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012 盗賊たちの後始末

 そうして洞窟内を移動するが、やはりゴブリンたちを見て恐怖を隠せないようだ。

 

 あの生意気なハンスも、情けなく怯えていた。


 ちなみに気絶しているサマンサはハプンに背負われており、他の二名もついて来ている。


 なお他の二名は、ただの旅人のようである。

 

 一応冒険者であるが、数には勝てなかったみたいだ。


 そして盗賊たちの保管庫に辿り着くと、様々な物が置かれている。


 だいたいはハプンの物らしく、元々は荷馬車に積んでいたらしい。


 しかし襲われた際に荷馬車は置き捨てられ、馬は森のどこかに隠されているみたいだ。


 まあ森の中を荷馬車で進めば痕跡(こんせき)が残ってしまうので、捨てられたのは仕方がないだろう。


 だが馬は生きている可能性があるので生き残りの盗賊に聞いてみたところ、荷馬車も後から回収して他の場所に隠していることが判明した。


 加えて、馬も生きているようだ。


 心の折れた盗賊たちは、隠し場所も丁寧に教えてくれた。


 目を覚ましていた頭目だけは、うるさく文句を言っていたので再度黙らしておく。


 ただ生かしていることにハンスが声を荒げたので、そんなに殺したかったら自分でやれと剣を渡したら黙ってしまった。


 やはり根性は無いらしい。


 いや、殺せないのが普通なのか。


 そして荷馬車と馬を取りに行きたいとハプンが言うので、ホブゴブリンとゴブリン数匹、グレイウルフもつけて送り出した。


 これだけいれば、何かあっても大抵は大丈夫だろう。


 そして持ち物の仕分けが終わったころ、先にサマンサが目を覚ます。


 最初はゴブリンに驚いて声を上げたが、何とか説明して落ち着かせた。


 また売り物の衣服が残っていたので、それに着替えてマントを返してもらう。


「ありがとうございました。おかげで家族が売られずに済みました」

「偶然助けたに過ぎない。気にするな」


 洞窟内での出来事には触れない。


 ただそう返事をしてマントを受け取ると、残った者たちで軽食をとる。


 捕らわれている間はろくに食べられていなかったのか、食欲旺盛だ。


 そうしている内に、ハプンが戻ってきた。


「ただいま戻りました。荷馬車や馬は無事でした」


 どうやら荷馬車と馬は別々の場所にあったが、両方回収できたという。


 更に馬の近くには何も知らない盗賊がおり、ホブゴブリンが一瞬で倒したとのこと。


 またここまで荷馬車を運ぶのに木がいくつか邪魔だったが、これもホブゴブリンが地面から抜き取り道を(ひら)いたという。

 

 ホブゴブリンの身体能力は、俺が思っていたよりも高かったようだ。流石はダンジョンボスである。


 それからハプンも軽食を摂り、その後外にある荷馬車に荷物を積んでいく。


 もちろんゴブリンたちにも手伝わせたことで、短時間で終わった。


 流石にここでストレージを使う気はなかったので、こういう時に数が多いと便利だ。


 そして余った盗賊の物は俺の物になり、ゴブリンたちには武器を配っていく。


 いらない物は、ハプンが買い取ってくれた。


 おそらく、本来よりも割高で買い取ってくれたと思われる。


 ちなみに硬貨は全て一纏めにされていたので、自己申告で本人に返した。


 本来より多く申告している者がいるかもしれないが、その可能性は低いだろう。


 むしろ、少なく申告していたかもしれない。


 しかしハンスだけは多く申告しようとして、サマンサに止められている。


 ハンスは、金にも執着があるらしい。


 結果として硬貨はだいぶ余り、俺の所持金は数倍に膨れ上がった。


 盗賊のくせに、金を持ちすぎだろ。


 もしかしなくても、既に売られた人が何人かいたのかもしれない。


 そして仲間には配らず、頭目がほぼ独り占めしていた可能性がある。


 あと少し惜しかったのは、頭目の持っていた剣くらいか。


 とても質の良い剣だったのだが、あれはハプンがハンスの十五歳の誕生日に送った物らしい。


 流石にそれをよこせとは言えず、本人に返している。


 ハンスは返って来た剣を見て、目を(うる)ませていた。


 他の余った武器はそこまで質は良くないがそれなりの数があり。ゴブリン軍団全員に武器が行き渡る。


 やられてしまったゴブリンもいるので、一時的に二刀流や剣をメインに短剣をサブ武器として、生き残りのゴブリンたちに装備させた。


 ただ防具はゴブリンには合わず、身長二メートルのホブゴブリンにも合わない。


 また俺も盗賊の防具は何となく嫌なので、全てハプンに売り払っている。


 そうして残るのは盗賊たちの処遇だが、連れていくのは面倒だ。


 なので盗賊に恨みを晴らしたい者がいないか訊くと、サマンサが真っ先に手を上げて剣を振るった。


 俺以外の男たちは、サマンサに恐怖して言葉を失う。


 ハンスなど、トラウマを植え付けられたようだった。


 こうしてまた一つ、悪が散ったのである。


 ただ亡骸は丁重に葬るようで、外に集めて燃やした後は地面に埋めた。


 これは慈悲とかではなく、モンスターに処理されずに長い間残ると疫病の元になったり、アンデッド化するからとのこと。


 アンデッド化したらカード化できるのではないかと思ったが、今回は諦める。


 それにいずれアンデッドに遭遇する気がするので、わざわざ自分で用意する気もない。


 そして全て終われば、ようやく一息だ。

 

