258 船のダンジョン ⑮
まずはスキルの詳細を知るために、時間稼ぎをすることを決める。
なので百体のゾンビアリゲーターを召喚して、ルルリアへと向かわせた。
種族:ゾンビアリゲーター
種族特性
【生命探知】【闇水属性適性】【闇水属性耐性(小)】
【毒牙】【シャドーネイル】【顎強化(中)】
【身体能力上昇(小)】
また成す術なくやられているアンデッド軍団を、カードへと戻す。
ゾンビアリゲーターが泳ぐのに邪魔になっていたので、いない方が良いだろう。
「ギャァアアア!!」
すると暴走状態のルルリアが、ゾンビアリゲーターたちに攻撃を始めた。
四つある手の平から、無数の攻撃魔法が襲い掛かる。
加えて口からは、音の衝撃波のようなものも放たれていた。
それがモロに直撃してしまうと、Cランクのゾンビアリゲーターでは耐えられそうにはない。
しかし数が多くゾンビということもあり、しぶとく時間稼ぎを成功させていた。
足や尻尾など体の一部であれば、吹き飛ばされても簡単にはやられない。
俺はその間にネームドたちに命令を出したあと、生活魔法の氷塊で足場を作りつつ、距離を縮めていく。
距離が近いほど、鑑定の通りやすさが増すからだ。
だがそれでルルリアに狙われると面倒なので、絶隠密を使いながら進む。
ちなみに足場を作るだけの氷塊では攻撃と見なされず、絶隠密が解けることはなかった。
そうして程よい距離まで近づくと、俺は鑑定を発動させる。
またもや抵抗されるが、それを打ち破った。
種族:リヴァイド・オブ・コラプス(ルルリア)
種族特性
【水闇属性適性】【水闇音属性耐性(大)】
【呪毒の命肉】【呪毒攻撃付与】
【魔音師】【崩壊の歌声】【カースソング】
【ダークプール】【ソナー】【巨躯恵体】
【状態異常耐性(大)】【自己崩壊】
エクストラ
【ダンジョンボス】
【コラプスモンスター】
スキル
【歌上手】【泳ぎ上手】【剣適性】
【スラッシュ】【サークルスラッシュ】
【ウォーターシールド】【レインニードル】
【ウォーターランス】【上級鑑定妨害】
二度目になるが、やはり種族特性には気になるものが多い。
ゾンビアリゲーターがいつまで時間稼ぎをできるか分からないので、さっそく効果を確認しよう。
俺はそう思い、ルルリアの種族特性の中で気になる効果を、いくつか確かめ始める。
名称:呪毒攻撃付与
効果
・自身のあらゆる攻撃に対して、呪毒を付与することができる。
・呪毒には、以下の効果が内包されている。
【呪い(中)】【猛毒(中)】【衰弱(小)】
◆
名称:魔音師
効果
・音属性の効果を増加させる。
・音属性の制御力が上昇する。
・このスキルには、以下の音属性スキルが内包されている。
【音属性適性】【ボイスショック】【ウィスパー】
【ボイススピーカー】【サウンドキャプチャー 】
【ボイスコンフュージョン】【サイレント】
◆
名称:崩壊の歌声
効果
・崩壊の歌声を周囲へと響かせる。
・継続して聞かせることにより、以下の状態異常効果を蓄積させていく。
【呪い】【衰弱】【幻覚】
【暴走】【発狂】【即死】
◆
名称:カースソング
効果
・呪いの歌声を周囲へと響かせる。
・一定の確率で、相手を呪い(小)にする。
◆
名称:ダークプール
効果
・闇のプールを生成する。
・闇のプール内では、水属性と闇属性の効果が上昇する。
・闇のプール内では、火属性と光属性の効果が低下する。
◆
名称:ソナー
効果
・音を発信し、その反射で周囲のあらゆるものを探知する。
◆
名称:巨躯恵体
効果
・このスキルには、以下の効果が内包されている。
【身体能力上昇(大)】【生命力上昇(大)】
【身体操作上昇(中)】【魔力上昇(中)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(中)】
