SS ゲゾルグの追憶
※推奨読了話数032話までくらい。
Q.ゲゾルグって誰?
A.幸運の蝶のリーダー。ジンが魔力欠乏症のとき、助けてくれた。また一時的にパーティメンバーとして、ジンの面倒を見てくれた人物でもある。しかしタヌゥカの神授スキルによって、死亡してしまった。
俺の名はゲゾルグ。幸運の蝶というパーティでリーダーをしている。
このパーティ名の由来は、俺のスキルにあった。
十歳の時に授かった、虫の知らせというスキルが由来となっている。
虫の知らせは、俺や俺にとって関わりのある人物のピンチや、よくないことが起きるのを教えてくれる効果があった。
関わりがあるといっても、好印象を抱いていないと発動はしない。
また好印象を抱いたとしても、裏で俺や仲間に悪さをしようとしている者も同様だ。
このスキルによって、俺は何度も窮地を潜り抜けてきた。俺にとってこのスキルは、正に幸運をもたらすと言える。
ちなみに蝶なのは、昔見た蝶が綺麗だったからだ。またどうやらその蝶は、めったに見られない珍しい蝶らしい。
つまり見られたのは、運がよかったという訳だ。それもあり、幸運の蝶というパーティ名にしたのである。
幸運の虫とするよりも、こっちの方がオシャレだろ? また仲間たちとの関係も良好だし、このままいけばBランクパーティも夢じゃないだろう。
そうして日々ダンジョンで狩りを続けている時、俺はある少年、ジンと出会う。
最初はソロで下の階層に行こうとしていたので、忠告をしたのを覚えている。
するとその後、お礼と言ってマッドクラブをくれた。マッドクラブなんて普通は泥臭くて食えたものじゃないが、驚くことに絶品であり、手が止まらなかった。
加えて仲間たちの分までくれて、ダンジョン内であるのにその日は宴会となる。俺はその時、ジンに強い好印象を抱いた。
これがきっかけになり、虫の知らせでジンを助けられたのは運がよかったと言えるだろう。またジンのスキルや才能は素晴らしく、ここで失っていい人物ではない。
それとジンを一時的にだが、パーティに入れることができた。色々と抜けているところがありそうだし、これから冒険者の常識を教えていこうと思う。
俺もそろそろ、弟子なんか欲しかったところだ。仲間たちもジンを気に入っており、プリミナなんか手を出さないかと心配なほどである。
流石にないとは思うが、ジンは美少年だし、もしかしたら可能性はあるかもな。
まあ、男は女の経験を重ねて立派になっていくものだ。プリミナなら危険もないし、ジンもいい経験になるだろう。
そして戦争も、同様にジンの糧となるはずだ。俺も戦争を一度経験したことで、その後が大きく変わった。
冒険者として活躍するのであれば、戦争は避けては通れないだろう。危険はあるが、俺たちが守り切ればいいだけだ。
それに虫の知らせがあれば、大抵のことには対処ができるだろう。この時まではそう、俺は考えていた。
しかしタヌゥカという少年と出会ったとき、俺は大きなミスをしてしまう。
虫の知らせが発動したのにもかかわらず、警戒するだけにとどめていたのだ。
自分なら対処できるはずだと、そう思っていた。けどまさか、タヌゥカという少年のたった一撃で、やられてしまうとは……。
それにより幸運の蝶は、俺の手からするりと抜け出してしまった。この攻撃を受けたことで、俺は死ぬ。そう確信してしまう。
自分の体だ。それくらいはよく分かる。虫の知らせで危険があると感じても、自分の判断が間違えば意味もない。
死の直前、走馬灯がよぎる。
まだやりたいことがあった。ジンに教えたいこともだ。仲間たちには、本当に申し訳がない。
「ちきしょう、虫の知らせで嫌な予感がしていたのに、避け切れなかったぜ。俺なら、対処できると、驕っていたようだ……。ジン、すまねえ……逃げろ……」
せめてどうか、生きてくれ。俺の分まで強く……。
その想いを最後に、俺の人生は終わりを告げた。




