表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/475

232 女王の決意


「なっ!?」

「女王様!」

「えぇ!?」


 突然の出来事に対して、俺たちは驚愕(きょうがく)の声を出す。

 

「うっ……」


 また幻憶(げんおく)のメダルは、役目を終えたのか光を失うと、床に音を立てて落ちる。


 そして青白い光線を受けた女王は、同時に膝をついた。


 アンデッド故に無事か判断しづらいが、意識はあるようだ。


 エンヴァーグも女王へと駆け寄り、体が無事か確認をとる。


「じょ、女王様、ご無事ですか!?」

「……」


 しかし女王はエンヴァーグの声に無反応であり、硬直していた。


 加えてよく見れば、若干震えているようにも見える。


「ど、どどうすれば!? じ、ジン君! あれは一体何なんだい!?」

「そうだジン殿! あの光はどういうことか、説明して頂くぞ!」


 するとヴラシュは慌てだし、エンヴァーグも怒気を込めながらそう問いかけてきた。


 これは不味いな。下手な説明をすれば、勘違いをさせてしまう。


 ここは正直に、ありのままを話すしかない。


 俺が、そう判断をした時だった。


「待って、大丈夫。私は大丈夫よ」


 膝をついていた女王がそう言って、ゆっくりと立ち上がる。


「女王様!?」

「ルミナリア女王様! 大丈夫なのですか!?」


 当然二人は心配して声を上げるが、女王がそれを手で制す。


「本当に大丈夫よ。ただ衝撃が強かっただけだから。それとジン君、色々と、そう、色々とありがとうね」

「あ、ああ」


 何となくその言葉で、俺はあることが予想できてしまった。


 おそらく女王は、自ら封印していた記憶を取り戻したのだ。


 また俺が幻の世界でおこなったことも、把握したのかもしれない。


「訊きたいことがあるかもしれないけど、シャーリーやドヴォールたちが来てから話すわ。今呼んだところだから、すぐに来るはずよ」


 ヴラシュとエンヴァーグに対して、女王は先にそう言った。


 説明をするなら、全員がそろった時が良いと判断したのだろう。


 俺はその間に、床に落ちた幻憶(げんおく)のメダルを拾っておく。


 もう何も起きないとは思うが、念のためストレージに収納した。


 女王にも一応許可をとったが、問題ないとのこと。


 声をかけたとき少しぎこちなかったが、多分それは幼い頃の黒歴史を知られて、恥ずかしかったのかもしれない。


 それからしばし経ち、ようやく全員が集まった。


 俺、レフ、女王、ヴラシュ、エンヴァーグ、シャーリー、ギルン、ドヴォール、ザグール。


 数にして、八人と一匹が集まる。


 この中でギルンだけは何が何だか理解していないが、情報共有という面で呼んだのだろう。


 ちょうどシャーリーと勉強をしていたらしく、一緒にやってきたらしい。


「全員集まったわね。さっそくだけど、結論から言うわ。全ての元凶は、アルハイドお兄様ではなかった。お兄様は、体を奪われていただけに過ぎないのよ」

「そ、それは!?」

「っ……」


 その言葉に、エンヴァーグとシャーリーは特に強い反応を示した。


 ドヴォールとザグールも驚愕しているが、二人ほどではない。


 ヴラシュとギルンは後から加わった者だからか、事実をありのままに受け止めている。


「どうやらお兄様は、×××に体を奪われたみたいね。×××。やっぱり、言えないみたいね。言えないという時点で、誰だか分かるでしょ? つまりすべての元凶は、×××ということよ」