【自然治癒力上昇(中)】【自然魔力回復量上昇(中)】
これは……凄いな。
今まで見たモンスターの中でも、群を抜いて強い。
もちろん例外はいるが、ボーンドラゴンやゲシュタルトズンプフよりは、確実に上だろう。
だとすればランクはAを超えた存在、Sランクしかない。
Sランクは伝説上の存在であったり、国を亡ぼす存在とかいろいろ言われていた。
俺の中ではゲヘナデモクレスや赤い煙が、このランクだと思っている。
なのでまさか、こんなところで戦うことになるとは思わなかった。
ただSランク以上は区分が無いので、Sランクでも強さには大きな差がある。
このルルリアの種族であるリヴァイド・オブ・コラプスが、ゲヘナデモクレスや赤い煙に勝てるとは思わない。
それに自己崩壊によって、時間経過で自滅してしまう。
最悪の場合は、時間稼ぎをすればいずれは勝てるはずだ。
しかし、強敵であることもまた事実だった。
自己崩壊は自身への継続ダメージや、回復を受け付けなくなるデメリットがある。
けれどもその代わり全ての基礎能力が増加、スキル効果が僅かに上昇するのだ。
なので巨躯恵体の効果と合わさり、根本的な生命力と魔力はずば抜けているだろう。
だとすれば自滅するのも、それなりの時間がかかるのは間違いない。
その間に、簡単な国なら落とせてしまうだろう。
このリヴァイド・オブ・コラプスには、それだけの力がある。
なので個人的には、とてもカード化したくなった。
しかし果たして、自己崩壊してもカード化できるのかが、問題である。
もしかしたら、カードできない可能性もあるかもしれない。
どうなるかは分からないが、それも考慮しつつ戦おう。
また崩壊の歌声が、とてもやっかいだ。
先ほどは時間稼ぎで勝てるとも考えたが、この歌を長く聞くほど状態異常効果が蓄積していくらしい。
おそらく、微小→小→中→大→特大という風に、段階を踏んで悪化していくのだろう。
それといくつかは精神耐性である程度は耐えられるとは思うが、呪い・衰弱・即死が問題だ。
呪いは継続的に魔力が失われていき、魔法の操作も難しくなる。
状態が悪化すれば、魔力欠乏症で死亡するかもしれない。
次に衰弱は身体能力が低下していき、動くことが困難になっていく。
そして悪化すると、当然衰弱死が待っている。
最後に即死だが、これも精神耐性である程度は耐えられるが、いつまでも耐えられるものではない。
何より即死無効がなければ、アンデッドではない限りやられるのも時間の問題になってしまうだろう。
これは、メンバーの再編成が必要だな。
俺はそう考えると、命令を出していた配下たちの行動を一時中断させる。
そしてリヴァイド・オブ・コラプスであるルルリアのスキルについて話し、メンバーの再編成することを告げた。
当然レフは猛抗議したが、精神耐性(小)では厳しいので諦めてもらう。
そうして即死が効かない個体を残し、他のネームドたちを一度カードへと戻す。
選んだのはホブン・サン・ルトナイ、それとバフ要員で例外的に残したアロマである。
またこのときアンクに進化の兆しが現れていたが、今は後回しにした。
さて、おそらく生半可な火力では、倒す前に呪いや衰弱といった他の状態異常でやられる可能性もある。
俺自身状態異常耐性(特大)はあるが、精神耐性は(中)しかない。
であれば俺自身は距離をとりつつ、最初は配下たちにできるだけ頑張ってもらうことにしよう。
また可能な限りは短期決戦を考えて、ネームド以外のモンスターも召喚することを決める。
よし、この作戦で行こう。
そして俺の中である程度の道筋が出来上がると、今回選んだモンスターたちを召喚していくのだった。