SS ベックの追想
このSSは、カクヨムにて300話目を突破した記念に投稿したのものになります。
またこのSSは、カクヨムのサポーター様向けに普段投稿しているものでもあります。
加えてSSは7本あります。
そして本日の投稿は、このSSまでになります。
※推奨読了話数9話くらい。
Q.ベックって誰?
A.ジンが最初にこの世界へと転移したダンジョンで、初めて出会った冒険者の現地人。ある意味最初の友人であり、初めてカードを譲渡した相手でもある。ベックの仲間には、ブンとタールがいる。
俺の名前はベック。キョウヘンの村で冒険者をしている。
仲間は同じ故郷からの幼馴染である、ブンとタールだ。
この三人で、冒険者として日々やっている。
元々俺ら三人は、農家の次男や三男だ。
なので跡継ぎになれない俺たちのその後など、限られている。
だから俺たちは思い切って、冒険者になることを決めた。
まあ三人とも、十歳の時に戦闘系スキルを授かったという事が大きい。
俺は剣適性、盾適性、気絶耐性(小)を授かった。
三つ授かったというのは、珍しい方だ。
大抵一つか二つなので、これは少し鼻が高かった。
加えて適性スキルが二つもあり、剣と盾でバランスも良い。
俺が冒険者になることは、もはや運命なのだろう。
両親は村の自警団に入れと言っていたが、俺はごめんだった。
またこの村で冒険者として活動をすれば、あれこれ面倒なことになる。
無料でやってくれなど、普通に言われそうだ。それに冒険者になる事に否定的な両親が近くにいるので、たまったものではない。
なので俺たちは、故郷を出てキョウヘンの村に移った。
最初は街に行こうかとも思ったけど、実力と装備を整えてからと決めている。
理由は、似たように村を出て失敗した出戻りの話を聞いたからだ。
街は物価が異常に高く、依頼も俺たちレベルじゃ碌なものが無い。
そしてあっても取り合いになり、取れなければドブさらいばかりをすることになる。
戻ってきた元冒険者の男は、よく周囲にそう言っていた。
なので俺たちは、コツコツと村から頑張ることにしたのだ。
またキョウヘンの村は、俺たちの村の規模とあまり変わらない。
周囲にはゴブリンやホーンラビットが数多くおり、たまにグレイウルフが現れる。
グレイウルフは何とか倒せるが、油断ができない相手だ。
それとお金を貯めて一度街を見に行った時、グレイウルフを連れている冒険者を見かけた。
どうやらテイマーと呼ばれているらしく、モンスターを使役することができるらしい。
グレイウルフは賢く鼻が利くので、とても羨ましかったのを覚えている。
そうして活動しているキョウヘン村に戻ってからは、日々ホーンラビットを主に狩っていた。
他にはその合間に、薬草を摘んでいる。
ゴブリンは倒しても余り旨味が無いので、なるべく戦闘は避けていた。
無理に戦うと、武器を消耗してしまう。
武器の修理費は高く、新しく買うことになれば一気に貧しくなる。
なので、考えて戦わないといけない。これは、冒険者になってから学んだことだ。
そしてそんなある日、キョウヘンの村の近くにダンジョンが現れた。
最初は村中で騒ぎになり、俺たちも興奮を隠せなかった。
なぜならダンジョンによって村が栄える話を、よく聞くからだ。
けれども少しして、現実を知ることになる。
現れたダンジョンは、資源がなくゴブリンしか出ないものだった。
ボスを倒せばお宝が手に入るが、割に合わないらしい。
俺たちも何度か挑んだけど、若干赤字になることが何度かあった。
だけどダンジョンの踏破は、冒険者にとって一つの目標だ。
なので俺たちは、このダンジョンを踏破したら次に進むことを決めた。
普段は森で稼ぎつつ、余裕ができたらダンジョンに挑む。
けどそんな日々を繰り返していたある日、俺たちは運命的な出会いを果たす。
最初はゴブリンに襲われていると思って助けたけど、それは違った。
どうやら特殊なスキルによって、使役していたゴブリンとのこと。
またジンと名乗ったその人は、とても綺麗な顔をしていた。
実は一目ぼれしてしまったけど、男だと分かって落ち込んだのは秘密だ。
そしてそのジンさんと出会った事で、俺たちの人生は大きく変わることになる。
まさか俺がグレイウルフを手にするなんて、夢にも思っていなかった。




