表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/10

第1話 幼馴染の様子が変?

 カーテンの隙間から優しい光が顔を照らしだし、その光が朝だということを自覚させる。


 いつもの変わらない朝。

 俺は幼馴染に乱暴に起こされるはず、なのだが……。


「おはよう」


「……え?」


 挨拶をしてくれることはいいことだ。

 

 問題は優菜が俺の隣、布団の中にいること。


 目を開けたら、黒髪の女(優菜)が隣にいて、結構ビビったのは秘密。


 艶やかな黒髪に、くりっとした大きな瞳にスッと通った鼻筋。柔らかそうな唇。

 緩く着崩し、制服をさらに押し上げるほどの巨乳。

 相変わらず高校生とは思えない発育の良さである。


「って、なぜ布団の中に入っている!?」


 慌てて起き上がり、距離を取る。


「嫌だった?」


「嫌じゃないけど……。お前、昨日まで俺のこと叩き起こしてたじゃないか!」


『起きろ!』


 容赦なくカーテンを開け、直射日光を浴びせてくる。それが我が幼馴染。


『まぶっ!? もうちょっと優しく起こせないのかよッ!』


『はーっ? わざわざ起こしてもらっている身でそんな贅沢言ってんじゃないわよ!!』


 と言われ、叩かれるまでがセット。


「そ、そうだったけど……」


 何かまずいことを言ったのか優菜の顔が曇る。


「昨日までの私は……ううん。今までの私は涼夜にひどい態度を取ってきた。照れ隠しのために暴言や軽い暴力。意地を張って褒め言葉の一つも言えない。そんな最低な幼馴染」


 優菜が淡々と述べる言葉を俺は黙って聞く。


「そんな私は涼夜に嫌われて当然だよね」


  ……嫌う? 俺が優菜を?


「今日から私、変わるから。だからね、私のこと嫌いにならないで……っ」


 ついには泣き始めた。

 

 一体、何が起こっているが理解できない。


 俺が優菜を嫌うなんてあり得ないし、自分の振る舞いに悩んでいる様子……。


「優菜」

 

 名前を呼ばれ優菜は一瞬、身体をビクッとさせたが、逃げたりせず、ただ俺の顔をジーと見て待っている。


 俺は彼女の身体を俺の身体にすっぽり収まるように抱きしめた。


「そんな思い詰めるな。お前の本当の気持ちくらい分かってる。だって幼馴染だから」


 胸の中で息を呑むのが聞こえる。それから啜り泣く音。


「っ、これからは……もっと甘えてもいい?」


「もちろん」


「……ありがとう」


 まだ状況が飲み込めないが、「よく打ち明けてくれた」と褒めながら頭を撫でてやると嬉しそうに笑っていた。



◆◇

 

 俺と優菜のコンビを見た周りの生徒は『あぁいつものことか』で片付けられるほどに、謎の納得で染まりつつある。


 だが、今日は違った。


「ゆ、優菜さん……?」


「なに?」


「なんでそんなに距離が近いのですか?」

 

 お互いの指と指を絡め合う恋人繋ぎ。

 近いどころかゼロ距離である。

 

「涼夜が甘えていいって言った」


「いや、甘えるにしても色々飛ばしすぎじゃね?」


 甘えるって言ったら、素直になるとか……いや、これ素直になりすぎじゃね?


「嫌、なの?」


「嫌じゃないけど……」


 そんな捨てられた子犬みたいな目をされたら断れない。


 周りの生徒からの視線を受けながら、そのまま教室に入る。


「お前ら、やっと付き合ったの?」


 優菜と一旦別れ、自分の席につくと、友人に話しかけられた。


「いや、付き合っては……いない」


「付き合ってなくて手とか繋ぐのかよ。幼馴染凄いな。で、進展はしてんの?」


「進展……今日はいつもより優しくて甘い気がする」


「ほーん。優菜ちゃんも()()()決意をしたんだな」


 変わる決意。


 友人の口から出てきた謎の言葉に、首をかしげる。


 すると、友人は笑みをもっと歪め、俺の耳元に口を寄せて。


「優菜ちゃんな、友達にお前との関係について色々問い詰められた時、『涼夜なら私の全部を捧げられる』そう言ったらしいんだよ」


「ぶっ!?」


「つまり、お前にゾッコンていうことだな」


 優菜が俺にゾッコン。普段の態度からは考えられないが……。


 そういえば一緒に帰ろうとした時、女子の方から冷たい視線が飛んできた時もあったな。あれはまさか、「さっさと付き合え!」という無言の圧だったのか?


 しかし……


「全部を捧げるって……」


 俺も健全な男子高校生。


 全部と言ったら身体まで捧げるってことを真っ先に想像してしまう。


 誰もが憧れるあの美ボディを独り占めすることができるなんて……。


 優菜の方を見ると、ちょうど視線があった。


 その時、ピコンとスマホが鳴る。

 優菜からだ。


『………スケベ』


 ごもっともなメッセージが来たのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