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短編

エミールおねぇさまのダンス〜マーペリア・外伝〜

作者: 宇水涼麻

 背が高く、完璧なリードの女性とセシルが踊っていた。セシルの旦那フランが、声をあげた。


「仕立て屋っ!」


「ダンスで相手以外を見てるなんて、最低ね」


 エミールがセシルに呟くと、セシルが笑いだした。


「仕方ないわね、チェンジ!」


 エミールは、セシルの手を離し、フランの手をとる。曲間にも関わらず踊りだし、楽団が慌てて曲を奏でる。フランは、その少しずれて始まったはずの曲に、いつの間にか合わせてリードをしている。フランのダンスはトップクラスだ。


「仕立て屋さん、男ですよね?妻の採寸したんですか?」


「男って!失礼ねっ!仕立て屋だもの、採寸はして当然でしょっ」

 本当は従業員の女性がした。


「着替えを手伝ったのは?」


「ドレスを美しく見せるためよ。当然ねっ!」

 本当は最終チェックをしただけだ。


 フランは、振り回すようなダイナミックなリードだ。エミールは、余裕でついていく。


「公園で、妻と何を話していたんですかっ!?」


「もちろん、あなたがセシルにフラレて泣いていた話よぉ?」


「噂の出処は貴女かっ!」


「やあ〜ねぇ。私も聞いた話よ」


「振りまいているのは、貴女だろ!」


 フランは、歩幅を広げ、スペースを大きくまわるように、引っ張っていく。エミールは、涼しい顔でついていく。


「それと、妻に変な言葉を教えるな!妻に『小悪魔ちゃん』ってなあに?と聞かれたっ!」


「あ〜それぇ。だって、私と秘密を持ったのよぉ」


「貴女と秘密だとぉ!!金輪際、妻に近づくなっ!」


「この町に住んでる限り無理ねぇ」


 フランが、エミールを2回回すリードをする。エミールは、優雅にまわり、フランの右手とエミールの左手をしっかりと繋ぎ、二人とも両手を大きく広げて、フィニッシュ!そして、曲が終わった。


 いつの間にか、そこで踊っていたのは、フランとエミールおねぇさまだけだった。

 割れんばかりの拍手喝采、指笛まで。それに応えるように、フランは会場へ騎士の礼を、エミールは、カーテシーをした。エミールは、フランの腕をとり、手を振りながら、舞台を降りた。


「セシル、焼きもちやきで大変ね。あげるわ」

 エミールがフランの腕をセシルに渡す。


「おねぇさまが、ライバルでなくてよかったわ」


「こちらの方が好みね」


 エミールが、ヴィオの旦那の腕をとるものだから、ヴィオが慌てて引き離そうとする。エミールおねぇさまの腕力に敵うはずもない。頼りの旦那は、おねぇさまが理解できず、放心状態だった。

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