SS タヌゥカの冒険 ③
名称:ジン
種族:人族
年齢:15
性別:男
スキル
【カード召喚術】【直感】【闇属性適性】
【剣適性】【鑑定】【アイテムポケット】
【中級生活魔法】
男だと!?
まず初めに、俺はそのことに驚愕する。
顔が好みだっただけに、その衝撃はかなりのものだった。
だが俺がそんな事を思っていると、向こうからも鑑定される。
「うわっ!?」
「タヌゥカ!?」
「どうしたのですか!?」
二人に心配をされるが、それどころではない。
どういう訳か、偽装を突破されて本来のステータスを見られてしまった。
あまりの出来事に、俺はしばらく放心状態になってしまう。
すると気が付けば、ジンという男はいなくなっていた。
「……そうか、あいつも転移者か」
「タヌゥカ?」
「大丈夫ですか?」
女どもが何か言ってくるが、どうでもいい。
それよりも、俺以外に転移者が現れたことの方が問題だ。
主人公である俺の前に現れたということは、あいつは敵に違いない。
どう考えても顔にポイントを使っているだろうし、たぶんザコだろう。
鑑定を突破したのは、油断していたからだ。
それと、カード召喚術というのが気になる。
もしかしたらそれが、カマ野郎の神授スキルなのかもしれない。
はっ、どうせザコばかりを召喚する程度だろう。
俺の撃滅斬の方が強いに決まっている。
その内あのカマ野郎とは、戦うことになるだろう。
噛ませ犬として、精々俺の引き立て役になれよな。
◆
それからカマ野郎とは、ダンジョンで何度か遭遇する。
どうやらカマ野郎も、イレギュラーモンスターを狙っているようだ。
だがあのイレギュラーモンスターを倒すのは、主人公であるこの俺である。
そう思っていたのだが、肝心のイレギュラーモンスターが既にいない。
どこを探しても、見つからなかった。
それによって第一発見者である俺が、一部のザコ共から嘘つき呼ばわりされる始末だ。
腹が立って仕方がない。
いったいあのイレギュラーモンスターは、どこに行ったんだ?
もしかしてあの負け犬カマ野郎が……? いや、それはないな。
あのイベントは、主人公である俺のために用意されていたに違いない。
ということは、力をつけて最少人数で倒せということだろう。
クソが。今時ダルい条件なんて時代遅れなんだよ!!
そんなことがあったが、次は戦争が待っている。
俺はもちろん、参加する予定だ。
この日のために、女だけの有名パーティに加入している。
もちろん、女どもは全員惚れさせた。
ったく。異性好感度上昇(大)は最強だぜ。
それに一度寝れば、絶倫とテクニシャンで骨抜きにできる。
この力があれば、顔なんて関係ない。
全ての美女と美少女は、俺の物だ!!
戦争で手柄を上げれば、貴族の女とも縁ができる。
今から楽しみだぜ。
しかし戦場になる場所で、顔面改造カマ野郎に遭遇した。
それが、全ての間違いに繋がる。
この顔面改造カマ野郎のせいで、俺のハーレムが崩壊していく。
なんでだ? なんでなんだよ!!
仕舞いには、女だけのパーティからも追放される。
意味が分からない。
神に選ばれてチートを得た俺が、追放? 女共もなんでそんな目で俺を見るんだ!?
許さねえ。全部コイツが悪い。コイツさえいなければ、全て上手く行ったんだ。
だから、ぶっ殺してやる。
「撃滅斬!」
俺の放った神授スキルで、さっさとくたばりやがれ!
だが結果として、奴は生きていた。
しかもどういう訳か、恐ろしい姿になっている。
「ひっ!?」
気が付けば俺は、国境門とかいうバカでかい門の前に連れてこられていた。
何なんだよコイツは! まるで魔王じゃないか!
そう思った瞬間、俺はこの言葉を発していた。
「そ、そうか。お前は魔王なのか! そして俺は英雄、いや勇者になる! これは試練だ。主人公の俺が乗り越える試練なんだ!」
神に選ばれた主人公の俺が、ここで負けるはずがない。
こいつを倒して、俺は勇者になる。
だから俺は、目の前の化け物に立ち向かう。
けれども、現実は違った。
「あ、あぁあ。死にたくない。俺は主人公だ。ここから覚醒するんだ……」
気が付けば俺は両手両足を失い、死にかけていた。
加えてやつの周りには、ゴブリンが現れる。
そして、最悪な命令が下された。
「そいつを生きたまま喰らえ」
するとゴブリンたちが、俺の方へと向ってくる。
「や、やめっ、こんな終わり方嫌だ! だ、誰かたすけッ――」
「「「ごぶが!」」」
俺の身体が、ゴブリンに食われていく。
痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
いやだ、死にたくない!
俺は美少女ハーレムを築いて、世界を手に入れるんだ!
神に選ばれた主人公! そうだ! 死んでも次がある!
次はもっと強いチートを手に入れて、この魔王を倒してみせる!
ははは! 俺は神に選ばれた主人公、タヌゥカ様だぞ!
俺は滅びない! 絶対に戻ってきてやる!
待っていやがれ!!!
そして俺は、ゴブリンに喰われて死んだ。
※本編でタヌゥカが復活することは、おそらくありません。
最後に戻ってくる的なやつは、死の間際の妄想です。