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235 これからに向けて


 魔王を名乗る赤い煙を倒すため、一丸となった俺たち。


 女王も記憶と新たな姿を手にしたことで、状況も動き始める。


 まず女王が始めたのは、表の城下町の削除だった。


 今回の出来事で覚悟が決まったのか、もう過去の呪縛(じゅばく)(とら)われ続ける自分から脱却(だっきゃく)する事を決めたらしい。


 それにより大幅なコストの削減と共に、多くのダンジョンポイントを手にしたようだ。


 削除した分ある程度は減ってしまうものの、いくつかダンジョンポイントが返って来ると言っていた。


 ちなみにそれで買い物をする場所を失った訳だが、それについては問題ない。


 表の城下町で買えた物は、既にダンジョンに登録してある物となる。


 つまり、欲しければ女王が生成してくれるという。


 最初は無料でいいと言われたが、俺は少しでもダンジョンの足しにしてもらうため、料金を払うことにした。


 けれども女王はそれに納得しなかったので、代わりに金銭や物が不足しているギルンに与えてほしいと言っておく。


 ギルンはアイテムボックスを所持しているものの、中身はほとんど無いに等しい。


 変わった形の石や、お気に入りの木の棒。他にはギルンが作った骨のオブジェなどが入っているようだ。


 どうやら必要な物は、母親であるナンナのアイテムボックスに入っているとのこと。


 なので着の身着のままやって来たに等しいので、俺は女王にそうお願いをしたのだ。


 女王はまだ納得していなかったものの、渋々(しぶしぶ)それを了承してくれた。


 ちなみに表の城下町を消すにあたって、捕らえていた者たちは処分されている。


 シャーリーは少し残念そうだったが、彼らはダンジョンのポイントへと無事に変換された。


 そして表の城についても、一部削除した上で裏の城と統合している。


 ただ個人的な私室などが侵入者に荒らされては、たまったものではない。


 なのでボス部屋となっている女王の間の奥にある通路部分を拡張して、そこに設置したみたいだ。


 宝物庫や転移用の魔法陣なども、その通路から行ける。


 そうして城のダンジョンに裏表が無くなった訳だが、当然簡単にできるものではない。


 女王はあれからダンジョンのシステム調整のため、ダンジョンコアのある部屋に(こも)りっぱなしである。


 また侵入者への対応も排除か追い出す以外に、対話する方法も組み込んでいるとのこと。


 更には俺のダンジョン内での制限についても、手を出している。


 なんというかまるで今の女王は、会社に寝泊まりし続けているプログラマーのようだ。


 もしアンデッドでなければ、過労死まっしぐらだっただろう。


 しかしそれも今後のことを考えたら必要な事なので、女王には頑張ってもらいたい。


 ちなみにヴラシュは女王の護衛をしつつ、アイディア出しや何か手伝えることがないかと模索している。


 ヴラシュにはカードを渡しているものの、今の女王を護衛する力としては足りていない。


 だが誰かが護衛についていること自体に意味があるらしく、代わりにエンヴァーグが自由に動けるようになった。


 エンヴァーグは現在、ギルンの教育をしている。


 ギルンも今回から晴れて守護者の仲間入りを果たし、指輪を与えられた。


 なので少しでも戦力として貢献できるように、エンヴァーグから剣の扱いを教わっているのだ。


 ギルンには剣適性があり、エンヴァーグも元々女王に剣を教えていた人物なので、教えるにはピッタリの人物だろう。


 またシャーリーも、ギルンに知識面や礼儀作法などを教えている。


 他にはこっそり侵入してきた者への、対処もしているようだ。


 しかし現状では少しでもダンジョンポイントが欲しいので、何人かはあえて見逃しているらしい。


 だが何人かは、排除する過程で情報を抜き取っているみたいだ。


 ちなみに前者は結果的に追い返したことにして、後者は結果的に始末したこととなっている。


 そんな風に、ダンジョンのルールを誤魔化しているとのこと。


 これは女王がシステムの一部に手を加えたことで、実現したことらしい。


 また情報を抜き取るうえで、色々と面白い事が分かったとシャーリーは言っていた。


 それについては情報が(そろ)い次第、色々と手を考えるそうだ。


 おそらく俺の力が必要になるらしいので、その時には手を貸してほしいとのこと。


