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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第八章

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287 城のダンジョン ⑤


 あれから数時間経ったけど、オラはまだ生きていた。というよりも、何かがおかしい。


 現れるアンデッドたちは、なぜかオラたちに止めを刺すのを躊躇(ためら)っているように見えた。


 何度か死ぬかもしれないという場面があったけど、その度に運良く(・・・)生き延びている。


 けれどもよくよく思えば、その時だけ相手の動きがぎこちなかった。


 それはオラだけではなく、周囲の冒険者たちも同じように見える。


 でもそれはこの闘技場の仕掛けを探す者たちだけであり、あのスケルトンナイトたちは普通に上位冒険者たちを殺していた。


 だとすれば、そこに何か仕掛けがあるのかもしれない。オラたちが生きていることで、相手に何か利点があるのだろうか?


 そう考えるけど、オラにはこれ以上分らなかった。仕掛けは見つからないし、倒しても倒してもスケルトンが無限に現れる。


 でもDランク以上のアンデッドは、なぜか新しく現れることはなかった。


 ちなみにその中には、別のスケルトンナイトたちもおり、最初はあまりの絶望感にオラは動けなくなってしまう。


 けれどもそのスケルトンナイトたちは、いたって普通のスケルトンナイトたちだった。あの三体のスケルトンナイトたちとは違い、ランク通りの強さしかなかったのである。


 やはり、あの三体のスケルトンナイトたちだけが、特別のようだ。


 それよりも驚いたのが、守護者と同一種類のモンスターが現れたことである。これは、あまりにも酷すぎだ。


 正直こんなことは初めての経験だった。それくらい、これは異常事態である。


 けれどもそんな文句は、言っていられない。生き残るためには、戦うしかなかった。


 でも本当に死にそうになったら、この場から逃げ出すしかない。どうやら幸いにもこの守護者のエリアは、封鎖をされていないみたいだった。


 それによって既に何十人かは、この闘技場から逃げ出している。


 しかしそれを見て、AランクとBランクの冒険者たちが黙ってはいなかった。なんと逃げ出す冒険者たちを、攻撃し始めたのである。


 自分たちが強すぎるスケルトンナイトを相手にしているのに、逃げ出すのは何事かと怒りを(あら)わにしたのだ。


 なのでオラたちDランクとCランクの冒険者たちは、残って戦うしか道は残されていないのである。闘技場から逃げるのは、最終手段となった。


 幸い周囲のアンデッドモンスターたちは、オラたちを殺そうとはあまりしてこない。どうにも、時間稼ぎをしている気がしている。


 いったいなんの時間稼ぎをしているのか、オラには全く分からない。けど、このままだと不味いことは、何となく分った。


 しかしこの情報を(くつがえ)(すべ)を、オラは持っていない。


 ここはBランクとAランクの冒険者たちが、どうにかして倒してくれることを祈るしかなかった。


 それかこの闘技場の仕掛けを見つければ、一発逆転できるかもしれない。でもその肝心の仕掛けが、全く見つからないのだ。


「これは本当に、いったいどうすれば……」


 先の見えない危機的な状況に、ついオラは弱音を吐いてしまう。


 このままでは本当にジリ貧だ。もうこれは、神様に祈るしかない。


 そう考えたオラは、藁にも縋る思いで神様に祈った。


 どうか創造神様! オラを助けてください! この際もう他のよく分からない神様でもいい、どうかオラを助けてくれ!


 オラは心の中で、そう叫ぶ。


 けれども状況は変わらず、数十分が更に経過した。


 手持ちの消耗品も減っていき、本当にこのままでは不味い。見れば死者の数も、だいぶ増えていた。


 特にBランクとAランク冒険者たちの数が、(いちじる)しく減っている。


 でも幸いなのは、スケルトンナイトたちの動きがかなり悪くなっていることだろう。


 最初の時と比べて、その動きはオラにも多少見えるくらいになっている。


 また周囲のアンデッドモンスターも、大部分が普通のスケルトンばかりになっていた。


 復活しないことが分かっているDランク以上のモンスターを、率先して倒していった結果である。


 けれどもやはり、ガシャドクロを倒すのには多くの犠牲が出てしまった。


 BランクとAランクの冒険者たちは、こちらに一切手を貸してくれなかったのである。


 彼らにとって、オラたちの価値などそんなものなのかもしれない。


 いや、分かっている。彼らもあのスケルトンナイトの相手で、精一杯だったのだ。


 しかしそう思っていても、オラたち側の不満が収まるはずはない。こちら側も、率先して向こう側に手を貸すことはなくなった。

 

