ミステリーサークルの意味
ミステリーサークル。
畑や草原などで、植物が円形に倒されて文様が描かれる現象。
自然に起こるとは考えにくく、超自然現象や宇宙人の仕業かと思われた。
しかし、近年になって製作者が名乗り出たことにより、
人為的ないたずらだと判明したはず、だったのだが・・・。
頭上を見上げると、そこには光り輝く大きな円盤。
ミステリーサークルの上に立つ僕たちは、空に浮かぶ円盤の中へ。
僕たちの前に現れたのは、見紛うことのない、宇宙人そのものだった。
数日前。
お婆ちゃんの家の畑でミステリーサークルが見つかった。
超常現象か、それとも近所の子供のいたずらか。
いずれにせよ気味が悪いので調べて欲しい。
お婆ちゃんから相談された僕は、
幼なじみの友達三人に話をすることにした。
昼休みの中学校の教室。
僕の席に集まったのは、幼なじみのいつもの面々。
三人とは幼稚園時代からの友達で、今でも一緒にいることが多い。
「それで、ミステリーサークルを調べるって?」
まず最初に口を開いたのは、日焼けした男子。
仇名は、ガキ大将。
勉強より運動が得意で、何事にも先陣を切る。
頭を使うのは苦手だが、荷物持ちなどでは頼りになる。
「お婆ちゃんが困ってるんでしょ?助けてあげようよ。」
そう口添えしたのは、ロングヘアーの女子。
仇名は、マドンナ。
誰に対しても人当たりが良く、勉強も運動も卒なくこなす。
学校中の男子にモテモテで、こんな仇名になった。
でも、僕たちのする事に首を突っ込みたがるのは何故だろう。
「そうだね。ご両親が忙しいというのなら、ボクたちが動こう。」
そう続いたのは、身なりが整っていて賢そうな男子。
仇名は、秀才君。
勉強は優秀、運動も悪くない。物知りで博識。
でも、どこか抜けているところがある。
「ありがとう。
じゃあ早速、今日の放課後にお婆ちゃんの家に行こう。」
そう結んだのが、この僕。
冴えない目立たない、どこにでもいる外見の持ち主。
勉強も運動も中庸で目立つところがない。
髪の毛の旋毛が普通と逆の反時計回りなのが唯一のユニークポイント。
そうして、僕、ガキ大将、マドンナ、秀才君の四人は、
学校の授業が終わってから、お婆ちゃんの家へ行くことにした。
僕のお婆ちゃんの家は、学校から自転車で一時間ほどのところにある。
お婆ちゃんは、数年前にお爺ちゃんを亡くしてから一人暮らし。
僕の両親が一緒に暮らそうと話したこともあったけど、
それほど遠い場所でもないし、まだまだ健康で不自由もないからと、
お婆ちゃんは今でもお爺ちゃん亡き家に一人で住んでいる。
「いらっしゃい。四人とも、よく来てくれたわねぇ。」
上品な白髪頭のお婆ちゃんが、やさしい笑顔で出迎えてくれた。
僕たちは四人とも、もちろん、お婆ちゃんと顔馴染み。
いつもの通りに、お茶やお菓子をごちそうになった。
それから、お婆ちゃんの長い話を適当に切り上げて、
今日の本題に入ってもらった。
「それがね、裏の畑に、ミステリーサークルだったかしら?
