表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

296/470

277 嵐の前兆とこれから


 あれから何日か経過したが、今はせっせと素材集めに(いそ)しんでいる。


 理由はレフとアンクがSランクになったことで、流石に女王に怒られてしまったからだ。


 俺のコストが一気に増えたことで、色々とダンジョン運営に支障が出てしまったらしい。


 これには俺も、少々反省をせざるを得なかった。配下の強化は必要だが、自分自身が守護者ということも意識するべきだったからである。


 なのでここ数日は素材集めのために、城のダンジョンの周囲にある街や村などは、概ね回りきった。


 残念ながら新たなカードは増えてはいないが、その分素材を集めることができた感じだ。


 休みなく働いたことで、何とかレフとアンクの進化分の負債以上の素材を渡せたと思われる。


 まあ、コストの支払いは定期的に訪れるみたいなので、その分後でまた稼ぐ必要がありそうだが。


 ちなみに増えた分のコストは、その都度短期間で支払う必要があるみたいだ。


 なので俺のコストが増えると、女王が毎回頭を抱えていたのである。


 だとすれば、かなり迷惑をかけたことは間違いない。もし女王が人族だったら、胃に穴が開いていた事だろう。


 幼いころにそのお転婆さで冒険者ギルドのマスターを悩ませていた女王が、今では自身がその立場である。何とも因果なものだ。


 しかしこれを言ってしまうと流石に不味いので、俺の心の中に留めておく。


 それと街で守られていた宝箱の中身も、全て女王に差し出してポイントに変換してもらった。


 少し惜しい物もあったが、まあ仕方がない。ゾンビなどよりも、そうしたアイテムの方がポイント変換率がよかったのである。


 それと素材を集めながらルルリアも含めて、配下たちのスキルや連携なども確認もすることができた。


 そこでルルリアの【救いの歌声】というスキルで、仲間でもランクの低いアンデッド系が昇天させられる事件なども起きたのである。


 幸い昇天してもカードに戻ったので、ロストという事にはなっていない。


 光属性を持つサンは例外だったが、Cランクのルトナイが昇天した時は正直(あせ)った。


 一応Bランク以上になると、昇天することなく普通にバフを受けられるらしい。試しに確認したガシャドクロがそうだったので、間違いない。


 これについては、事前に確認できてよかったと思う。強敵との実戦の時に起きていたら、危なかったかもしれない。


 効果には書かれていない、そういった隠し効果について知っておくのは、必要なことだった。


 またレフの使徒についてだが、やはり神託は俺からの一方通行らしい。


 だがレフが祈るように報告を意識すると、俺にも声が届いた。なので通話というよりも、メールのようなやり取りに近いかもしれない。


 それと神命についてだが、俺が強く意識すれば可能みたいだった。しかし神命を行うと、体の中から神力が魔力のように消費されるみたいである。


 神力は不規則にいつの間にか回復するみたいだが、それでいて魔力よりも回復が遅い。


 ちなみに回復方法は信者からの祈りかとも一瞬思ったが、そもそも俺に信者がいるはずないので、謎のままだ。


 あとはレフのゴッドネイルだが、あれは神力が消費されているらしい。レフも神力が備わったみたいである。


 しかしその量はとても少なく、何度もゴッドネイルを発動できる程ではない。


 加えてなぜかレフの神力は自然回復することがなかったので、俺が繋がりから送ることで回復させるしかなかった。カードに戻しても、回復することがない。


 それもあり、ますます神力の回復方法に頭を悩ませたのである。


 結果としてゴッドネイルは強力だが、神力の問題があるため、ここぞという場面で使う技になってしまった。


 なお俺の神力の量は、魔力の量を学校のプールほどだとすれば、神力の量はコップ一杯ほどである。


 ものすごく少なく思えるが、前提として俺の魔力量が多すぎるので、ここまでの開きになっていた。


 たぶん、一般的なDランク冒険者の魔力量よりは、俺の神力の方が多い気がする。Cランク冒険者だと、同じくらいだろうか?


