えていても不思議ではない。交渉カードの一つだったのであれば、なおさら変な姿にはしないだろう。


 それに中二病的ということを無視すれば、よくできたデザインとも言えなくもない。戦闘もしやすそうだし、問題はないだろう。どちらにしても、なったものは仕方がない。


「ひひゃひゃ! 決めた! お前は次の俺様の器にすることにしたぜぇ! 転移者を器にするのは、現状難しいかもしれないけどよぉ。また数百年かけて、研究すればいいだけだぜぇ!

 それとお前、確か名前をジンとかいうらしいなぁ? その体、俺様が有効活用してやるぜぇ!」


 すると俺の姿や神授スキルなどをよほど気に入ったのか、巨大な姿見を消すと、赤い煙が俺を指さしてそう宣言した。


 当然、そんなことは受け入れられない。なにより、今の俺はジン(・・)ではない。


 ジンとアンクが融合して誕生した存在、名付けるのならば、ジンク(・・・)である。


 俺は赤い煙に対して、そのことを告げようと口を開く。だがそのとき、俺の言葉は自分でも思いもよらないものだった。


「私の体が欲しいのですか? それは、お目が高い! ですが、私のこのマスクを見てください。これは悪臭と瘴気(しょうき)を避ける意味があるのですよ。

 つまりあなたのような臭い瘴気のような存在は、入る余地が無いのです。ああ残念。残念でしたねぇ。それと私の名前は、今はジンクです。どうぞよろしく」


 カラスを模したペストマスクに類似した物を身に着けているからか、その声はどこかくぐもっている。


 そして相手を(あお)るかのように、自然とそう発しまう。アンクの影響が出ていることは、間違いなかった。


 けれどもそこで『ざぁこ♡ざぁこ♡』と言わないだけ、マシかもしれない。


「は? お前、状況わかってるのか? 俺様が遊んでやってるから、生きているだけに過ぎねえんだぞ? それに、俺様は臭くねぇ! 無臭だ!」


 すると俺の言葉を聞いて、赤い煙はキレ気味にそう言った。


「いやいや、ドブを煮詰めたって、ここまで香ばしい(・・・・)ものはできませんよ? なんとも、性根の腐った悪臭を感じますねぇ」


 気がつけば、俺はそんな言葉を口走ってしまう。どうにもこの体は、相手を煽る言葉を息をするように発してしまうのかもしれない。


「て、てめぇ! 吐いた(つば)はもう()めねぇからなぁ!」


 赤い煙は煽り耐性が低いのか、そう叫ぶ。煙のような赤い体が、言葉に反応して激しく揺らめいていた。


「興奮しないでください。その体が余計に赤くなっていますよ?」


 だめだ。煽り口調が止まらない。意識して自制しないと、不味い事になりそうだ。


 しかし意識するにしても、それはもう手遅れだった。俺が思っていた以上に、赤い煙は面と向かって他人から煽られる経験が無かったのかもしれない。 


「あ゛ぁ゛! もう許さねぇ! 全力で捻り潰してやる! ひひゃひゃ! いまさら謝っても、もう遅いからなぁ! ファントムワールド!」


 するとその瞬間、世界が塗りつぶされる。だがそれに合わせて、ゲヘナデモクレスが動いた。


「デスフィールド! ……なんだと!?」


 しかし発動したデスフィールドは、一瞬拮抗(きっこう)したかと思えば、簡単に塗りつぶされてしまう。


 ここまでゲヘナデモクレスが発動しなかったのは、フィールド系のスキルに対抗するためだったのだろう。


 だが驚くことに、ゲヘナデモクレスのスキルが力負けしてしまったのである。


「ひひゃひゃ! 無駄だ! 特化型の神授スキルとかでなければ、防ぐのは困難だろうぜぇ~! 俺様のファントムワールドは、最強だからなぁ!