それが出たのよぉ。あたし、気味が悪くって。
誰かのいたずらかとも思ったんだけど、近所にそんな人はいないし。
悪いけれど、あなたたちに見てきてもらえないかしら。」
そうして、僕たち四人は早速、
ミステリーサークルが現れたという、裏の畑へ向かった。
お婆ちゃんの家から歩いて十五分ほど。
お婆ちゃんが言うところの、裏の畑にたどり着いた。
畑の広さは学校の校庭の半分くらい。
元はお爺ちゃんが使っていたもので、
今は、作物か何かわからない、腰くらいの高さの草が生え揃っている。
そんな畑のど真ん中に、草がなぎ倒されて渦が描かれていた。
「うーん。たしかにこれは、ミステリーサークルみたいだねぇ。
それも一つだけじゃない。渦がいくつもある。」
そう言ったのは、秀才君。
秀才君はガキ大将に肩車されて、高い位置から畑を見渡していた。
「どう?人が触った形跡とかある?」
マドンナが見上げて尋ねる。
「どうだろう。ここからだと、よくわからないな。
畑の周囲には人が立ち入った跡はないようだけど。」
「だったら、俺たちが中に入って調べてみようぜ。」
ガキ大将が急かし、僕が音頭を取ることにした。
「わかった。
どっちにしても、遠くから見てるだけじゃ、ここに来た意味がない。
みんなで手分けして、畑の内も外も調べてみよう。」
そうして、僕たち四人は、
ミステリーサークルを調べるべく、
草を掻き分けて畑の中へと入っていった。
それからおよそ一時間ほど後。
僕、ガキ大将、マドンナ、秀才君の四人は、調査を一段落させて、
ミステリーサークルの真ん中に集まっていた。
なぎ倒された草の上に腰掛けて車座になっている。
ガキ大将が、土だらけの顔で口を開いた。
「どうだ?何か見つかったか?」
「ううん、何も。
人が入ったような足跡も、道具を使った痕跡もないみたい。
草が根本から綺麗になぎ倒されて、時計回りに渦になってる。」
「こっちもだよ。
やっぱりこれは、本物のミステリーサークルじゃないかな。」
すると、秀才君が澄まし顔で言った。
「いや、そう結論を出すのは浅はかだよ。
そもそも、ミステリーサークルが超常現象だと言われていたのは、
もう昔の話だよ。
ミステリーサークルを作っていた人たちが名乗り出たんだ。
だから、ミステリーサークルは、
人為的ないたずらだということが既に判明してる。」
「そのことは聞いたことがあるよ。でも、それは外国の話だったよね。
その人たちが、わざわざ日本にまで、
ミステリーサークルを作りに来たとは思えない。」
「この世のミステリーサークルが全部、同じ奴の仕業とは限らないだろう。
仮に人がやったいたずらだとしてもだ。」
僕の返事にガキ大将が続いた。
僕たち四人でミステリーサークルを調べても、
しかし手がかりは何も見つからなかった。
手がかりが見つかった場合は、結論を出すのは簡単。
でも、手がかりが見つからなかった場合は、結論を出すのは難しい。
手がかりを見落としているのかもしれないし、本当に超常現象かもしれない。
どうしたものかと考えている間に、いつしか日が傾いて周囲は暗くなっていた。
「もうこんな時間だ。今日はここまでにしておこうか。」
僕が言うと、ガキ大将と秀才君が、やれやれと草を払って腰を上げた。
すると、体育座りをしたままのマドンナが、キッと夕暮れ空を見上げて指さした。
「・・・ねえ、待って。あれは何?」
つられて、僕とガキ大将と秀才君が空を見上げる。
すると、そこには、
光り輝く大きな円盤が浮かんでいたのだった。
僕たち四人がミステリーサークルの上空を見上げると、
夕暮れの空に、光り輝く大きな円盤が浮かんでいた。
円盤は大きくて眩しくて、見上げていると大きさがわからなくなるほど。
路線バスくらいの大きさにも見えれば、大きなビルほどの大きさにも見えてくる。
そんなものが、ぽっかりと空に浮かんでいた。
現実離れした光景に、一瞬呆気にとられて、
それから一服を置いて、僕たち四人は大騒ぎになった。
「何、あれ!?UFO!?」
マドンナが口を手で覆って叫んだ。
「わからん!
