第3話 好きの気持ち
静かな場所を求めた結果、屋上にたどり着いた。
今日は天気が良く、身体に当たる日差しもいい具合。
「うまっ」
そんな青空の下で食べる弁当は格別。
「涼夜」
「ん?」
「さっきはありがとう……」
さっきというと、坂比奈の件か。
「あーうん。どおってことないぞ。でも確かにお前の言動にはいつも振り回されたよ。時にはムカつくこともあったし、傷つくこともあった」
「っ……」
「側からみたらツンデレを超えたパワハラに捉えられたとしてもおかしくない」
「……」
きゅっと体を縮こませ申しわけそうに眉を下げる優菜。
ちょっと意地悪し過ぎたかな。
ポンと優菜の頭に手を乗せる。
「けど、悪い事って認めて改心するのは立派な成長だ。頑張って変わろうとしている優菜を俺は応援するぞ」
「……!!」
ガバっと顔を上げ俺の顔を見る優菜。
その分かりやすい反応に微笑み、よしよしと頭を撫でてやる。
ひとまずさっきの件は一旦保留にして弁当を食べ進める。
「いつもありがとな。毎日、弁当作るの大変だろ」
「べ、別に私が勝手に作ってるからいい……」
と、口ではそう言うものの、頬を染め、髪の毛を指でくるくると掻き回していて、嬉しそうにしている。
「それに好きな人に美味しいって言われるのが何よりの活力だから」
「そう言ってもらえると嬉しい——え、好きな人?」
俺の発言で優菜は自分が何を言ったか理解し、口を押さえたが、すぐに顔をこちらに向け。
「その……なんか言ってよ……」
「えーと……俺のこと好きだったのか……?」
「……そうじゃないとあんなにお世話したりしないわよ」
顔を真っ赤にし、困ったように視線を外す優菜。
しかし俺の反応が気になるのか、眉尻を下げながらチラッと見てきたりもする。
確かに毎日、起こしてもらって、お弁当を作ってもらって、たまに勉強を見てくれる。
幼馴染という垣根を越えている。
「それとも返事は『今更、好きだと言われても、もう遅い!』なの……?」
恥ずかしい様子から一変、目尻にうっすら涙を溜め、不安そうな様子になった。
その台詞は俺が昨日、教室で言った言葉……あっ。
まさか昨日の放課後、優菜は教室付近にいて、俺の台詞を勘違いして、それで今日はこんなに甘々に……。
…………。
クッソ、なんだこの殺人的な可愛さは……。
辛抱たまらなくなった俺は、無言のまま優菜の口唇に自分のモノを重ねた。
「んっ……」
甘い声が漏れる。
優菜は抵抗しなかった。
それどころか2度、3度と口唇を重ねてやると、顎を上げて自分から口唇を押しつけてくる。
「ん……返事、聞いてない」
「好きに決まってんだろ。ツンデレの優菜も今の甘々な優菜も好きに決まってる」
俺の返事を聞き、ぱぁぁと明るくなった優菜だっだが、すぐにムスッとした表情になり、
「気づくの遅い……。許さないんだからっ。もっといっぱいキスしてくれないと、許してあげないんだから……」
「~~〜〜っ」
再び強引に唇を奪う。
そこから何度キスしたか。
十数年幼なじみをやって初めて知る優菜の姿にますますたまらなくなる。
もっとキスしたかったが、歯止めが効かなくなりそうなので、グッと我慢し唇を離した。
「今度の週末、デートに行こうな」
「え、ふ、ふーん……べつにいいけど……」
と、言う優菜だが、口角の緩みが隠しきれていないし、ギュッと腕にしがみついてきた。
豊かすぎる胸がむにむにと当たってくる。
その後、教室に戻って付き合うことになったと報告すると、クラスメイトの大半から「やっとかよ〜〜!」と安堵の声が漏れたのだった。
放課後になり、俺と優菜は一緒に帰るため、靴箱にいた。
「んじゃ、帰るか」
「……手」
「おう」
朝のようにお互いの指と指を絡め合う恋人繋ぎ。今度は本当のだ。
「涼夜先輩!!」
そんな時、後ろから誰かに呼び止められた。
今回の作品は長さ的に中編くらいです。
(短いと感じたら申し訳ないです)