 しかし人によって魔力量は上下するため、何とも言えないな。


 そうしたことを考えつつも、探索中は他に冒険者を何度か発見することもあった。


 そうした場合は、できるだけ距離を離して遭遇しないようにしている。


 別に俺は盗賊ではないので、冒険者を発見しても無暗に襲撃するようなことはしない。


 人としてその一線だけは、超えないようにしている。まあ、理由があれば、その限りではないが。


 それにここで始末するよりは、城のダンジョンの内部で死亡してほしかったというのもある。


 ここで倒しても、ダンジョンのポイントにはならないのだ。


 加えて毎回発見したら殺さず捕らえてダンジョンに放り込むのも、何か違う気がした。


 ちなみに現在の城のダンジョンは、表と裏が融合したことにより、侵入者を一定期間捕らえておけるようにはなっている。


 ただその数には限りがあるので、多くは捕らえてはおけない。


 とりあえずの処置として、実装した形だろう。そのうちポイントに余裕が出来たら、そのあたりも拡張されていくと思われる。


 話を戻すが、そう言う訳でこの大陸は世紀末の世界みたいではあるものの、心までそうなる必要はない。


 ヒャッハーになるには、まだ俺の心は(すさ)みきってはいないのである。


 もし仮にレフなどがいなければ、愛などいらぬと言って、ヒャッハーになっていた可能性は、多少なりともあったかもしれないが。


 なので見かけた冒険者を、理由なく襲撃することはしていない。


 だがしかし情報自体は欲しいので、アサシンクロウで何パーティかは追跡をさせていた。


 すると驚くべきことに、全てのパーティの帰還先が、全く同じだったのである。


 城のダンジョンから多少離れた場所なのだが、そこに村のような規模で人が集まっていた。


 更にまだまだ人は増え続けており、このままだと街くらいの規模になるかもしれない。


 なので俺はこのことを女王に報告して、意見を交換することにした。


 結果紆余曲折(うよきょくせつ)あり、俺はその集団の元に潜入することになってしまう。


 俺はデミゴッドだが、見た目や気配的には人族である。


 数千人規模の人族で(あふ)れているあの集団であれば、一人紛れ込んでも気がつかれる可能性は低いと判断したのである。


 もちろん危険もあるし、強者に見つかれば面倒なことになるだろう。


 しかしあの数の集団が、いったいどのような理由で集まったのか、直接確かめる必要があった。だが当然、事前情報無しというのも危ない。


 なので先ほどは捕らえることを敬遠していたが、理由が理由だけに、何人か冒険者を拉致して情報を引き出している。


 結果分かったのは、あの集団は勇者ブレイブという人物が率いているという。それを聞いて、俺たちは驚愕(きょうがく)した。


 しかもそれは自称ではなく、教会が認めた勇者なのだという。


 そして勇者たちの目的は、この城のダンジョンの攻略らしい。


 何でも城のダンジョンの最奥には、魔王がいるのだと信じているようだ。


 宝珠の事を考えれば、あの赤い煙、自称魔王に辿り着く。


 だがこの城のダンジョンの最奥にいるのは、女王であり、魔王ではない。


 更にはなぜか、魔将ジルニクスが守っていることが知られていた。


 確かに魔将ジルニクスは名乗るつもりだったが、結局あの侵入者たちが来た時は名乗らずじまいだったはず……もしかして、赤い煙が情報を流したのだろうか?


 可能性として、俺はそう考えた。しかし話を聞くと、驚くべきことが分かる。


 なんとあのゲヘナデモクレスが、自身を魔将ジルニクスの配下だと名乗り、城のダンジョンの場所まで吹聴(ふいちょう)していたらしい。


 俺は、それを聞いて頭が痛くなった。


 ゲヘナデモクレスがなぜ魔将ジルニクスの事を知っているのかだとか、そもそも城のダンジョンと俺が結びついていることに、どこで気がついたのかとか、色々と疑問がある。


 最終的に一つの可能性として思ったのは、ゲヘナデモクレスが赤い煙から情報を得たかもしれないということだ。


 だがゲヘナデモクレスの性格的に、こんなことをするのだろうか? なんだかとても違和感がある。


 ゲヘナデモクレスは、堂々と戦う者というイメージがあったからだ。


 こんな吹聴をして、俺を苦しめる(から)め手をするとは思えない。


 だとすれば、あの赤い煙が言葉(たく)みにゲヘナデモクレスを誘導したか、そもそも赤い煙がゲヘナデモクレスの振りをしたかのどちらかになる。


 赤い煙はこの大陸の情報なら手に取るように分かる可能性が高いし、俺がSランクの配下を手にしたことも、当然知っているだろう。


 であればSランクだと思われるゲヘナデモクレスにも、当然赤い煙は目を向けるはずだ。


 だとすればそれを見越して、ゲヘナデモクレスを利用する動きをしていたのかもしれない。


 どうやったかは不明だが、もしゲヘナデモクレスを上手くだまして思い通りに動かしたのだとすれば、決して油断ができない。


 最悪の場合、ゲヘナデモクレス、赤い煙、勇者という三つの勢力をまとめて相手にしなければいけない可能性があった。


 このゲヘナデモクレスが吹聴したという情報は、捕らえた複数の冒険者から似たような情報を得ている。なので、それなりに信憑性(しんぴょうせい)があるのだ。


 しかし、細かいところまでは知らないらしい。故に俺は直接潜入をして、情報を収集することになったのである。


 だがその前に、せっかく冒険者を捕らえたのだ。最終的にこいつらはポイントに変換されるので、生き残る(すべ)はない。


 なのでこの機会に、ルルリアの肉について実験をしてみようと思う。


 マッドクラブの肉はカードに戻せば胃から消えてしまうが、若返りの効果があるルルリアの肉はどうなるか分からない。


 いずれ何らかの理由で必要になる可能性があるし、早いうちに知っていた方が良いだろう。


 そう思った俺は、さっそく準備に取り掛かるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