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312 レフの戦い ②

 

「黒獣化」

「!?」


 ベゲゲボズンはそう呟くと、スキルを発動させる。それは自身を一時的に、黒い獣へと変化させるものだった。

 

 当然その黒い獣とは、ベゲゲボズンの相棒である、ダークネスレーヴェのクジャロが元になっている。



  名称:黒獣化

 効果

 ・黒い獣の姿へと自身を一時的に変化させる。

 ・一日に合計一時間だけ使用できる。

 ・変化中は自身のあらゆる能力を大上昇する。



 そうしてベゲゲボズンは黒い獣、獅子のような見た目に変化した。立派な(たてがみ)があり、まるで象のように巨大である。


「グォオオオウ!」


 その威圧感は正に、Sランクモンスターの風格が現れていた。


 対してレフもその間に【伸縮(しんしゅく)自在】を使用して、同様の大きさへと姿を変える。



 名称:伸縮(しんしゅく)自在

 効果

 ・自身の大きさを自在に変えることができる。

 ・大きさ変更によるデメリットが大幅に減少する。


 更にシャドーアーマーも発動して、その身を包んだ。漆黒の全身鎧姿のレフは、ベゲゲボズンに劣らない風格を(かも)し出している。


「グルオウ!」


 そしてお互いに変化が終わると同時に、戦闘が始まった。


 まず初めに動いたのは、ベゲゲボズン。冥属性の攻撃魔法である、カオスランスを複数展開してレフへと放つ。


 だがそれをレフは【闇雷瞬歩(あんらいしゅんぽ)】によって、いとも簡単に回避していく。


 【闇雷瞬歩(あんらいしゅんぽ)】は、雷属性のエレクトリックムーブと、闇属性のシャドーステップの長所を合わせ持ったスキルである。



 名称:【闇雷瞬歩(あんらいしゅんぽ)

 効果

 ・魔力を使用して超速移動を可能とする。

 ・発動時に障害物を無視して移動ができる。

 ・発動時に気配を遮断する。

 ・触れた相手に任意で電撃を与える。



 まるで瞬間移動のようにも見えるが、超速度で移動しているだけだった。


 ちなみに【闇雷瞬歩(あんらいしゅんぽ)は、闇雷虎(やみらいこ)のスキルに内包されているものの一つである。



 名称:闇雷虎(やみらいこ)

 効果

 ・このスキルは以下のスキルを内包している。

【闇雷属性適性】【闇属性耐性(大)】

【ダークサンダー】【闇雷(あんらい)の矢】【蓄闇電(ちくあんでん)

放闇電(ほうあんでん)】【チェインダークライトニング】

【ダークサンダーブレイク】【闇雷瞬歩(あんらいしゅんぽ)



