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252 船のダンジョン ⑨


 ゴブリンチャンピオンになったホブンは、身長が二メートル程になっている。


 Bランクのモンスターになったが、その雰囲気はAランクにも劣らない。


 そしてキュアリーフラビットになったアロマは、正直翡翠(ひすい)色になった以外は以前と変わらなかった。


 しかしCランク、それも上位の強さを持っているので、見た目に騙されてはいけない。


 おそらく普通に突進するだけでも、ゴブリン程度なら瞬殺することは可能だろう。


 そう思いながら、改めてホブンとアロマの新たなステータスを確認してみる。


 

 種族:ゴブリンチャンピオン(ホブン)

 種族特性

【無属性適性】【打撃武器適性】【強打】

【連撃】【鉄の拳】【腕力上昇(中)】

【技量上昇(小)】【病気耐性(中)】

【自然治癒力上昇(小)】【悪食】

【踏ん張り】【他種族交配】


 エクストラ

【ダンジョンボス】

【ランクアップモンスター】


 スキル

【小波】【シールド】【パワーアップ】

【ヘヴィインパクト】【精神耐性(小)】

【物理耐性(小)】【魔法耐性(小)】

【継続戦闘】


 装備

 ・腕力の指輪(下級)(右)

 ・耐久の指輪(下級)(左)

 ・パワーバングル(右)

 ・スピードバングル(左)

 ・気配感知のネックレス

 ・再生のイヤリング


 ◆


 種族:キュアリーフラビット(アロマ)

