SS 心が読めるにゃん♡
※時期的には078くらいの話です。
私は真面目な兵士。
自分で言うのもなんだが、周囲からも真面目で堅物な男だと思われている。
だからこそ、ハパンナ子爵様や他の有力者方がいる場所で、警備を任された。
国始まって以来のテロ事件が起こり、周囲もピリついている。
何が現れてもいいように、私は気を張り詰めていた。
しかしそんな時、その天使が突如として現れる。
メイド服に身を包んだケモミミ美少女、ジフレ様だ。
腰まで伸びる黒髪に、黄金の瞳。そして黒い猫耳と猫尻尾を持つお方である。
正直に言おう、私の性癖にドストライクだった。
そして再度口にするが、私は真面目で堅物な兵士。そう周囲には、思われている。
しかしそんな私にも、一つだけ秘密があった。
それは、重度のケモミミ好きということである。
偶然書物で獣人という存在を知ってから、私はその虜になってしまった。
故に夜のお店では、獣人の衣装や小道具を持参して楽しむほどである。
もちろん、このことは絶対に知られたくはない秘密だ。
仮に知られたら、おそらく大変なことになるだろう。
私の社会的地位や、友人関係という意味で。
それに最近では、街をうろつく犬や猫に対しても、気持ちが揺らぐのだ。
モンスターであれば、ホーンラビットがもうたまらない。
私もサモナーの端くれであり、当然ホーンラビットのメス個体を使役している。
酒の勢いで何度か過ちを犯してしまったが、まだ、まだ私は戻ることができるだろう。
こうしてジフレ様を前にしても、己を律して警備の任務に従事できている。
ハパンナ子爵様のご息女であらせられるルーナ様が、ジフレ様の尻尾を掴んだときは大変羨ましかった。
しかし私はそれを見ても、グッと我慢したのである。
私は自分の我慢強さと真面目さに、心の中で自画自賛したのは言うまでもない。
だがそれも、ジフレ様が心を読めると言ってから、崩れ去る。
非常に不味いと思った。
私は表面上は真面目な兵士だが、心の中では大変なことになっている。
心を読まれたら、一巻の終わりだ。
どうか、どうか私の心は読まないで欲しい。
そう、神に祈った。
しかし、現実は残酷だ。私はジフレ様に心を読めることを証明するための人物として、選ばれてしまう。
もうだめだ。こうなってしまえば、己の欲望に従うしかない。
それに、こんなチャンスは二度とこないだろう。
だから私は、心の中でこう繰り返した。
”両手を猫のように握り、片足を後ろにあげて、『心が読めるにゃん♡』ってウィンクしながら言ったら信じます!!”
するとジフレ様は驚愕の表情で私を見つめると、恥ずかしいのか少し顔を赤くして、私のことをキッと睨む。
正直、その表情はたまらなかった。
けれども、これは前菜だ。
私はジフレ様の次の行動で、取り繕うことが出来なくなる。
「心が読めるにゃん♡」
やってくれた。本当に、やってくれたのだ。
私の願いを、ジフレ様が聞き入れてくれた。
神様、そう、ジフレ様こそが、神様に違いない。
創造神様とは違う、もうひと柱の神様だ。
だからだろう。その瞬間、私はこのように叫んでいた。
「うぉおおお!! 本物ッ! 圧倒的本物ッ! 圧倒的感謝ッ! 確かに心が読まれる違和感がありました!!」
こうして私はその日から、真面目で堅物な兵士という偽りの姿をやめた。
代わりに今日からは、重度のケモナー兵士として、同志を増やす日々である。
あの日の感動を忘れないように、私は記憶が鮮明なうちにジフレ様のお姿を絵に残した。
もちろん、警備の仕事も抜かりない。
今の私は、きっと二十四時間戦える。
これでも昔は、画家を目指していたのだ。
画力には自信があった。
そうして出来上がった一枚目の絵はもちろん、両手を猫のように握り、片足を後ろにあげて、『心が読めるにゃん♡』ってウィンクしているジフレ様のお姿だ。
これほどの作品を仕上げたことは、これまでとして一度もない。
その時私は気がついたのだ。なぜ自分が画家になれなかったのか。
理由は簡単だ。この滾るような情熱が、以前の私には欠如していたのである。
そしてこの絵は、ハパンナ子爵様が超高額で購入してくださった。
更に私をお抱えの絵師として、雇ってくれるという。
私はそれを、もちろん承諾した。
なので私は兵士を辞めて、これからはケモナー絵師として生きていく。
私の夢は、大陸中にジフレ様のお姿を広めることだ。
そしていずれは、国境門の先にある別の国にも、ジフレ様の偉大さを伝えてみせよう。
これは、私にしかできない天命に違いない。
それから私は、ジフレ様のお姿を描き続けた。
すると驚くことに、多くの街から私の絵の評判を聞きつけて、購入を希望する者が殺到したのである。
中には強引な者もいたが、私はハパンナ子爵様のお抱えの絵師だ。
そうした者は、ハパンナ子爵様のお力で対処していただいた。
しかし不思議なのは、既にジフレ様が人気であることである。
もちろん、ジフレ様は素晴らしい。
だが何か理由があるのかもしれないと、私はその者たちに訊いてみた。
するとどうやら、ジフレ様は多くの街を救った英雄とのこと。
やはりジフレ様は、私が思った通り特別なケモミミ女神様だ。
これはますます、絵師として頑張らなければいけない。
そうして私の努力も実り、次第に弟子たちも増えていく。
皆がジフレ様の素晴らしさを理解した、同志たちでもあった。
そして私は後に、偉大な画家として名を残すことになる。
私は生涯、ジフレ様や美しいケモミミたちを描き続けるだろう。
この滾る情熱は、もう誰にも止められないのだから。
私は元真面目な兵士、今はジフレ様とケモミミを愛する、ケモナー絵師だ。
その名を、ケモノスキーという。
代表作は、ジフレ様シリーズ。ホーンラビットシリーズ。犬猫シリーズ等である。
どの作品も私や同志たちにとっては、たまらない一品に仕上がった。
これからも生涯、この滾る想いが消えない限り、ケモナー絵師として活躍していくことだろう。
ジフレ様、万歳!!
今回のSS投稿は、以上になります。
また次に何か記念を迎えたときに、SSを投稿すると思います。
引き続き、モンカドをよろしくお願いいたします。
<m(__)m>