 といっても、生き残るために仕掛けを探すのは続けている。


 それは結局のところ彼らが全滅したら、自分たちも当然おしまいということが分かっているからだ。


 でもここまで探して見つからないとなると、その仕掛けはオラたち冒険者には、どうにもできないところにあるのかもしれない。


 なのでオラたちは、探すことよりもモンスターを殲滅(せんめつ)することに重点を置き始めた。


 このいつ終わるかも分からない状況には、流石にオラたちも精神が削られる。


 そして脳裏によぎるのは、故郷のことや、これまでの人生。楽しかったことや、苦しかったこと。


 まるで人生がもうすぐ終わりそうだという思考が、それを映し出してしまう。


 英雄に憧れるんじゃなかった。勇者様がいれば大丈夫なんて、思わなければよかった。オラは所詮、どこにでもいる程度の人族だったんだ。


 まるで自分を遠くから眺めているような感覚になり、身体が勝手に動いているような錯覚に襲われる。


 でもそんな地獄のような状況も、突然終わりを告げた。


「うむ。時間が来たようだ。倒しきれなかったことに悔いは残るが。仕方がないだろう」

「ドヴォールよ。そうであるな。むしろ、このような強者たちを倒せたことに、今でも驚きを隠せぬよ」

「カタタッ」


 するとスケルトンナイトたちがそんな風に声を上げた瞬間、それは起きる。


「さらばだ、冒険者たちよ」

「よき戦いであった」

「カタタ!」


 最後にそう言うと、三体のスケルトンナイトたちは、灰のようになって消え去った。


 スケルトンナイトが言葉を話すことに驚く暇もない、一瞬のできごとである。


 加えて周囲のアンデッドたちも、同じように灰になり、残らず消えていく。


「……お、終わったのか?」


 オラは突然の出来事に、思わず声を漏らした。しかしそれは、周囲の冒険者たちも同じみたいである。


「た、倒したのか?」

「いや、勝手に灰になったみたいだが……」

「それにスケルトンナイトが喋っていたよな」

「い、いったいどういうことだ!?」

「とにかく俺たちの勝ちだ! 勝ったんだ!」


 当然、戸惑いはあるみたいだった。しかし勝ったことは事実なので、次第に喜びの声が上がっていく。


 そして勝利を示すかのように闘技場の中央には、赤い旗と宝箱が現れた。


 こ、これで本当に終わったみたいだ……よく分からないけど、オラは生き残ったぞ。


 すると急に体の力が抜けて、オラはその場に座り込んでしまう。


 周囲の冒険者たちも同じようで、力尽きたように倒れたりしていた。


 そんなオラたちを見て、BランクとAランクの冒険者たちは悪態をつく。


 また旗と宝箱の中身を回収すると、オラたちをそのままにして行ってしまった。


 中には無能は始末しようと過激なことを言う上位冒険者もいたが、流石にそれが実行されることはなく、オラたちは捨て置かれる。

 

 けどむしろ、ここで脱落して正解だったかもしれない。正直この先ついていけば、オラは確実に死ぬことになるだろう。そんな予感がする。


 聞けば城下町の先にある城も、これから攻略をしなければいけないらしい。そしてそこには、魔王がいると言っていた。


 やっぱりCランク程度じゃ、ついていける世界ではなかったのだろう。勇者様の隣に立つことなど、夢のまた夢だった。


 そうして残されたオラたちは、ここからどうにかして脱出しようと考える者と、上位冒険者たちを追いかける者で分かれる。


 当然オラは、脱出を目指す者たちに加わった。


 しかしそう思ったところで、脱出なんてできるのだろうか? もうこれは本当に、神様に祈るしかない。


 なのでどうか神様、オラを助けてください。もし生き残ることが出来たら、今後の人生は祈り続けますので。お願いします。


 これまで(ろく)に神様に祈らなかったオラは、この時ばかりは必死な思いでそう祈りを捧げるのだった。


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