 当然俺はそれを了承して、その時が来たら声をかけてほしいと言っておいた。


 そして最後にドヴォールたちについてだが、彼らはいつも通り門番をしながら、周囲を巡回している。


 どうやら少しずつ、ダンジョンの周囲へとやって来る者が増えているらしい。


 おそらく、様子見の斥候(せっこう)などだろう。


 なのでもしかしたらこの先、大量の敵が現れる可能性もありそうだ。


 ダンジョンとしてはポイント大量入手のチャンスなので、これはありがたい事かもしれない。


 (ゆえ)にそうした者たちについても、特に排除することなく見逃している。


 直近での大きな変化としては、まあこんなところだろう。


 そして俺についてなんだが、最後の宝珠を手に入れるための準備をしたり、休息などをとっていた。


 休んでいる暇はあまりないのだが、ヴラシュがこういう時だからこそ、少しは休むべきだと説得してきた感じである。


 俺はダンジョンの最高戦力なので、もしものことがあったら全てが台無しになると言われた。


 その可能性を少しでも下げるために、休息をとってほしいらしい。


 また女王たちはアンデッド故に、そうした生者の疲労に気がつくのが難しいようだ。


 加えてギルンの場合だと、そもそもそんな気は回らない。


 なので城の中でこうした気遣いができるのは、ヴラシュだけとなる。


 俺はデミゴッド故にそこまでやわではないのだが、精神的な疲労は確かに感じていた。


 そう言う訳でヴラシュの言葉に従い、俺はここ数日間はゆっくりしていたのである。


 食材をふんだんに使った料理を作ったり、城にあった大浴場に入ったりもした。


 また大浴場ではレフたちがひと悶着(もんちゃく)起こしたのだが、それについては忘れよう。


 いや、忘れるのは難しいな。


 俺は大浴場であった出来事を、思い出し始める。


 まず大浴場は、男女で分かれていた。


 当然俺は、オスのネームド配下たちと共に男湯に向かおうとする。


 しかしそこでレフたちメスのネームド配下たちが、待ったをかけた。


 どうにかして俺に女湯へと来るようにと、駄々をこね始めたのである。


 俺は女湯へと入ることに対してもちろん抵抗があったので、できれば遠慮したいところ。


 故に俺はせっかくだし、男湯で全員一緒に入るかと提案を試みる。


 するとそれに対して、メスモンスターたちから猛抗議をされた。


 特にジョンとは無理だと、そう鳴き声を上げたのである。


 しかしそのとき、男女で分かれるために召喚していたこともあって、ジョンはそれを聞いてしまう。


「……な、なんでオイラだけ……」


 ジョンはそれに相当ショックを受けたようであり、両手両膝をついて項垂(うなだ)れた。


 これはジョンが嫌われているという訳ではなく、訊けばジョンと混浴すること自体が生理的に嫌だとのこと。


 それはそれでなんか(あわ)れだが、これも個が確立されている影響だろう。


 俺が女湯に誘われているのはある意味、配下たちにとってはたぶん保護者のような扱いなのだと思われる。


「グォオ」


 すると進まない話にイラついたのか、グインからもう面倒だから女湯に行けと言われてしまう。


 ちなみにグインは現在、縮小で小さくなっている状態だ。


「まあ、これについては、もう仕方がないか」


 最終的にそう(つぶや)いて、俺はこのまま進まないよりはましだと思い、女湯に行くことを決める。


 アンデッドである女王たちは大浴場をほとんど使わないみたいだし、問題はないだろう。

 

 そうして、ネームドたちと俺はそれぞれ男湯と女湯へと分かれる。


 ちなみにその内訳は、以下の通りだ。



『男湯』

 ホブン・ジョン・グイン・ルトナイ・グライス・トーン


『女湯』

 俺、レフ・アンク・アロマ・リーフェ・サン


 

 トーンとサンは性別不明だが、トーンは男湯に、サンは女湯に振り分けた。


 これでちょうど、6:6でバランスがとれた感じである。


 ただ男湯の方が図体の大きい配下が多いが、まあ大浴場は広いので大丈夫だろう。


 また男湯に行くジョンたちに、クモドクロが作った入浴道具を渡している。


 クモドクロは素材を渡せば、説明するだけで様々な物を作ってくれた。


 クオリティも高く、普通に売っていてもおかしくないレベルである。


 そうして準備もできたので、俺は少しため息を吐きながらも、女湯に入るのであった。

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