216 沼地のダンジョン ⑭
種族:ガン・アーミービースト(ジョン)
種族特性
【魔銃召喚】【拳適性】【糸吐き】
【身体能力上昇(中)】【技量上昇(小)】
【気配感知】【集団行動】
エクストラ
【フュージョンモンスター】
スキル
【集中】【精神耐性(小)】
【集団指揮】
装備
・技量の指輪(下級)(右)
・魔力の指輪(下級)(左)
・テクニカルバングル(右)
・マジカルバングル(左)
・直感のネックレス
・魔補充のイヤリング
召喚したジョンは、身長がおよそ180cm。
俺が165cmほどなので、少し見上げることになる。
するとジョンは俺の前に片膝をつくと、こう言った。
「ボス、これからも一層、忠誠を誓うッス!」
「そうか。よろしく頼む……それよりも、喋られるようになったみたいだな」
「はいッス!」
俺のことをボスと呼び、語尾に『ッス』をつけながら、ジョンは純粋な笑みを浮かべる。
どうやら、進化したことで会話が可能になったみたいだ。
まあ見た目は獣人に見えるので、喋ってもおかしくはないか。
ランクはおそらく、Bという感じだろう。
それと通常のスキルがだいぶ残っているのは、ありがたい。
拳適性と糸吐きも、しっかりと引き継がれている。
ただ気になるのは、魔導ライフル銃はどうしたのだろうか?
魔銃召喚というスキルが、それと関係しているのかもしれない。
とりあえず、その効果を確認してみる。
名称:魔銃召喚
効果
・取り込んだ銃火器を召喚できるようになる。
・取り込んだ銃火器は、自動的に修復される。
・取り込める銃火器の数は、魔力量に依存する。
・またこのスキルは、以下の銃スキルを内包している。
【銃適性】【ショット】【クイックリロード】
【クイックショット】【サイレントショット】
【三点バースト】【ホーミングショット】
これは凄い……。神授スキルとはいかなくとも、エクストラレベルは確実にありそうだ。
それと取り込んだ銃火器を召喚できるようになるということは、魔導ライフル銃も召喚できるのだろうか?
俺はそれが気になり、ジョンに魔銃召喚を使ってもらう。
「魔銃召喚ッス!」
すると、思った通りどこからともなく魔導ライフル銃が現れた。
効果も以前の物と同じであり、そこに遜色はない。
実際に試し打ちさせると、威力もこれまで通りだった。
これは、便利だな。
出し入れも自由みたいだし、壊れても自動的に修復できるみたいだ。
おそらく以前なら修復不可能なレベルでも、このスキルであれば修復できるのかもしれない。
また誰かに盗まれる心配もなく、盗られても召喚を解除すればいいだけだ。
そして何より、七種類の銃スキルが使用できることが大きい。
【銃適性】【ショット】【サイレントショット】【三点バースト】は、魔導ライフル銃にも備わっていた。
【クイックリロード】【クイックショット】【ホーミングショット】は、見たことのない新しいものになる。
【クイックリロード】は、銃の装填が即座にできるスキルのようだ。
ただ魔導ライフル銃は、魔力を消費するだけで撃てるので、現状ではあまり活用できないかもしれない。
次に【クイックショット】は、いわゆる早撃ちだ。
連射はできず威力も少し低下するみたいだが、ここぞというとき役に立つことだろう。
最後に【ホーミングショット】は、撃った弾がしばらく相手を追尾するスキルだ。
弓系スキルにもあり、便利なスキルである。
こうして見ると、魔銃召喚はヤバいな。
スキルランクでいえば、明らかに超級スキルだろう。
これを推定Bランクのジョンが持っているのは、破格である。
他の種族スキルが控えめなのは、この魔銃召喚があるからだろう。
ちなみに進化前に装備させていた斥候系の革鎧は、完全に消えたようだ。
その代わりに、緑色の軍服などになったのだろう。
この装備はスケルトンナイトの装備と同じく、種族固有の物になる。
一応着脱はできるみたいだが、脱ぐとかなり弱体化するみたいだ。
またこうした装備は、破損しても自動修復される。
なお緑色のヘルメットを外させると、やはり茶色い狼系のケモミミが生えていた。
ジョンには悪いが、なんだか違和感が大きい。
コスプレ感がするからだろうか?
まあ、そのうち慣れるだろう。
それと本来の耳のある顔の左右には、何もなかった。
いつもは髪で隠れているので、こちらは特に違和感はない。
とりあえずジョンの進化については、こんなところだろう。
悲しきモンスターにならなくて、本当によかった。
◆
その後は予定通り、キャリアンイーターの実験を行う。
種族:キャリアンイーター
種族特性
【生命感知】【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【腐肉吸収】【腐肉感知】【身体操作上昇(大)】
【再生】【鞭適性】【ウィップボンデージ】
【ウィップストレート】【アシッドショット】
エクストラ
【エリアボス】
スキル
【肥料生成】【シャドーランス】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(中)】
召喚したキャリアンイーターは、一軒家のように大きい。
普段はモンブランのような状態であり、人型は最終手段のようだ。
あの形態はとても疲れるらしく、頻繁にするのは難しいようである。
どうやら基本的に、その場から動かない種族のようだった。
なので自分では動かず、ロットキャリアに腐肉を運んでもらっていたのだろう。
そのロットキャリアには、褒美として肥料を与えていたようだ。
実際生成してもらうと、蔓の先端から茶色い土のような肥料が出てくる。
俺にはよく分からないが、植物系モンスターにはたまらない一品なのだろう。
試しにトーンを召喚して与えてみると、めちゃくちゃ喜んでいた。
まるでトーンシロップを貰った、リーフェのようである。
そしてこの周辺に沼地ではなく草花が生い茂っているのは、この肥料が原因だったのだろう。
周囲を見れば分かる通り、この肥料の効果は相当高い。
これは、今後何かしらの形で役に立ちそうだ。
さて、肝心の実験だが、キャリアンイーターにコイツを吸収してもらおうと思う。
俺はカード召喚術で、一体のゾンビを召喚した。
少しかわいそうだが、これも今後のためだ。
そうしてゾンビは、キャリアンイーターのウツボカズラの中に入れられ、吸収される。
もちろんやられてしまったので、カードとして戻ってきた。
ふむ。カード自体が消滅する可能性も覚悟していたが、普通に戻ってきたな。
「どうだ? 力は増したか?」
「――」
「なるほど」
どうやら、魔力が少し回復しただけのようだ。
配下のゾンビを無限に吸収させて、強化できないことは理解した。
おそらく力として吸収されるよりも、カードとして戻る方が優先されたのかもしれない。
そう簡単にはいかないか。まあ、仕方がない。
ちなみにダンジョンにいたゾンビフロッグを与えたら、こちらは普通に吸収できた。
ほんの極僅かだが、力を得たらしい。
だが効率としては、もの凄く悪いようだ。
元々二十四時間体制でなおかつ、長い年月をかけてここまで成長したとのこと。
なので必死にゾンビ系を集めてキャリアンイーターを強化するよりも、他の配下を育てた方が効率がよさそうだ。
だとすれば、余ったのを纏めてやる程度でいいだろう。
幸い俺のカード召喚術とは違い、時間が経ったものやストレージに収納していたものでも、問題なく吸収できるみたいである。
この大陸にいる限り、少しずつだが強化することはできるはずだ。
またキャリアンイーター自体はBランクでも、実際の強さはAランクの上位はありそうなので、これから大いに活躍することだろう。
良い配下を手に入れた。
とりあえず、キャリアンイーターの実験は以上である。




