302 城のダンジョン ⑳
名称:神聖なる存在
効果
・神名を自身に名付けることで、以下の効果が発動する。
【光癒聖神属性適性】【光聖属性耐性(大)】
【神属性耐性(小)】【消費魔力減少(中)】
【スキル容量コスト減少(中)】
【スキル取得補正(中)】
・神名を得た状態であれば、信者に対して以下の効果を得る。
【信仰スキル『サーヴァントカード』付与】
【信仰スキルの徴収・抹消・封印】
【信者鑑定】【心の声】【神託】【天罰】
・信者の数と捧げられる信仰により、神力の自然回復量と上限が上昇する。
・あなたは×××へと近づき、条件の一つを満たした。
色々と気になる部分は多いが、まず効果を発動させるには神名を、自身に名付ける必要があるらしい。
神名をそのままの意味で受け止めると、神の名前だ。もしかしてこの称号を得たことで、神の仲間入りを果たしたのだろうか?
まだ何とも言えないが、可能性は無くはない。しかし問題はこの称号を受け入れて、神名を安易に名付けても大丈夫かということだ。
それが良いか悪いかは別として、直感的に何かとてつもないことに巻き込まれる気がする。
だが結局のところ、受け入れるしかないだろう。これから勇者に加えて、魔王との戦いが控えている。
力は、いくらあっても足りない。それに今回受け入れずに乗り越えたとしても、いずれは避けられない気がした。
これまでのことを考えれば、今後も転移者や魔王と同等の存在と、戦うことになるだろう。
なのでどの道窮地に陥れば、受け入れざるを得ない。であれば逆に、早いうちに慣れておいた方がいいと思った。
俺はそんな得体の知れないリスクを承知で、神名を自身に名付けることを決める。
さて、神名を名付けるとして、一体どうやるのだろうか? これまでの経験から考えれば、強く意識すればできそうだが……。とりあえず、神名はそのまま【ジン】でいいだろう。
そう思いながら、神名を意識する。すると、確かな反応が返ってくるが、【ジン】という神名が拒否された感覚が伝わってきた。
ん? この名称はダメなのか? もしかして、既に使われているのだろうか? いや、流石にそれは無いか。おそらく、何か別の理由があるのだろう。
まあ使用ができないのであれば、どちらにしても仕方がない。何か別の神名を、考える必要があるだろう。
う~む。思いつく候補にはジルニクスやベゲゲボズンがあるが、なんだか神名に使うには微妙な気がする。
ならダークエルフたちを助けた時に名乗ったジオスもありだが、これも何だかしっくりこない。
このとき俺は、神名についてどうしようかと、かなり迷っていた。
するとそんなとき、横にいたレフが視界に入る。
「にゃ~ん!」
レフは一鳴きすると、俺を見つめ返してきた。
ふむ。そう言えば以前レフと融合したときは、ジフレと名乗ったんだったな。
あのときのことを今思い出すと、軽く黒歴史である。しかしジオスよりは、思い入れのある名前なのは確かだ。
けれども神名としてそのまま使うには、少し微妙な気がした。何となく、抵抗がある。
それは何だかんだでジフレだった時のことが、恥ずかしかったからかもしれない。
であれば、そのまま使うのは止めておこう。それに神名を一から考えようにも、今は思いつかない。なので、ジフレという名前に少し手を加えようと思う。
それから色々考えたが、シンプルに自分の名前を繋げて、【ジンジフレ】とすることにした。
神名を意識し過ぎたら、どの候補も中二病っぽくなったからというのもある。
そうして再び神名を意識すると、今度は神名が無事に名付けられたという感覚が伝わってきた。
またステータスの名称の下に、神名という項目が新たに増えている。そこにはもちろん、【ジンジフレ】と表記されていた。
ちなみに種族は変わらず、デミゴッドのままである。神名を得ても、別に種族が変わるわけではないようだ。
そして神名を得たことで、称号の効果を発動できるようになった。
全属性適性を持つ俺には適性関連は意味がないが、それ以外の部分では恩恵がとても大きい。
特にこれから勇者との戦いを控えているので、光聖属性耐性は大きな助けになるだろう。
また神属性耐性は、今後何かの役に立つかもしれない。旅を続ければ、神属性を使う転移者が現れても不思議じゃないからな。
消費魔力減少も、純粋に嬉しい。既にスキルとして持っているが、これは重複して発動しているみたいだ。
それとスキル容量コスト減少は、スキル数の多い俺からしたらとてもありがたい。容量の限界は不明だが、これでかなり余裕ができたはずだ。
おそらく仮にスキルAの元々のコストが5だった場合、それがいくつか減少するのだろう。(中)なので、そこそこの減少が期待できる。
また次にスキル取得補正については、たぶんスキルオーブを使った際に、効果が現れるのだと思われる。
スキルオーブの中には、関連した適性が無ければ取得できないものもあった。その取得条件に補正がかかり、条件が緩和されるのかもしれない。
あとは上位スキルにランクアップさせるまでの期間が、短くなる可能性もある。
上位のスキルを取得するには、その下位スキルを使い慣れている必要があるからだ。いわゆる熟練度的なものを稼ぐのに、補正がかかる気がした。
いずれは所持しているスキルのランクアップもしたいので、これも当たりと言えるだろう。
とりあえずスキル関連については、こんなところだ。
そして問題は、次の信者についてだよな。
まず信仰スキル『サーヴァントカード』とは、いったい何なのだろうか?