 いつの間にか、日が落ち始めている。


 野営するのならこの洞窟は良い場所だが、心情的に嫌らしい。


 まあ当然なので、反論はしなかった。


 馬車を動かして何とか街道に出たころには、完全に暗くなっている。


 中級生活魔法の光球をいくつか浮かべると、かなり明るくなった。


「これは中級生活魔法の光球ですね。これほど多く浮かべて、魔力と集中力は大丈夫なのですか?」

「ん? 特に問題はないが」

「なるほど。それは凄いですね」


 どうやら、この数を一度に浮かべるのは難しいらしい。


 だがデミゴッドの魔力量と集中力からすれば、全く負担が無かった。


 どちらかといえばホブゴブリンを召喚するほうが、負担が大きい。


 そう考えると、デミゴッドを選んだのは正解だった。


 普通の人族では、こうはいかなかっただろう。


 それから俺たちは街道をしばらく進み、野営ができそうな開けた場所に出た。


 本来この数では心もとない場所だが、ゴブリン軍団やグレイウルフたちがいるので問題ない。


 召喚したモンスターは、飲まず食わずでも魔力が供給され続けている限り、活動し続ける。


 それに捕らえられていた人たちは、見張りをするだけの体力や気力は無いだろう。


 ハプンの好意で夕食を用意してもらい食べ終わると、各々が寝床を用意して横になった。


 俺もグレイウルフの一匹を枕にして、ホーンラビット三匹を抱き枕にマントをかぶる。


 別にもふもふに囲まれたいという理由ではなく、普通にあったかいからだ。


 残りのモンスターには見張りをさせて、対処できない問題が発生したら起こすように命令しておく。


 そうして横になって落ち着いてくると、ふとあることを考える。


 そういえば今更だが、この世界に来て初めて鑑定されたな。


 今回は抵抗できたが、今後は突破される可能性もある。


 いつ見られてもいいように、偽装の内容も更新しておくか。



 名称:ジン

 種族:人族

 年齢:15

 性別:男

 スキル 

【カード召喚術】【直感】【無属性適性】

【剣適性】【中級生活魔法】



 ひとまず、こんなところでいいだろう。


 スキルの数は多いが、有り得ない数ではない。


 ベックたちとの酒の席で、人は十歳になると神からスキルを授かるらしい。


 数と内容は人によって違うが、ほとんどの人が一つか二つとのこと。


 運が良いと、三つから四つ。


 中には、五つ授かる者もいるらしい。


 加えて伝説の英雄は、十のスキルを授かったという。


 そしてスキルは、ダンジョンなどで手に入ることがある。


 ただし神から授からなければ、得られないスキルもあるとのこと。


 その代表が、○○適性系である。


 他にも複雑な効果を持つスキルも、同様らしい。


 それとどういう訳か、ベックたちはエクストラのことを知らなかった。


 エクストラはあの白い空間で得たものか、ホブゴブリンのダンジョンボスしか今のところ見たことが無い。


 これは何となくだが、エクストラの方が普通のスキルより効果が高い気がする。


 ハンスが同名の鑑定スキルを持っているが、エクストラである俺の鑑定の方が性能は上だろう。


 なら、神授スキルはエクストラの更に上ということになる。


 種族特性は、今のところ判断が付かない。


 まあ、これについては今後少しずつ分かればいいか。


 話を戻すが、○○適性が神から授かる代表例だとすれば、属性魔法系などはダンジョンで見つかる代表例だ。


 しかし俺の持っている中級生活魔法は、その中でも異質である。


 どうやら生活魔法自体、何かしらの属性適性があれば誰でも習得できるらしい。


 たとえ火属性適性であっても、生活魔法の飲水は使えるとのことだ。


 それとダンジョンでスキルが手に入るからといって、何でも覚えるのはよくないらしい。


 人には容量があるらしく、それを越えるとスキルの習得ができなくなる感じだ。


 ゆえに手に入った端からスキルを習得すると、器用貧乏の役立たずが完成するとのこと。


 神に与えられたスキルを基準にして、習得する方向性を決めることが大事らしい。


 これは教えてくれたベックたちが詳しいのではなく、冒険者の間で語り継がれる有名な話である。


 先輩冒険者が新人冒険者に聞かせるのが、暗黙の了解だと言っていた。


 俺がどれだけのスキルを覚えられるか分からない以上、その部分は注意したい。


 ただでさえ全属性適性に全装備適性があるので、気を付けなければあっという間に器用貧乏になるだろう。


 今後ダンジョンでスキルオーブを手に入れたら、必要かどうかよく考えてから使うことを決めた。


 そうして俺は考えを終えると、ようやく眠りにつく。


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