 そしてカオスランスを回避したレフは、そのままベゲゲボズンへと急接近すると、ゴッドネイルを発動した。


 神々(こうごう)しい輝きを放つ光の爪を(まと)った右前足が、ベゲゲボズンに襲いかかる。


 しかし当然その光を本能的に危険だと判断したベゲゲボズンは、シャドームーブで回避を試みた。


 だがその動きをまるで分かっていたかのように、レフがタイミングを合わせて移動する。


「!?」


 これにはベゲゲボズンも、驚きを隠せない。そして回避が間に合うはずもなく、ゴッドネイルが命中した。


「グルオウ!」

「グルゥ!?」


 神属性の攻撃は耐性が無ければ、その全てが弱点扱いになる。更にスキルとしての威力も高く、レフの力も相まって破格の効果を及ぼした。


 ベゲゲボズンはそれに耐えることができず、吹き飛び数回ほど転がったあと、元の人の姿へと戻ってしまう。


 まさに虫の息という状態であり、これ以上戦うことが難しいのは、誰が見ても明らかだった。


 結果として戦ってみれば、レフの圧勝、瞬殺である。


 しかしこれは、当然の帰結(きけつ)だった。元々ベゲゲボズンの力は、ワンアンリミテッドテイムが主力なのである。


 黒獣化があったとしても、戦闘特化型ではない。またランクこそSだが、それも下の方である。


 対してレフは、Sランクでも上位の強さを持つ。つまりワンアンリミテッドテイムが効かなかった時点で、ベゲゲボズンの勝率は(いちじる)しく低いのだ。


 加えてレフの裁きの瞳により、与えるダメージの増加と、考えを見抜かれていたというのもあった。



  名称:裁きの瞳

 効果

 ・罪と判断した行為を目視した場合、その対象へ与えるダメージが増加する。

 ・罪を重ねた相手ほど、対象のあらゆる能力や考えを看破する。

 ・暗視効果に加えて、何かしらのスキルで隠れた対象を看破する。

 ・一日に一度だけ、【裁きの神光】を発動することができる。威力は相手の罪の大きさに応じて変わる。



 またワンアンリミテッドテイムを発動された時は意識していなかったが、戦闘が始まった時、レフはこう思ったのだ。


【レフが主の元に戻るのを邪魔するなんて、許せないっ!!】と。


 するとその瞬間、ベゲゲボズンに対してレフ基準での罪が加算されたことにより、裁きの瞳の効果が発動したのである。


 更にはジンが神名を得て力を増していたことにより、アポストルスモンスターの効果で、レフの生命力や魔力、身体能力などが上昇していた。

 

 そしてこの場所へ送られた直後、ジンから神託と共に、神命が送られていたのである。


【こっちは大丈夫だから、慌てずに状況を見定めて、戻ってこい】と。


 この神命により、レフはあらゆる能力が増加していた。


 ちなみにこれを適応させた使徒の効果は、次の通りになっている。

 


 名称:使徒

 効果

 ・仕える神の神託をいかなる場所でも聞くことができる。

 ・仕える神からの神命を拒否できなくなる。

 ・神命を実行する時、あらゆる能力が増加する。

 ・使徒同士であらゆる情報を共有することができる。



 結果として素の能力でも高いレフに、様々なバフ効果が付与されたことにより、ベゲゲボズンはその一撃で倒されたのだ。


 故に一見ベゲゲボズンが弱いように思えてしまうが、そうではない。相手が悪すぎただけである。


 相手が普通のモンスターであれば、Sランクでも勝率はほぼ100%であったし、純粋な戦闘力でもAランクモンスターには負けないのだ。


 また神授スキルを抜きにすれば、ワンアンリミテッドテイムはこの世界でも、最上位に位置するスキルである。それが効かない相手の方が、皆無に近かった。 


 そうして敗れたベゲゲボズンは、息絶えるのも時間の問題という状況に(おちい)る。


 しかしベゲゲボズンは、すがすがしい表情をしていた。そして近づいてきたレフに対して、何を思ったのか、最後の力でこう言ったのである。


「……ありがとう」

「にゃぁ」


 するとそれで力尽きたのか、ベゲゲボズンは灰へと変わっていき、その灰も幻のように消えていった。


 レフはベゲゲボズンがどのような人生を歩んでいたのかは、まったく知らない。


 けれどもそれがとても辛く、大変だったことは理解できた。その全てから解放されたのだと、最後にベゲゲボズンから伝わってきた気がしたのである。


 故にレフは問答無用で倒してしまってよかったのだろうかと、少々自問自答してしまう。何か他に、方法があったかもしれないと。


 しかしすぐにこれが正解だったのだと、自分に言い聞かせた。どのみち、戦うしか道は無かったのだ。


 そしてこんな事態をもたらした赤い煙に対して、レフは怒りを覚えた。


 ジンもモンスターを配下にしたり、融合したりもする。けれども赤い煙とは、絶対に違うとレフは感じていた。


 レフはジンの配下になれて幸せであるし、この関係がずっと続けばいいと思っている。


 けれども今倒してしまったベゲゲボズンは、そうではない。それに対する何とも説明のし辛い感情が、レフの中で暴れていた。


 故にレフは、赤い煙に強い敵意を抱く。絶対に野放しにはしておけない存在だと判断する。


 そして同時にベゲゲボズンが倒されたことにより、ジンとの繋がりが元に戻ったことも理解した。


 なのでレフは一刻も早く、ジンの元へと戻ることを決める。だがその前に、レフはあることを行った。


にゃんにゃ(ばいばい)


 ベゲゲボズンの消えた場所に向けて、そのように小さく鳴いたのだ。


 ベゲゲボズンに対して、レフなりに思うところがあったのである。


 そうして別れの挨拶を終えたレフは、召喚状態を解除すると、ジンの元へと戻るのであった。



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