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115 ダガルマウンテン ⑤


 それは正しく文字通りの大噴火であり、背中にある複数のコブからとてつもない量の溶岩が噴き出す。


 近くにいたリザードシュトラウスたちは、一網打尽にされてしまった。


 更に溶岩は一つに(まと)まると龍のように動き、上空のアサシンクロウたちを一掃していく。


 ホーミングのスキルと合わさることで、ここまで凶悪になるのか。


 大噴火とホーミングの組み合わせは、やっかい極まりない。


 加えてチャージで力を溜めていたと思われるので、その威力も絶大だ。


 しかしそれは、分かり切っていたことである。


 そうでなければ、何としてでも発動を阻止していただろう。


 するとアサシンクロウを一掃した溶岩は、次にこちらへと向かってきた。


 だが俺はそれに(あせ)らず、グインをカードに戻してからレフへと触れる。

 

 集中力を高める時間は、十分にあった。


 俺はリザードシュトラウスの近くにロックハンドを召喚すると、それを目印にして召喚転移を発動させる。


 シャドーアーマーに魔力を溜めながら準備するのは骨だったが、うまくいった。


 俺とレフは敵の隙だらけの胴体に、全力の攻撃を叩きこむ。


「喰らえ!」

「グルオウ!!」

「ブモォオ!?」


 俺とレフの同時攻撃にバーニングライノスの巨体が吹き飛び、転がっていく。


 当然噴き出している溶岩もいたるところへ飛び散るが、問題ない。


 俺とレフは回避しながら、魔法で対処していく。


 生活魔法の飲水を大量に出して、降りかかる溶岩を黒いガラスのような物に変えていった。


 そしてバーニングライノスは今の攻撃で息絶えたのか、コブからの溶岩も止まる。


 だが死してもなおホーミングが付与された空中の溶岩が、こちらに向ってきた。


 召喚転移を発動させる余裕はない。


 ならストレージに収納はどうだ? いや、それは無理だったな。


 実は道中、ロックゴーレムのストーンバレットに対して行っていた。


 盾のように開いたストレージの入り口を無視して、そのまま飛んできたのである。


 ストレージは、無敵の盾には成りえなかった。 


 またここでそれが起きたら、致命的に不味い。

 

 なのでストレージで防ぐのは却下だ。


 貯蔵などは触れなきゃ発動できないので、論外である。

 

 他に飲水や氷塊で迎え撃つとしても、おそらく飲み込まれるだろう。


 チャージされた大技に、即席の下級攻撃が効くとは思えない。


 飛び散った少量の溶岩とは違うのだ。


 であれば結局、これしかない。


 俺は向ってくる溶岩の軌道に、所持しているロックゴーレムとロックベアーを全て召喚する。


 さらに続けて、ロックイヤーウィグ・ロックリザード・ロックハンド・ロックフットを召喚して壁にした。


 この山にいるのであれば、火に対してもある程度強いだろう。


 すると思った通り、僅かだが向ってくる溶岩をせき止める。


 だがそれも、長くはもたない。


 俺はその隙にレフに飛び乗ると、ダークネスチェインを使わせて火口から脱出する。


 もちろん、倒したバーニングライノスのカード化も忘れない。


 そしてレフに山を下らせる。


 ダークネスチェインで俺の身体を固定してもらっているので、俺自身が落ちることはない。


「まだ追ってくるのか」


 見上げれば溶岩が龍のように線を描き、俺を追いかけてきた。


 しかし最初と比べて、だいぶ小さくなっている。


 発動したバーニングライノスが既にいない以上、新たに供給される事がないからだろう。


 であるならば、ホーミングの対象も増えることはない。


 それに一度カードに戻せば、もしかしたら対象から外れているかもしれないな。


 俺はそう考えてグインを召喚すると、ウォーターブレスで迎撃させる。


 思った通り、溶岩がグインを狙うことは無かった。


 溶岩がグインを通り過ぎるたびに、俺はカードに戻して近くに再召喚する。


 そして何度も迎撃させることで、ようやく追いかけてくる溶岩が全てなくなった。


「はぁ、やっと終わったか……」

「にゃぁ」


 俺は安堵(あんど)からため息を吐くと、同様にレフも疲れたように鳴く。


「グオウ」

「ああ。分かっている。グインには助けられた。肉を用意する」

「にゃにゃ!」

「もちろんレフにもな」


 ある程度モンスターの肉はストックしてあるが、果たして足りるだろうか。


「ガァ!」

「お前、生きていたのか」


 すると驚いたことに、ユニーク個体のアサシンクロウが生存していた。


 どうやら他のアサシンクロウたちが命令された時に、自身は隠密で隠れていたようだ。


 聞けば自分は注意を引くように命令を受けていなかったので、待機していたのだという。


 確かに召喚したアサシンクロウたちには命令をしたが、既に召喚されていたコイツに対しては明確に命令を出してはいない。


 だがアサシンクロウ全体に、俺は命令を出したつもりだった。


 うーむ。何というか、コイツからはずる賢さが感じられる。


 命令には逆らわず、都合よく解釈した感じがした。


 逆らっている雰囲気はしないので、まあいいだろう。


 もしかしたら今回連れている間に、僅かながらに個性が芽生えたのかもしれない。 

 