 種族特性

【癒属性適性】【ミックスアロマ】

【緑の力】【ヒール】【キュア】

【分裂融合】【浮遊移動】【脱兎】


 エクストラ

【ユニゾンモンスター】

【フュージョンモンスター】


 スキル

【生命探知】


 装備

 ・死竜の角



 どちらもエクストラスキルを二つという、異例の存在だ。


 これから活躍してくれることは、間違いない。


 とりあえず実験したいことはあるものの、それはこのダンジョンを攻略して落ち着いたらにしよう。


 それとホブンとアロマは進化したので、このダンジョンではカードへと戻す。


 何かあれば召喚するが、今は他の配下に経験を積ませたい。


 そう言う訳で、俺はホブンとアロマをカードへと戻した。


 さて、ここからは、メンバーを変えていこう。


 といっても、レフ・アンク・クモドクロは引き続き連れていく。


 あとは、ネームドで唯一のDランクになってしまったサンも連れて行こう。


 それと未進化個体である、ルトナイも選ぶ。


 とりあえずは、これで進むことにした。


 俺はいない配下を召喚すると、メンバーを見る。



『前衛』

 ・レフ

 ・ルトナイ 

『遊撃』

 ・アンク

 ・サン

『その他』

 ・俺

 ・クモドクロ



 後衛無しの、闇属性チームになった。


 相手は基本闇属性耐性を持っている場合が多いので、当然闇属性は効きづらい。


 しかしそれは、こちらも同じである。


 なのでこの中だと、光属性や緑斬(リョクザン)のウィンドソードを持つサンが、良い働きをしてくれるだろう。


 それにルトナイも剣で戦う以上、属性軽減は無い。


 レフも素の能力でゴリ押しできるだろうし、この中だとアンクだけ有効打が無い感じだ。


 状態異常を与える指爪も、アンデッド系には効果が薄い。


 しかしアンクも進化が近いと思われるので、頑張ってほしいところではある。


 そうして準備も完了したので、次の部屋へと進むことにした。


 シックルレイスを倒したことで、いつの間にかドアが出現している。


 罠もなさそうなので、ルトナイに開けさせた。


 ドアの先は闇に染まっており、何が待ち受けているのか見当もつかない。


 また罠の部屋かもしれないし、注意して進もう。


 そして俺たちは、ドアを潜った。


 すると目の前に広がったのは、船内とは思えない、とても広い空間である。


 おそらく学校などの、体育館六つ分ほどはあるかもしれない。


 そんな空間には余計なものが無く、木の壁と床が広がっている。


 またこれまでの薄暗さが嘘のように、明るかった。


 天井をよく見れば、ダンジョンでよく見られる光る石がいくつも埋め込まれている。


 高さも同様に六つ分なのか、よく目を凝らさなえければ見えなかったかもしれない。


 そしてそんな空間に、待ち受けている者が存在していた。


 格好はいかにも海賊の船長であり、ドクロマークの船長帽に左目には眼帯、真っ赤な上着と黒いズボンを履いている。


 加えて腰には剣を身に着けており、身長は180cmほどでがっしりとした体型。


 赤い髪と無精(ぶしょう)ひげを生やした、三十代後半の男だった。


 昔は大層、女性からの人気があったと思われる。


 しかしそれも、過去の話だろう。


 今は見るも無残にも、腐っている。


 肌は灰色に近く、肉も部分的にそげ落ち、目は血走っていた。


 間違いなく、アンデッドである。


 そしてその海賊船長よりも目立っているのが、隣で木の十字架に(はりつけ)にされている人魚(・・)だった。


 青いウエーブがかった長い髪を持ち、下半身も青色の鱗を持つ魚である。


 おそらく美人だったのかもしれないが、こちらは海賊船長以上に酷い。


 まるで猫に食い荒らされた魚のように、いたるところの肉が無く、内臓と骨がむき出しである。


 両目も無く、舌も失っているのか、言葉にならない呪詛(じゅそ)のようなうわ言を、(うな)るようにブツブツと吐いていた。


 これは酷いな。あの海賊船長がこれを行ったのだとしたら、対話は難しいだろう。


 だが一応、戦闘前に声だけでもかけた方がいいか。もしかしたら、何か情報が得られるかもしれない。


 状況からして、この海賊船長がダンジョンボスなのは間違いないだろう。


 鑑定をするのは、それからでも遅くはない。


 むしろ鑑定したら、話すら聞くことが難しくなる。


 そう思い軽く息を吐くと、俺は悠長に待っている海賊船長の元へと近づく。


 すると意外にも、海賊船長の方から声をかけてきた。


「お前か。俺様の船を荒らす侵入者は。しかもなんだあれは、馬鹿にしているのか? あの罠を構築するのに、俺様がどれだけ苦労したと思っているんだ!」

「……そうか、それは悪かったな」


 最初に言ってきたのは、俺の攻略方法に対する愚痴(ぐち)である。


 確かに両刃斧の罠は召喚転移でスルーしたし、落ちる天井はロックゴーレムが支えた。


 水位の上がる迷路もストレージと数の暴力で突破したし、エリアボスはアロマのボーナスタイムにしてしまっている。


 唯一ちゃんと探索したのは、ループする船員室の廊下だけかもしれない。


 だとすれば、海賊船長がそれを言いたいのもよく分かった。


 ダンジョンの改造は、想像以上に大変だと女王もよく言っていたしな。


 そう考えると、もう少しまともに攻略すればよかったかもしれない。


「あれらを実現するために、モンスターの種類と数を減らし、エリアボスも一体だけにした。わざと日誌という情報を与えるデメリットを課すことで、コストも削減したんだぞ。

 罠ではなく出口を増やすデメリットを上手く活用できた時は、俺様は天才だと自分を褒めたほどだ。なのに瞬間移動? ふざけるな! ただでさえこの船を維持するのに、どれだけ俺様が苦労していると思っている!」


 海賊船長は不満が爆発したのか、そう言って怒りをあらわにした。


 それとやはり、移動し続ける幽霊船をダンジョンとして維持し続けるのは、かなり大変みたいだ。


「まあ、相性が悪かったと思って、諦めてくれ」

「あ、相性だぁ!? 百何十年ぶりの侵入者かと思ってワクワクした俺様の気持ちを、その一言で終わらすのかぁ!? ギリギリのところで何とか攻略する姿や、あとちょっとで間に合わない状況で絶望する光景を楽しみにしていたんだぞ!」


 どうやら、あの罠を如何(いか)にして攻略するのか、それを楽しみにしていたらしい。


 それはなんだか、悪いことをしてしまったな。


 けれども、そんなことは俺の知った話ではなかった。


 であれば入り口にそのことについて、立札でも用意してあれば少しは考えたかもしれない。 


「そう言われてもな。俺には俺の事情がある。わざわざ危険なアトラクションに付き合う暇はない」

「あ゛ぁ゛!? アトラクションだと!? ば、馬鹿にしやがって! ああもう、イラつく、イラついて仕方がねぇ!」


 するとそう言って、海賊船長が剣を抜く。


 俺もいよいよ戦闘が始まるのかと、身構えた。


 だが驚くことに、そこで海賊船長がある行動へと出る。


「おらっ!」

「#&■$#!!!!」 


 なんと、隣で(はりつけ)にされている人魚の肉を、その剣で切り取ったのだ。


 そして海賊船長は、その肉をムシャムシャと食べ始めた。



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