あれもいたずらってわけじゃないよな!?」
ガキ大将が唾を飛ばして叫ぶ。
「UFOというのは、Unidentified Flying Object、
つまりは未確認飛行物体ということだね。
未確認なんだから、ボクたちにはわかりようもない。」
秀才君が落ち着いて慌てている。
僕はと言うと、驚いて言葉をしゃべることができない。
ただあんぐりと口を開けて空の円盤を見つめていた。
すると、光り輝く大きな円盤から、淡い光の筒がスーッと降りてきて、
僕たち四人を丸く飲み込んだ。
光の筒の大きさは、偶然なのか、ミステリーサークルとほぼ同じだった。
それから、体がふわっと軽くなったかと思うと、
足が地面から離れて体が宙を舞い始めた。
「なんだ!?どうなってるんだ?」
「私、浮いてる!」
「ボクたちもだよ!このままだと・・・」
「UFOに飲み込まれる!」
そうして僕たち四人は、光の筒にやさしく吸い上げられて、
空に浮かぶ大きな円盤の底へと飲み込まれていった。
瞬きをする間に、僕たち四人は大きな円盤の中にいた。
ついさっきまで、光の筒に吸われて空を浮いていたのに、
それがいつの間にか、光り輝く大きな円盤の底をすり抜けて、
今はその内部と思われる空間にいた。
周囲を見渡してみる。
大きな円盤の内部は、壁も床も真っ白。
継ぎ目がなく、どこもかしこも淡く光り輝いていて、
立体感を掴みにくい。
壁にいくつか小窓のような穴があって、
それを基準としてかろうじて立体構造を把握することができた。
「ここ、あのUFOの中、だよな?」
「・・・うん、多分ね。」
ガキ大将から話しかけられても、僕は頷くしかできない。
こんなことは経験がないし、確かめようがない。
僕も、ガキ大将も、マドンナも、秀才君も、
黙って立っていることしかできない。
すると、白い壁にニュッと穴が広がって、
そこから何者かが姿を現した。
「きゃっ!何あれ!?」
マドンナが悲鳴を上げたのも無理もない。
現れたのは、全身が銀色の小人だった。
体の大きさは小学生くらい、ただし頭が異様に大きい。
服は着ていないのか、全身がヌメヌメと銀色をしていて、
液体金属のように光っている。
頭の部分、顔と思われるところには、
真っ黒で吸い込まれそうな穴が二つ、横に並んで開いていた。
その姿は宇宙人としか言いようがない。
四肢はあるが、人間とは構造が根本的に違うらしい。
首が360度回って、頭が時計回りにグルグルと回っていた。
「うげぇ、何だあれ。
首を回しても大丈夫なのか。」
ガキ大将がそう言うと、銀色の宇宙人はさらに、
両手を手首から同じようにグルグルと回し始めた。
やがて、銀色の宇宙人は、
言葉が通じていないと悟ったようで、
銀色の長い指で、壁を指し示した。
すると、白い壁の一角に、何やら音のない動画が再生され始めた。
壁に写ったのは、真っ黒な空間。
広く真っ黒な空間に、小さな光の点がいくつもある。
どうやらこれは、星が瞬く宇宙空間のようだ。
その中の一つに画面が拡大されていく。
拡大された星の表面は、ビュウビュウと吹雪が吹き荒れている。
その吹雪の中に、銀色の宇宙人たちが耐え忍ぶように生きていた。
白い雪の他には、生き物も植物も見当たらない。
凍てつく大地に生きるのは、銀色の宇宙人たちだけ。
真っ黒な穴の瞳は、なんだか悲しそうに見えた。
やがて、画面の中の銀色の宇宙人たちは、
どうやったのか、氷を使って、大きくて丸い円盤を作った。
銀色の宇宙人たちは、大きな円盤をいくつも作って、
何人かに分かれて円盤の中に入っていった。
銀色の宇宙人たちを乗せた円盤は、浮かぶように空を飛び、
吹雪が吹き荒れる星から、真っ黒な宇宙へと出ていく。
円盤はぐるぐると飛び回って、お互いに名残惜しそうにして、
それから散り散りになって広大な宇宙へと飛び去っていった。
画面は、そんな円盤の一つに注目した。
光り輝く大きな円盤はスピードを上げ、宇宙を飛び回る。
映像が再生されるスピードが上がったようだ。
長い長い、途方もなく長い時間が過ぎ去って、
やがて映像の再生スピードが元に戻った。
行く先に、大きな火の玉が見えてきた。
