138 連続して得たポイントの使い道
転移者の殺害によって、ポイントが増えた。
確かにボンバーを倒したが、その分は既に貰っている。
元々持っていた20ポイントに足して、60ポイントのはずだ。
しかし確認してみれば、100ポイントになっている。
つまり今聞こえてきたのは、別の転移者を殺害したことによるポイントだ。
当然、俺にその覚えはない。
だが一つだけ、それを為すことができる存在がいた。
やはり犯人は、ゲヘナデモクレスだと思われる。
小さな国境門を潜った先で、おそらく他の転移者を倒したのだろう。
それが偶然今、為されたのだと思われる。
俺から離れていったとはいえ、一応俺のモンスターであることには変わりない。
なのでゲヘナデモクレスが転移者を倒せば、自動的にポイントが俺に入るわけだ。
今のところ自分を含めてどの転移者であろうと、ゲヘナデモクレスに勝てるとは思えない。
なのでこれは、いつ起きてもおかしくはなかった。
ポイントが手に入ったのはありがたいが、なぜか素直に喜べない。
だがそれでも、変なプライドは捨てて使うべきだろう。
現状ボンバーを倒したとはいえ、余裕があるわけではない。
自称ハイエルフが残り何人いるかも、不明なのだ。
今回のように、突然戦闘になる可能性がある。
であるならば、早速このポイントを使って、スキルをランクアップするべきだろう。
現状ポイントでランクアップできるスキルは、以下の通りだ。
【スキル】
・シャドーアーマー→ダークアーマー 50
・軍団行動→総軍行動 50
・軍団指揮→総軍指揮 50
・自然魔力回復速度上昇(中)→自然魔力回復速度上昇(大)30
残念だが召喚転移や全感共有などのスキルは、ランクアップ先が無いらしい。
なのでこの四つの中から、選ぶことになる。
他にも新たなスキルを手に入れて、それをランクアップさせるという方法も無くはない。
だがそれはスキル習得容量の問題から、安易には選べる方法ではなかった。
最大容量が分からない以上、無駄に増やすのではなく、既存のスキルを強化した方がいいと考えている。
おそらく中級スキル複数よりも、超級スキル一つの方が強い気がした。
それにゲヘナデモクレスのほとんど見えなかったスキルも、たぶんだが超級スキルだろう。
超級スキルに対抗するには、やはりこちらも超級スキルが必要になる気がする。
また今回は、俺個人の強さを上げたい。
そう考えると、まず選ぶのはこれになるだろう。
『ポイントを使用したことにより、【シャドーアーマー】は【ダークアーマー】にランクアップしました』
名称:ダークアーマー
効果
・闇属性の鎧を身につけることができる。
・発動中、闇属性耐性(大)
・発動中、闇属性魔法の効果上昇(大)
・発動中、闇を見通すことが可能になる。
俺はシャドーアーマーから、ダークアーマーへとランクアップさせた。
シャドーアーマーの時よりも、強力になっているはずだろう。
後で時間ができた時に、一度試してみることにする。
またダークアーマーの次は、カオスアーマーにランクアップできるみたいだ。
しかしそれには、100ポイント必要らしい。
残りは50ポイントなので、足りそうになかった。
加えて次に転移者を倒しても、10ポイント足りない計算になる。
であるならば、残りの50ポイントもここで使ってしまおう。
心理的には貯めたいが、今は生存率を少しでも上げた方がいいと判断した。
なので少し悩んだものの、俺は次にこのスキルをランクアップさせる。
『ポイントを使用したことにより、【自然魔力回復速度上昇(中)】は【自然魔力回復速度上昇(大)】にランクアップしました』
名称:自然魔力回復速度上昇(大)
効果
魔力の自然回復速度を大幅に上昇させる。
やはり何をするにしても、魔力は必要だ。
長期戦になった場合や、短期間で多くの魔力を消費することになった場合、これは活躍するだろう。
俺自身の魔力総量が多いので、自然魔力回復量は馬鹿にはならない。
それに大量にモンスターを召喚した場合に、継続的に払う魔力と自然回復する速度の収支がマイナスにならないというのは、とても重要だ。
また先ほどランクアップしたダークアーマーも、発動中は魔力を消費し続けるだろう。
残りの二つのスキルも気になったが、土台となる魔力の回復手段が多いに越したことはない。
そうして残ったポイントは、20ポイントになる。
加えて自然魔力回復速度上昇(大)は、次に自然魔力回復速度上昇(特大)にランクアップできるみたいだが、それには50ポイント必要みたいだ。
他にランクアップできるスキルも無いので、今回のランクアップは以上になる。
これで、少しは強くなっただろう。
だがそれでも、まだ安心はできない。
状況を見て、自身を強化する方法を模索していこう。
◆
それから時間が経ち、ギルドマスターが戻ってきた。
また待機していた冒険者たちには、緊急依頼が出される。
ダークエルフの戦士たちが来るまでの間、村、今は大村となったここラクールで警備することになった。
加えて村外周辺の哨戒や、村内の巡回を別れてすることになる。
今回は上位冒険者が少なくなってしまったため、下位冒険者も駆り出されるようだ。
もちろんラクールには冒険者以外にも治安維持の衛兵もいるが、そこまで数が多くはない。
これは種族柄や治安の良さ、元々国が一つしかなかったなどの要因が関係しているが、今は割愛する。
ちなみに俺はファングハイエナを使役しているのを知られているので、夜間での哨戒に回されることになった。
ファングハイエナの種族特性に、夜目があることが理由だろう。
そういう訳で荒野の闇の面々とは、別任務になる。
三人は、村内の巡回を割り振られることになったらしい。
それとコボルトの殲滅依頼についても、無事に処理された。
討伐計測の腕輪をボンバーの攻撃の余波で壊れてしまったことを話すと、事情が事情なので今回は弁償はしなくていいとのこと。
けれども計測された数が消えてしまったので、討伐分の報酬が出ないのは諦めて欲しいと言われた。
それについて俺は仕方がないと思ったのだが、荒野の闇の面々が俺のために交渉してくれる。
だが討伐計測の腕輪の値段を言われてしまえば、引き下がるしかなかった。
討伐計測の腕輪は、思ったよりも高額だったのである。
俺が倒したコボルト分の報酬を差し引いても、全く足りないほどだった。
なので追加報酬は諦めて、依頼の基本報酬だけを貰う。
もちろん、二重取りが発動して二倍になった。
それから荒野の闇の面々から追加報酬の分配を持ち掛けられたが、丁重に断る。
村で買った装飾品に金銭を消費したとはいえ、生活をするのには困っていない。
それに討伐計測の腕輪を壊したのは、俺自身だ。
これで受け取るのは、違うだろう。
「ジン君、色々あったけど、組めて良かったわ」
「これから大変ですけど、お互いに頑張りましょう」
「哨戒依頼頑張れよ。俺たちも、村の巡回頑張るぜ」
そして最後に、そんな言葉をかけられる。
「三人とも世話になった。何かあったら声をかけてくれ。できるだけ力になる」
俺もそう返事をして、荒野の闇の面々と別れるのだった。
さて次は、哨戒の緊急依頼か。
といっても既に、アサシンクロウの群れが十分に偵察しているんだがな。
俺は暗くなってから哨戒に出る事になっているので、少し時間ができる。
この限られた時間の中で何が出来るのか、考えることにしよう。
空いた腕に再びスピードバングルを付けながら、俺は村の中を歩くのだった。