 女王が口にするとノイズが走り、聞き取ることができない。


 口の動きで理解しようにも、女王の頭部は髑髏(どくろ)である。


 読唇術(どくしんじゅつ)がそもそも使えないこともあり、全く分からなかった。


 しかし女王が口にできない相手というだけで、ある意味確定したようなものだ。


 そう、あの赤い煙こそが、この大陸を支配している者ということだろう。


「くっ、ではアルハイド、いえアルハイド殿下は、汚名を着せられていたということに……」

「私もアルハイド殿下の性格からして、おかしいとは思っていましたが……」


 どうやら二人は、アンデッド化する前に偽アルハイドと出会っていたらしい。


 そこでこれまでが演技だったことと、これから行うことを告げられたようだ。


 結果として偽アルハイドを止めることができずに、アンデッドになってしまったとのこと。


 おそらくそれについても、あの赤い煙の嫌がらせを兼ねた作戦だったのだろう。


「そういうことね。つまりお兄様は、今もお体を奪われたままだわ。私は、それが許せない。そしてこの国を滅ぼした×××を、許すわけにはいかないわ。

 けれども現状悔しいことに、私たちは×××に手を出すことができない。だから、一つの方法を思いついたの」


 そう言って女王は、俺の方を向く。


 眼球こそないが、強い何かを俺はその眼窩(がんか)の内から感じ取った。


 青い灯が、ゆらゆらと波打っている。


 そして女王は、俺に対してこのようなお願いを口にした。


「ジン君、あなたのカード召喚術で、私たちをカード化して欲しいの。もちろん、今すぐにではないわ。このダンジョンを残したままにするために、色々と課題がある。

 けどそれを乗り越えれば、私たちは×××と戦うことができるはずだわ。どうかしら、お願いできる?」

「……ああ、わかった」


 俺はその提案に少々考えをめぐらしつつも、最終的には受け入れた。


 すると女王はその言葉を聞くと俺に近づき、耳元でこうささやく。


「ふふっ、これが叶えば私も、悪の魔獣使い、ベゲゲボズンの配下の一員ね」

「!?」


 俺がその言葉に驚いていると女王は離れ、その際に「ありがとう」と口にした。


 若干ヴラシュの視線が刺さっている気がするが、気づかない振りをする。


 また女王が離れた際に、シャーリーへと青白い光が女王から放たれた。


「……そういうことですか」


 どうやら、シャーリーにも幻の世界での記憶が移ったらしい。


 すると俺の顔を見て、シャーリーがこれまで見たことのない、満面の笑みを浮かべる。


「!?!?」


 それに気がついたのか、ギルンが俺とシャーリーの顔を交互に見ては、驚き戸惑っていた。


 とりあえずギルンの反応にも、気づかない振りをしよう。


「ジン君によるカード化は、私、エンヴァーグ、シャーリー、ドヴォール、ザグールの五名とするわ。異論のある者はいるかしら?」

「えっ、僕は……?」


 女王の発言に、ヴラシュがそう声をもらす。


「ヴラシュ君は元々このダンジョンのモンスターではないから、×××の影響を受けないから大丈夫よ」


 それに対して女王がそう言うが、少々納得ができないみたいだ。


 なのでここは、俺からも声をかけておく。


「ヴラシュにはカードを渡しているし、個人的な事情からヴラシュにはそのままでいてほしい」

「個人的な事情?」

「ああ、いずれ俺はこの大陸を出るつもりだが、その際に誰かが俺のカードを持っていてくれると、目印になるんだ。

 今はまだ魔力総量の問題で難しいが、いずれそのカードを目印にして、大陸間の転移ができるようになる。だから、ヴラシュにはそのままでいてほしいんだ」


 俺はヴラシュにそう説明をすると同時に、女王をカード化した際の問題についても、考えを巡らす。


 女王はダンジョンを保持しながらカード化されるつもりのようだが、無事にできたとして、次に俺の大陸の移動問題があった。


 まあ最悪の場合は、ヴラシュに女王を譲渡することになるかもしれない。


 おそらく女王は、この地を離れることはしないだろう。


 なのでそういう意味でも、念のためヴラシュをカード化するわけにはいかない。


「……うん、ジン君がそこまで言うなら、わかったよ」


 ヴラシュは渋々、俺の言葉に納得してくれた。


「他に異論がある者はいないわね。さて、今後を思えば私ももう、戦いを避けるわけにはいかないわ」


 すると女王はそう言って、異空間から鞘に入った剣を取り出す。


「それに、私は思い出したの。本当の私は、戦いが大好きだった」


 そう言って剣を勢いよく抜いた瞬間、女王の体が光る。


 一体何が?


 突然の出来事に、俺は戸惑いを隠せない。


 だが眩い光が止んだとき、その理由を理解する。


「私はSランク冒険者を目指した魔法剣士、ルミナリア・フォン・ルベニアよ!」


 高らかに声を上げて剣を掲げる女王の姿は、一変していた。


 赤いドレスは、動きやすいドレスアーマーとなり、赤と銀の色合いをしている。


 また王冠も銀色のティアラになり、長い金髪は一つに結ってあった。


 いわゆる、ポニーテイルという髪型である。


 そして骸骨の顔と、眼窩(がんか)の青い(ともしび)は変わらずに揺らめいていた。


 なお剣の鞘は、女王の腰へと装着されている。


 全体的に見て姫騎士という言葉が脳裏によぎるが、女王騎士という方が正しいかもしれない。


「お、おおぉ! 何と懐かしゅうございます! あの頃の女王様がお戻りになるとは、儂は感動で無い胸が熱く感じますぞ!」

「姫様、いえ、女王様。お転婆だったあの頃を思い出しますね」


 その変化に一番反応を示したのは、やはりエンヴァーグとシャーリーだった。


「うむ。これこそが、私の真の姿だ。今までが、偽りだったと言えるわね」


 なるほど。ダンジョンボスが進化したとかではなく、これまでが仮の姿だったのだろう。


 つまり以前の姿は、弱体化していたということになる。


 戦い好きである幼い頃の姿と、戦いが苦手だった女王。


 乖離(かいり)していた過去と未来。


 それが記憶の封印が解かれたことで、真の姿に至ったのだろう。


 切っ掛けが幻憶(げんおく)のメダルである以上、アルハイドはそれも見越していたのかもしれない。


 身体を奪われたとしても、ただでは転ばなかったという訳だ。


「ルミナリア女王様、美しい……」

「すげぇ!」

「女王様、万歳!」

「万歳!」


 女王の変化にヴラシュは見惚(みと)れ、ギルンは素直に感動していた。


 またドヴォールとザグールは、仕切りに万歳と声を上げている。


「これから忙しくなるわ! ジン君、よろしく頼むわね!」

「ああ、俺も全力を尽くそう」


 ここまで来たら乗るしかない、このビッグウェーブに。


 何故かそんな言葉が脳裏によぎりながらも、俺はそう強く答えるのだった。


 これから魔王と名乗った赤い煙を倒すべく、一丸となって俺たちは動いていくことだろう。

 

 そのためにも俺は最後の宝珠を手に入れて、更にはより強くなる必要がある。


 またゲヘナデモクレスとの戦いも控えており、今後ますます忙しくなることは間違いない。


 これから待ち受けている出来事に油断は一切できないが、俺はどこか楽しみで仕方がなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