大きな火の玉の周りには、いくつもの星がグルグルと周り回っている。
その一つ、水が溢れる星に、円盤は降り立ったのだった。
「・・・なるほど。
この宇宙人は、円盤に乗って外宇宙からこの太陽系に来たんだ。」
動画を見終わって、僕たち四人はおおよその事情を察することができた。
信じられないことだが、この円盤は宇宙船で、銀色の小人は宇宙人。
決して、人のいたずらなどではないようだ。
「きっと、自分たち以外の生き物がいなくて、寂しかったんだね。
だから、宇宙船を作って、遠く離れたこの地球まで来たんだよ。」
マドンナがしんみりと言う。
「だったら、僕たちが友達になってあげようか。」
「でも、言葉が通じないぞ。」
銀色の宇宙人には敵意がなく、ただ友達になりたいだけ。
そう確信した僕たちは、何とか意思疎通をはかろうとした。
口を開いて挨拶をしてみたり、
頭を振って頷いてみたり、左右に振ってみたりする。
しかし、どれも通じていないようで無反応。
相変わらず、目の前の銀色の宇宙人は、
頭や手をグルグルと時計回りに回していた。
「あれ、なんかの意味があるんじゃないか?」
「手や首を回すのが宇宙人の言葉ってこと?
ありえるかも。」
「よし、ボクたちもやってみようじゃないか。」
銀色の宇宙人が首や手を回しているのは、
きっと宇宙人にとっての言葉なのだろう。
そう考えた僕たち四人は、見様見真似で同じようにしようとした。
流石に首や手首を360度回すのは無理なので、
ボールを投げる時のように、腕をブンブンと振り回した。
すると。
意味が通じたのか、銀色の宇宙人は小躍りをしたように見えた。
「あれ、喜んでる?」
「多分・・・。」
何らかの意図が通じたようで、銀色の宇宙人は喜んでいるように見える。
これで友達になれるだろうか。
そう思っていると、何やら急に足元が揺れて、体が重くなったような気がした。
「ねえ、窓の外を見て!」
マドンナが窓の外を指さして悲鳴を上げる。
僕たちも窓の外を見ると、そこには、遠く離れていく地球の姿があった。
窓の外には、遠く離れていく地球の姿。
ということは、今この円盤は、地球から離れていっていることになる。
もうすぐ夕飯だから、そろそろ家に帰らなければ、
内心そう思っていたのだけど、どうもそれどころの話ではないようだ。
窓の外が黒かったのは、日が暮れたからではなく、ここが宇宙空間だから。
動画を見ている間に、いつの間にか円盤は移動していたようだ。
僕たちは大慌てで銀色の宇宙人に訴えた。
「おい、俺たちをどこに連れて行くんだ!」
「私たち、宇宙に連れて行かれちゃうの?そんなの嫌!」
「ボクたちは、友達になりたいとは言ったけど、
地球から出ていくとは言ってないんだ。」
「とにかく、地球に戻してくれ!」
しかし、何を言っても銀色の宇宙人には通じていない様子。
吸い込まれそうな黒い穴の目が、冷静にこちらを見ているだけだった。
こうしている間にも、窓の外の地球は小さくなっていく。
とにかく僕たちは必死で、銀色の宇宙人に命乞いをした。
ガキ大将が大声で謝っても、マドンナが涙を流しても、
秀才君が拝み倒しても、僕が腕にすがっても、
銀色の宇宙人は無反応。
それどころか、僕たちが喜んでいるとでも思ったのか、
一緒になって同じようにして騒ぎ始める始末。
銀色の宇宙人の、その腕のひんやりとした感触を確かめただけだった。
どうしようもなくなって、僕たち四人は、誰からともなく、
白い床に跪いて土下座していた。
なんともみっともない光景だが、贅沢を言ってはいられない。
誠心誠意、できることをするしかない。
すると、思いがけず、銀色の宇宙人に反応が。
先程までの嬉しそうな様子が、打って変わって、大人しくなった。
黒い穴の目に、失望の表情が浮かんだような気がした。
何があったのだろうか、様子を伺うと、
その視線の先は、なんと僕の方を向いていた。
明らかに、銀色の宇宙人は、僕を見て失望しているようだ。
ガクッと足元が揺れて、今度は窓の外の地球が近寄ってくる。
「なんだ?意味が通じたのか?どうやって?」
「わからない。
ただボクたちは頭を下げていただけだったのに。」
「あの宇宙人、君の方を見てたよね?
