雪ノ絵こころの二択
私、雪ノ絵こころは、どちらを選ぶか迷っていた。
A:今すぐに起きる。
B:5分後に起きる。
別に寝ていたいわけではない。
同居人の咲子ちゃんがあと5分で家を出る。
今すぐ起きて、挨拶だけでもするべきか、彼女が行ってしまうまで寝たふりで過ごすのかを迷っているのだ。
いつもなら迷わずに起きて「おはよう」というのだが、昨晩いろいろとあってなかなかに気まずいのだ。
と言っても険悪なわけではなく、むしろ仲睦まじい、いや睦まじ過ぎたのが問題といえばいいのか。
普段から冗談半分でスキンシップをとってはいたのだが、昨日は二人とも酔っていて一線を越えてしまった。
お互いに同性でこういうコトをしたのは初めてで、だからこそ気まずい。
などということを考えているうちに、咲子ちゃんが家を出るまであと2分になってしまっていた。
ただ、今になって気づいたが、咲子ちゃんが私と顔を合わせるつもりがないのなら、いつもより早めに家を出ることもできたはずだ。そうしないということは、もしかして私が起きてくるのを待っているのではないか。
私はそう思って、すぐにベッドから抜け出し、咲子ちゃんのところへ急いだ。
てっきり支度を整えていると思っていたのだが、咲子ちゃんはパジャマのままだった。
「おはよう」
「あ、こころちゃんおはよう、今日は早いね」
「仕事は?」
「?今日は日曜日だよ」
そうだ、今日は日曜日だ。うっかりしていた。
「あの、昨日のことなんだけど」
「昨日なんかあったっけ」
え?覚えてないの?忘れてしまった?いやいや、あんなの忘れるはずがない。なかったことにしようとしてる?咲子ちゃんの表情からは読めない。もしかして夢を見ていた?どうだろう。今となってはだいぶ怪しい。
私は昨夜のことを話すべきか否か、さっきとは違う二択で迷うのだった。