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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第四章

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146 ゲヘナデモクレス召喚


 いざ召喚することになったが、果たして言うことを聞くのだろうか。


 一応リジャンシャン樹海でこの指輪を渡された時、三度だけ無条件に力を貸してくれると言っていた。


 雰囲気からして、嘘を言うようなモンスターではない気がする。


 だからおそらく、約束は守ってくれるはずだ。


 ここで怖気づいていても仕方がない。召喚しよう。


 俺は覚悟を決めると、紫黒(しこく)の指輪の効果を発動させる。


 頼むぞ。


 心の中で祈りながら、変化を待つ。


 すると紫黒(しこく)の指輪が光り出し、目の前に紫黒の煙が現れる。


 そして煙が晴れると、そこにそいつは立っていた。


「とうとう、この我を召喚したか!」

 

 そう言って俺を見つめる存在。ゲヘナデモクレスが呼び出しに応じて現れた。


「して、この老婆を消せばよいのか?」

「ひぃい!?」


 ゲヘナデモクレスが指さすと、エリシャは腰を抜かして悲鳴を上げる。


「ま、待て。その人は敵じゃない。やってほしいことをまずは説明させてくれ」


 俺は禍々(まがまが)しい雰囲気を(まと)うゲヘナデモクレスに対して、怖気(おじけ)ることなく止めに入った。


「ほう。ならば、その望みを早く言うがよい」


 ゲヘナデモクレスは腕を組み、俺と向き合う。


 改めて召喚して思うが、現状俺では勝てそうにない。


 本当に、とんでもない存在を産み出してしまった。


 そう思いながら、俺は説明を始める。


「まずこれからそこのエリシャに、とある場所へと転移させてもらう。そこにはやっかいな敵がいて、何かする前に倒す必要があるんだ。だからゲヘナデモクレスには、転移した瞬間に全力でその敵に攻撃してほしい」

「……もう一度」

「ん?」


 今もう一度と言ったか?


「もう一度、我の名前を言ってみろ」

「ゲ、ゲヘナデモクレス」


 俺がそう言うと、ゲヘナデモクレスがフリーズする。


 なんだ? 何か不味いことを言ったのか?


 意味が分からず、俺は冷や汗をかく。


「ふ……ふはは、我の名前を忘れていなかったみたいだな! もし忘れているようであれば、消し飛ばしているところだ! ある……(なんじ)も命拾いしたな!」

「そ、そうか……それはよかった」


 名前を忘れたり、間違っていたら不味かったな。


 やはり三度だけ無条件に力を貸すといっても、何が原因で暴走するか分からない。


 安易に呼び出すのは、危険ということを改めて理解した。


「よろしい。その願い、叶えてやろう。で、他に何をすればよいのだ?」

「他?」

「そうだ。その程度のことで、一度とカウントするほど我は狭量(きょうりょう)ではない。顕現(けんげん)し続けられる限界までは従ってやろう」

「顕現できる限界?」


 この召喚には、制限時間のようなものがあったのだろうか?


「そうだ。何もしなければ一日は顕現できよう。だが、我が力を使えば使うほど、その時間は短くなる」

「なるほど……」


 紫黒(しこく)の指輪にそうした説明は無かったが、実際にはそんな限界があったらしい。


 まあ、今思えば当然だろう。


 でなければゲヘナデモクレスを召喚し続けることで、実質戦わずに手に入れることができる……いや、それは違うか。


 たとえそうだとしても、結局そんなズルはゲヘナデモクレスの機嫌を損ねて、殺されてしまうから関係ない。


 姑息(こそく)な手段は、悪手だろう。


 俺はゲヘナデモクレスの召喚について、そう思った。


(ゆえ)に他にしてほしいことを申してみろ。護衛、買い物、共ににゅ、入浴でも、この時ばかりはどのような事でも従おう」


 護衛に買い物に、入浴? 一瞬何を言っているのかと考えたが、それくらい何でも従ってくれるということだろう。


 しかし言葉通りに受け止めて買い物や入浴を命令したら、大変なことになりそうだ。


 当然そんなことはしない。精々可能なのは、護衛くらいだろう。


「分かった。じゃあ、俺のことを守ってくれ」

「……」

「どうした?」

「――ッは!? ……ふ、ふむ。よかろう! 我が守ってやろう! どのような敵が来ようと、問題ない!」

「そ、そうか」


 また一瞬フリーズしていたが、いったいどうしたのだろうか? 