何かしたの?」
「いや、僕にもわからないよ。」
何が何だかわからない。
しかし、僕たちが地球を離れる気がないことは通じたらしい。
やがて円盤は地球に戻り、元の畑へと降りていったのだった。
円盤は地球を離れ宇宙へ、そして今また地球へ降り立った。
窓の外には見慣れた光景、畑のミステリーサークルが見える。
どうやら、僕たちが宇宙に行くつもりがないことは、
銀色の宇宙人に理解してもらえたようだ。
これで家に帰ることができる。
そう思ったが、まだ困難は立ちはだかっていた。
来た時と同じ様に、円盤の床に体が飲み込まれていく。
しかし、それは僕一人だけ。
ガキ大将とマドンナと秀才君の三人には変化がない。
「なんでお前だけ?」
「ねえ、私たちも帰りたいの!」
「帰して欲しいのは一人だけじゃないんだよ!」
慌てて三人が懇願するが、
銀色の宇宙人には意図が伝わっていないようで、
またしてもその様子に変化はない。
どうして、僕一人だけが?
僕たち四人とも、同じことをしていたはずだったのに。
同じ様に頭を下げて、お願いしただけ。
そう考えた時に、僕には理由がわかった気がした。
本当に、これが理由だろうか?
しかし今は、それを説明したり確かめたりしている時間はない。
床に沈む足を動かして、銀色の宇宙人に近付く。
そして、他の三人を指さして、僕の頭を下げて見せた。
銀色の宇宙人は、三人と僕の頭をゆっくりと交互に見る。
すると、意図が通じたようで、銀色の宇宙人が反応した。
見るからにしょんぼりとした様子になって、何やら身振り手振り。
すると、僕以外の三人の体もまた、ゆっくりと床に沈み始めた。
「話が通じたのか?」
「私たちも、外に出られるみたい。」
そうして、僕たち四人は円盤の床を抜け、
円盤の外に出ることが出来た。
外は真っ暗だが、これは日が暮れたから。
宇宙空間などではなく、地球の地面からそう遠くないところ。
来た時と同じく、光の筒に包まれて、
ゆっくりと地面に降り立つことができた。
すっかり日が暮れた畑の真ん中、
ミステリーサークルの上に僕たち四人が立っている。
「・・・夢、じゃないよね?」
マドンナが誰に聞くでもなく言う。
しかし僕たちは誰もその疑問に答えることができない。
ミステリーサークルを調べていたら、
空から光り輝く大きな円盤が現れて、中に吸い込まれて、
中には銀色の宇宙人がいて、宇宙へ連れて行かれた。
思い返しても、とても現実のこととは思えない。
しかし、頭上を見上げると、そこには光り輝く大きな円盤があり、
ゆっくりと上昇していくのが確認できる。
つまりこれは現実にあったということ。
すると、ガキ大将が、思い出したかのように僕に尋ねた。
「俺たち、助かったみたいだな。
ところでお前、どうやってあの宇宙人に話をしたんだ?
俺たち四人を外に出してくれるようにって。」
「ボクも気になる。
キミの話を聞いて、宇宙人は許してくれたんだよね?