 お前らは精々、俺様の準備が終わるまでの間、その世界で藻掻(もが)いているがいいぜぇ! ひひゃひゃ!」


 そうして抵抗する間もなく、俺たちは赤い煙の生み出した世界へと飲み込まれるのだった。


 ◆


「ここは……?」


 気がつくと俺は、どこまでも広がる沼地に立っていた。所々に陸地や木々が生えており、少々薄暗い。


 一瞬沼地のダンジョンが思い浮かぶが、全く印象の違う沼地だ。こちらの方が、より自然な印象を受ける。毒々しさは、あまり感じられない。


 しかしそうは思うものの、同時にこの沼地には、どこか見覚えがあった。

 

 だが現状そんなことよりも、先に気にするべきことがある。


 俺の周囲にはレフやゲヘナデモクレスの姿は無く、あのフレッシュゴーレムもいなかった。当然、赤い煙も見当たらない。


 なので繋がりを意識してみるが、どうにも居場所が判明しなかった。


 確かに生存していることは分かるのだが、それだけなのである。


 カードに戻ってくる気配も無く、言葉も届かない。何より驚くべきことは、レフへの神託が途中で打ち消されてしまうのだ。


 もしかしたら神託は、いかなる場所でも聞くことができるものの、それは妨害がなければの話なのかもしれない。


 つまり現状、配下との連絡は途絶えたことになる。また当然のように、指輪からも女王に声が届かなかった。


 だとすれば、一旦レフとゲヘナデモクレスへの連絡は諦めるしかない。幸い生きていることは分かるので、大丈夫だろう。


 そして代わりに召喚するとなれば、現状戦力になりそうなのは、リーフェとグインだけになる。


 ここまでの戦いで多くの配下を失っており、他は僅かに残しておいた情報収集用のアサシンクロウとレイス系、あとはアロマだけになる。


 それ以外のモンスターは、先ほどの戦いで残りを出してしまったし、フレッシュゴーレムとゲヘナデモクレスの戦いの余波でやられてしまっていた。


 う~む。ここは、情報収集用のアサシンクロウをいくつか召喚して、他は温存しておこう。


 赤い煙が幻属性の対策をしている以上、リーフェの活躍の機会は無くなってしまっていた。


 しかしそれでも、リーフェは残された貴重な戦力である。必要な場面が仮に来たときにやられていたのでは、話にならない。


 そしてグインであるが、どうにも嫌な予感がするのだ。この場所は、明らかに赤い煙のテリトリーだろう。


 以前幻の世界で赤い煙がしようとしていたことを、ここで実行される気がしてならない。


 なのでリーフェとグインは召喚せずに、温存することにした。幸い俺とアンクの融合状態は解除されていないので、早々に戦力不足になることはないだろう。


 正直今の俺の強さは、相当なものだ。同時に複数のSランクモンスターに襲われたとしても、十分に勝利できる気がする。


 そういう訳で俺は、アサシンクロウを複数羽ほど呼び出して、周囲の偵察を頼む。


『『『まかせてください!』』』


 するとアンクと融合しているからか、アサシンクロウたちの思考が、これまで以上に読み取れるようになっていた。


 繋がりも強く感じるし、扱いやすくなったのは間違いないだろう。これは偵察の際に、とても役に立つ気がする。


 そう思いながら、アサシンクロウたちを飛び立たせようとしたそのときだった。


撃滅斬(げきめつざん)!」

「!?」


 その言葉と同時に、突如として力の奔流(ほんりゅう)が俺たちへと迫ってくる。


 とっさに俺は回避を成功させたが、アサシンクロウたちはその攻撃によって全滅してしまう。全く気配が無く、突然それは現れたのだ。


 いったい誰が放った攻撃かと、俺はその人物へと視線を移す。


「なッ――!?」


 そしてあまりにも衝撃的な人物に、俺は言葉を失う。


「ははは! 神に選ばれた主人公、このタヌゥカ様が、お前に復讐をするために蘇ってきてやったぞ!」


 そう、そこにいたのは、初めて俺がこの世界で倒した転移者、タヌゥカだった。

 以前タヌゥカのSSの後書きで、『本編でタヌゥカが復活することは、おそらくありません』と言いましたが、あれは嘘でした!


 まさか本当に復活? してくるとは、なんてしつこいやつなんだ!!

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