効果内の効果を更に見ることはできないので、内容が分からない。そう、思っていたのだが、なんとこれについては例外的なのか、見ることができた。
名称:サーヴァントカード
効果
・育成可能なサーヴァントを一体、カードから自由に召喚することができる。
・召喚されるサーヴァントは、その者の資質や性格などに影響される。
・サーヴァントが死亡した場合、そのサーヴァントの力量に見合った『時間』『魔力』『寿命』を捧げることで、蘇生することができる。
・信仰度に応じて、スキルの効果は上昇する。
・このスキルの所有者が死亡した時、サーヴァントは主神ジンジフレに捧げられる。
これはどう考えても、俺の神授スキルであるカード召喚術が、関係しているよな? まあ、それについては今はいいとして、効果だけを見ても、そのヤバさがよく分かる。
信者は力を得て、信仰と共にサーヴァントの育成に励むだろう。そして死亡した際には、その育てたサーヴァントが俺に捧げられる。
また力を得られると知れば、それだけの理由で俺を新たに信仰する者が現れても不思議ではない。
結果としてその好循環により、俺は信仰と育ったサーヴァントを不労所得のように、稼げてしまうという訳だ。
寿命の無い俺からすれば、これは正直ぶっ壊れの能力ではないだろうか?
そしてサーヴァントがどのような存在かは現状不明だが、カードを譲渡した場合と同じく、繋がりを感じることができるかもしれない。
だとすればこの信仰が広がっていけば、俺はいずれ未知の大陸へと、自由に行き来することができる可能性があった。
それにそもそもとして、現状でも信者との繋がりを若干感じている。
なのでその信者との繋がりだけでも、召喚転移が可能かもしれない。であればこれによって、行動範囲が一気に広がるだろう。
だが不思議なのは、信者の大きな塊が二か所ほど、おそらく別の大陸から感じられることだった。
俺がこれまで旅をした大陸は、シルダートの街があった最初の大陸、ハパンナの街があった大陸、そしてエルフとダークエルフがいた大陸だ。
行ったことを考えると、後者二つに信者がいる可能性が高い。
まずジフレとして活躍したので、ジフレを信仰する者もたぶんいるだろう。ジフレは俺自身なので、それが信者に加算されていてもおかしくはない。
次に自称ハイエルフを倒したが、これは誰にも話してはいないはずだ。だとすれば、ジオスとして助けたことで、信者が生まれたのだろうか?
正直それだけで信者が生まれるとは、少々考えづらい。だがそれ以外には、思いつかなかった。
そして最初の大陸での国境門のことを考えれば、恐れられることあっても、信仰されることはないだろう。
普通に考えれば、そういうことになる。だが、何かがおかしい。
特におかしいのは、この称号を得た時に信者数が、1,000人を超えたと言われたことだ。だがいったい、俺のどこに信者が1,000人も集まる理由が、あったのだろうか?
なにより不思議なのは、今回得られたと思われる新たな信者よりも、二つの大陸にいる信者の方が明らかに多いのだ。
うっすらとした繋がりから、おおよその信者数が判断できる。
そして何となく、近いか遠いかという感覚があるのだ。おそらく近い方は、エルフとダークエルフがいた大陸だろう。
未だに国境門が開いているのだとしたら、それも納得である。
しかしその場合、どう考えてもエルフとダークエルフがいた大陸の方が、ハパンナの街があった大陸よりも、信者数が多いのだ。
これはいったい、何が起きたというのだろうか……? まったくもって、理解ができない。
だが、信者がいることは確かだった。なら俺の知らないところで、信者が増えた原因が存在しているのだろう。
であればもしかして、原因はユグドラシルだろうか? エルフ達を捕まえて、俺の信者になるように洗脳したのだろうか? いや、でもその理由がわからない。
俺はそのことについて軽く混乱したが、結局のところ分からないことには、変わりなかった。
いずれは判明する日が来るかもしれないが、何となく、とてつもなく嫌な予感がする。
しかし今はそれを考えても仕方がないので、一旦忘れることにした。落ち着いたときに、また考えればいい。
俺はそのように意識の隅へと追いやると、称号の効果について再び考え始めるのだった。