どうしてだ?」
そういえば、三人には説明する暇がなかったんだったか。
僕がどうやって銀色の宇宙人に意思疎通したのかを。
憶測も含むが、おそらく正しいことなのだろう。それは。
「それはね、頭だよ。」
「頭って?」
「頭を下げた時に見えるものは何だと思う?」
「それは、髪の毛かな。」
「うん。もっと正確に言うと、旋毛だよ。
僕は、あの宇宙人に、旋毛を見せて意思疎通をしたんだ。
あの宇宙人は、僕たちに向けて、頭や手をグルグル回して見せた。
あれは、あの宇宙人にとっての言葉なんじゃないかって思ったんだ。
あの宇宙人にとって、ものを回すことは言葉と同じ。
それを確信したのは、僕たちが揃って土下座した時だ。
あの時、僕たちは四人とも土下座して見せたのに、
帰してもらえることになったのは、僕一人だけ。
きっと、僕だけが何か違ったんだろう。
そう考えて思いついたのは、頭の髪の毛の旋毛だ。
旋毛には、時計回りと反時計回りとの二種類の向きがある。
僕の旋毛は、少し珍しい、反時計回りをしている。
この四人の中で、旋毛が反時計回りをしているのは、僕一人だけ。
宇宙人の反応が違ったのも僕一人だけ。
だからきっとそれが否定を表す意味になるんじゃないかって考えたんだ。」
銀色の宇宙人にとって、ものを回すのは言葉と同じ。
反時計回りに回して見せるのは、否定を意味する。
そんな僕の予想は、どうやら間違ってはいなかったようだ。
僕の説明を聞いて、他の三人も腑に落ちたみたいで、
しみじみと語り始めた。
「そうか。
ものを回すのが言葉だったのか。
だからあの宇宙人は、頭や手を回してたんだな。
俺たちには時計回りに見えたから、きっと好意だったんだろうな。」
「じゃあ、反時計回りの旋毛を見せられて、
きっと悲しかったでしょうね。
せっかく友達になれると思ったのに、
その相手に否定されちゃったんだから。」
「・・・それだけではないかもしれない。」
「うん?」
秀才君の言葉に僕たち三人が顔を向ける。
「あの円盤は、上に向かって飛んでいるだろう?
ここは日本、一応は北半球に位置する。
北極側から見ると、地球は自転も公転も反時計回りなんだよ。」
「じゃあ、あの円盤が宇宙から地球を見たら、
地球は自転も公転も反時計回りをしているように見えるってこと?」
「それじゃまるで、地球の全てがあの宇宙人を拒否してるみたいだ。」
僕たちと銀色の宇宙人は、もうすぐ友達になれるはずだったのに。
それが意思疎通が上手くいかなかったばっかりに、
全てを否定して追い返すことになってしまうなんて。
今になって僕たちは、円盤からの帰り際に、
銀色の宇宙人がなんだか寂しそうにしていた理由がわかった。
故郷の星にいたのは自分たちだけ。
そこから遠く離れた宇宙に来て、やっと見つけた知的生命体に、
星丸ごと拒絶されてしまったのだから。
なんだか居た堪れなくなって、僕たちは話し合った。
「俺たち、もう一回やり直せないかな?」
「できるんじゃない?
少なくとも、はいといいえの言葉はわかったんだから。」
「とは言え、今から間に合うかなぁ?」
「・・・できるさ。まだ、頭上に、円盤は見えてるんだから。」
言葉がわかって、お互いが見える距離にいるなら、
きっと宇宙人とだって友達になれるはず。
僕たち四人はそう信じて、
頭上の夜空を上り小さくなっていく円盤に向かって、
大きく大きく手を回して見せるのだった。
終わり。
宇宙人とミステリーサークルをテーマにしました。
ミステリーサークルを見ていると、なんだか旋毛に似ている気がして、
宇宙人と旋毛を使って意思疎通をする話になりました。
ミステリーサークルは、作っていた人たちが名乗り出て、
いたずらであることがほぼ確定してしまいました。
でもそれで証明できるのは、
名乗り出た人たちがいた時間と空間にあるミステリーサークルがいたずらだった、
ということだけ。
この世のミステリーサークルの全てがいたずらだったとは証明できない。
あるいは、この先の未来に、真のミステリーサークルが現れるかも。
そう考えることもできるかもしれません。
お読み頂きありがとうございました。