 とても気になるが、藪蛇(やぶへび)になるかもしれないし触れないでおこう。


 そうしてゲヘナデモクレスに無事、やってもらいたいことの了承を得た。


 最初に遭遇した時と若干雰囲気が変わった気がするが、俺の知らないところで何かあったのかもしれない。


 そういえば、一度ポイントが送られてきたんだよな。


 つまり、転移者と遭遇して倒したことになる。


 その事について訊いてみたいが、何が切っ掛けで機嫌が悪くなるか分からないし、止めておこう。


「そういう訳でエリシャ、転移を頼む」

「は、はい……分かりました」


 腰を抜かしていたエリシャも何とか立ち上がって、そう返事をしてくれる。


 さて、精霊召喚術を使う女王ティニアとの戦いは、どのようになるのだろうか。


 ゲヘナデモクレスがいるとはいえ、緊張してしまう。


 だがここまで来たなら、やるしかない。


 そして俺たちは、エリシャの能力によってその場から転移した。


 ◆

 

 転移すると目の前には、巨大なベッドで絡み合う男女が視界に入る。


 男のエルフ三人に対して、女のエルフが一人。


 この女が、女王ティニアだろう。


 加えて夢中になっているのか、俺たちに気が付いていない。


 これは、絶好のチャンスだ。


 するとゲヘナデモクレスが俺の前に立ち、視界を(さえぎ)る。


 そして事前に話していた通り、攻撃を行った。


()れ者どもよ。滅びるがよい。ダークデストラクション!」


 ゲヘナデモクレスがそう言うと、前方に紫黒(しこく)の炎が吹き荒れる。


「な――」


 一瞬声が聞こえた気がしたが、瞬く間に飲み込んでしまった。


 これは以前、グインと樹海を消し飛ばしたあの一撃だ。


 その時よりも、明らかに威力が高い。


 

『転移者を殺害したことにより、20ポイント獲得しました』

『神授スキル【二重取り】が発動しました。追加で20ポイント獲得します』



 すると女王ティニアが死亡したのか、ポイントを獲得する。


 隙だらけの状態でこの一撃を受けたら、流石にどうしようもなかったのだろう。


 呆気ない幕切れに、俺は呆然とする。


 激戦になる事も考えていたので、尚更(なおさら)だ。


 しかしその考えも、ゲヘナデモクレスの攻撃が止んだときに一変した。

 

「ふはは! 我にかかれば、あのような小物など相手にはならぬわっ!」


 そんな笑い声を上げるゲヘナデモクレスの前方には、巨大な穴が出来ている。


「嘘だろ……どうするんだよ、これ……」


 言葉に詰まった理由は、部屋に空いた穴についてではない。


 なんとその奥にあったユグドラシルにも、大穴が空いていたのだ。


 青い空がよく見える、綺麗な円形の大穴である。

 

 俺はあまりの出来事に、冷や汗が止まらない。


 これは取り返しのつかない事をしてしまったという、ひどい焦りからだ。


 全力で攻撃することを願ったが、まさかこんなことになるとは思わなかった。


 それに女王ティニアがいた場所の方向にユグドラシルがあるのは、運が無さすぎる。


 確認などできる状況では無かったし、そもそも方向など頭になかった。


 しかし現状()いたところで、どうしようもない。


 するとこの事を何らかの方法で把握したのか、エリシャから念話が届く。


『何という事をしてくれたんですか!! 私がどれだけユグドラシルを愛しているか話しましたよね! 許しません。絶対に許しませんよ!!』


 当然その内容は、怒りに満ちていた。


 それに対して、俺は弁明の余地もない。


 だが事が大きすぎて、償いようがなかった。


 けれどもそんな悔いている最中、突然エリシャに異変が起きる。


『このまま生きて帰れるとは思わ――なっ!? す、吸われっ……ぢ、ぢぬっ。たずけ――』


 その言葉を最後に、念話が途絶えた。


 同時に、残してきた元悪いフェアリーたちがカードとして戻ってくる。


 それは洞の前で、警備の振りをさせていた個体たちも同様だ。


 いったい、何が起きた!?


 そう思った時、ユグドラシルに変化が起きる。


 一瞬地面が揺れ始めたかと思えば、ユグドラシルの根が大きく盛り上がった。


 そしてまるで生きているかのように、動き出す。


 一瞬こちらに来るかと思ったが、逆方向へと向かっていく。


 どういうことだ? 確かあの方向には、国境門があるらしいが……。


(なんじ)よ。か、体に触れるぞ」

「は?」


 すると突然ゲヘナデモクレスがそう言って、俺を抱きかかえる。


 いわゆる、お姫様抱っこというやつだ。


 そして勢いよく、空いた穴から外へと飛び出す。


 突然の出来事に一瞬固まる俺だったが、背後の城を見て理解した。


 なんと、城が崩壊し始めていたのである。


 加えて、その崩壊のしかたもおかしい。


 上部から順番に、壁などが弾け飛ぶように崩壊しているのである。


 また明らかに、規則正しい四角形の壁ばかりだ。


 まるで、そのままの形で固定化(・・・)されていた感じである。


 なるほど。おそらくこの城は、エルオという奴の神授スキルで作られていたのだろう。


 それが、ゲヘナデモクレスの一撃で耐えきれなくなったのかもしれない。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


 今はそれよりも、ユグドラシルだ。


 地面へと無事に降り立つと、ゲヘナデモクレスが俺を下ろしてくれた。


「にゃぁあ!!」


 よく見ると、その肩にはレフがしがみついている。咄嗟(とっさ)に飛びついたのだろう。


 さてそれよりも、これからいったいどうしたものか……。


 俺は国境門へと進んでいくユグドラシルを見ながら、頭を悩ませるのだった。



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