 それとバーニングライノスだが、問題なくカード化できている。


 しかし、まさかここまで強敵になるとは思わなかった。


 あの王都にいた男が使役をしていたが、いったいどうやったのだろうか?


 とてもではないが、正攻法で使役するのは無理に思えた。


 一応先祖代々、受け継がれたモンスターという可能性もある。


 モンスターはランクが高いほど寿命も長くなるらしいので、十分にありえた。


 だとしても次は、その先祖がどうやって倒したのかという謎に変わる。


 バーニングライノスは、あの火口から一切動かなかった。


 正に固定砲台で、火口を覗き込めばロックオンされる。


 それで火口に入れば、逃げられずに大噴火の餌食になるという訳だ。


 本当に、どうやって倒した?


 俺のような倒し方は、とてもではないが無理だろう。


 おそらく半端な強さのモンスターを用意しても、無駄に終わる。


 時間稼ぎが精々だ。 


 だとすれば、他に要因があるのか……?


 そんな時ふとダガルマウンテンを見上げて、俺はあることに気が付いた。


「ああ、なるほど。噴火か」


 火口から動かないバーニングライノスに、山そのものの噴火が直撃すればどうなるのだろうか。


 もしかしたら、遠くまで吹き飛ばされるかもしれない。


 それにより、バーニングライノスは大ダメージを負うだろう。


 しかし火地属性耐性(大)と物理耐性(大)に加えて、類い稀な耐久力で何とか生き延びる可能性がある。


 そこへ万全の準備と多くの仲間を引き連れて戦えば、勝てるかもしれない。


 もちろん、バーニングライノスの能力を把握した上でだ。


 何となくだが、これはあながち間違いではないと思う。


 山に登る必要もないし、とても合理的だ。


 まあそれでも、かなりの被害は出ると思われる。


 けれども結果としてあの男の横にいたということは、従えることに成功したということだ。


 だがそれはあの男が従えたのではなく、その先祖が従えたのだろう。

 

 何となく、最近噴火したようには思えなかった。


 それにバーニングライノスが再び自然発生するまでには、かなりの時間を要するだろう。


 もしかしたら従えたのはあの男の、数百年前の先祖かもしれない。


 だとすればあの男は、オブール王国でも古くから王に仕える高位貴族だと思われる。


 バーニングライノスを代々受け継いでいるのであれば、それも納得だ。


 またツクロダの銃を持ったリビングアーマーが幾ら集まったところで、あれには勝てないだろう。


 王都が無事だったのも、十分に理解ができる。


 それが今回の戦いで、よく分かった。


 あの男と敵対しなかったのは、運が良かったと言えるだろう。


 融合していたとはいえ、もしかしたら敗れていた可能性もある。


 (ゆえ)にそんなバーニングライノスを手に入れたことで、俺の戦力も大幅に上昇した。


 苦労したことも相まって、思わず笑みを浮かべてしまう。


 地形の利を無しにしても、コイツはかなり強い。


 今後活躍してくれることは、間違いないだろう。


 それと今回の登頂で、これだけのカードを手に入れた。



【Dランク】

 ロックリザード 34枚

 ロックハンド 42枚+元々所持していた50枚=合計92枚

 ロックフット 44枚+元々所持していた50枚=合計94枚

 

【Cランク】

 ロックイヤーウィグ 18枚

 ロックベアー 14枚


【Bランク】

 ロックゴーレム 10枚

 リザードシュトラウス 16枚+幼体8枚=合計24枚

 

【Aランク】

 バーニングライノス 1枚



 一泊二日と考えれば、かなり集めた方だと思われる。


 これは樹海よりも見晴らしが良いことに加えて、アサシンクロウの偵察が上手く噛み合った結果だろう。


 そしてこれでオーバーレボリューションの生贄が、十分に集まった。


 特にリザードシュトラウスの幼体が、かなりの点数を稼いでいる。


 なので後は軽い数調整のためカード化したら、一時拠点に戻ることにしよう。


 そうして俺はダガルマウンテンで、もうしばらく狩りをするのであった。



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