なろうでテンプレ外しがなぜ難しいか考察してみる
なろう=テンプレと感じる方は少なくないと思う
特にランキングはテンプレばかりだ!
こう嘆く読者の方も多いでしょう
確かにわかる
かくいう私も、5~6年前にその事を嘆いてテンプレ外し作品を探し回り
最終的には自分で書いてみようとチャレンジした人間であったから
その結果、私はなろう作者様の方々に向かって
「テンプレばかり書くな、内容が薄すぎる、1話の文字数が少なすぎるもっと1話最低5000字ぐらいにしてから投稿しろ etc」
と嘆く(実際に凸する)読者の方々に最低限、分かって貰いたい
ということ一度は書いた方がよいかと思い
今回、この内容を投稿することにした
まず結論を書いてしまうと
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テンプレの項目を一つ外すだけで、書き手の負担はとても大きくなる
逆に読んでくれる読者の数は少なくなる
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これがテンプレ外しの作品が書かれず
またランキングに上がらない理由だと思う
さて、ここからは私なりの上記に関する考察なので、読んで頂いても読んで頂かなくてもいい
皆さんが考えるなろうのテンプレとは何だろうか?
さっと思い浮かべるのは
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タイトルが長くて中身を全部書いてる感じ
主人公は
転生(転移)、チート(知識含む)、無双、ハーレム(逆ハー)
更に、
中世ヨーロッパ風、魔法やスキル(それに類する力)、モンスター、冒険者
飯が不味い、貴族社会&フランクな王侯貴族、平民でも入れる学校
ざまぁ、ゲーム設定の世界(悪役令嬢)、無能から最強
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この辺りだろうか
これらを複数まぜればなろう小説の出来上がり、という訳だ
読専の方々でも、これらのタグを見れば多少なりとも物語を頭に思い浮かべることが出来るのではないだろうか?
実の所、なろうでは、その読専の方々でもタグを見れば多少なりとも中身を思い浮かべられるというのが極めて重要である
読んで頂ける可能性が高まるからだ
逆に、全くテンプレを外し中身を思い浮かべられない物語を書く、という事が極めて困難なのである
と同時に、それを書いたから読んで頂けるかといばそうではない(むしろ問題が多い)からである
まずテンプレを外す物語を書くことが極めて困難な理由について述べる
人間、誰しも物語を書こうと思えば自分の知識と想像の中で構成できる範囲以上の物にはならない物だ
これは当然だと思う
では、自分の中でテンプレを外した物語を思い浮かべたとしよう
それを物語としてアウトプットするのは更に輪をかけて難しい作業なのだ
例を一つ出してみよう
私が昔投稿した、私の頭の中で完璧にテンプレを外した『カリッツの狩人生活』という物語の導入部分(世界についての説明の一部)である
ちなみにこの作品は2015年頃に投稿し、投稿数週間で削除したゴミ作品なのでご了承頂きたい
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(ここは真剣に読む必要はないです)
まだ陽の輝きが見えるまでは少々時間のある薄暗い時間帯、『デルパーク』という街から郊外へと続く東大水路と呼ばれる幅80mほどの水路を一隻の船がゆっくり街へ向けて進んでいる。
と、カリッツという小柄な少年が寝ぼけ眼のまま船の後部に備え付けられている幌から出てきた。
少年らが乗る中型 -- 全長15m、幅3m -- の木造船は、『デルパーク』から東大水路上 -- デルパークの東側にある水路という意味で、実際は南北に流れている -- の終着点までを片道10日かけて行き来するという数少ない交易船である。
ちなみに少年の住んでいた農村『トットス』は辺境にある湖『トットヒューツ』のほとりにある人口わずか50名ほどの小さな村だ。
湖『トットヒューツ』はデルパークから東大水路を8日ほど進み、そこから東へ向かう支流に入り2日ほど進んだ場所にあり、他の村との交流も少ない田舎である。
当たり前だが自慢する事など何もない辺境なのだった。
この世界の『船』は、晴れた日でも水を苦手とする『害獣』に襲われない最も安全で確実な交通手段だ。
人々はどこへ行くにしても水がある場所、つまり川か水路を使い船で移動する。
害獣はある程度周囲に水がない場所であればどこにでも出現するため、晴れた日に水上か水路で囲われた土地以外を移動する以外、出歩く事すら非常な危険が付きまとうのである。
ただ、そんな人々の生活を支えている船も、長期間乗るとなればそんなに良いものではない。
船は木製であり、当たり前だが床は板張りで堅い。
それにこの世界で『木材』はとても貴重なので船底以外の場所 -- つまり浸水しなければ -- はかなりボロボロになるまで補修なしで使われる事になる。
人が満足に休める居住空間などという物はあってないようなもので、船の後部に設けられた狭い一角のみ。
特に中型船では、雨除けのため『益獣皮』のホロが張られているが、そこは大人が3~4人入れば息苦しく感じるほどの狭い空間しか確保されていない。
だから船に乗る乗客は余計に息苦しく思うのだろう。
今は長雨季へ入ったばかりで、前日まで短雨季の終りにある短長季変節であった。
今年は丁度10日間 -- これは季変節では平均的な日数だが -- 雨が降り続いていたため、カリッツは船に乗って以降ずっと幌の中に引き籠る事を強要されていた。
まあ、雨の日は『害獣』が出現しないためとても安全なのだが、流石に船に10日となれば、乗り慣れた船員ですら多少の閉塞感を感じていたのは厳然とした事実であった。
以下略
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囲った部分で千字ほどの文字数がある
昨今の投稿更新の早いなろう小説の1話の約半分に相当する分量がある訳だ
しかし、頑張って読んだ方には申し訳ない事に、これだけ読んでも正直どんな世界なのか、またどんな場所なのかさっぱり分からだろうと思う
まあ船の上だという事ぐらいは伝わるか・・・
実はこの小説、この世界に存在する人が持つ共通知識を読者に説明するためだけで、1万字を超えるボリュームがある
その上、テンプレを外して新しい世界を構築している関係で、これらの設定をキッチリ読み込んで覚えておいて頂かないと、いわゆる本編部分を読んでもサッパリ内容が分からない、という事になる
分かるだろうか?
テンプレとは共通知識である
異世界転生、魔法、チート、中世ヨーロッパ風!
書き手からすれば僅か20文字ほど書けばその世界の設定などを丸ごと省ける
書きたい本編に到達出来る
もちろん読者もすぐに本編を読んでその世界の事を理解できる
両者の間に知識の齟齬はほとんど生まれない
それがテンプレの意義の一つなのだと思う
そして、なろう読者で独自世界の設定を数千~数万字(話数で3~5話分)も読みたい人もまた少ないと思う
実際、ほぼ読まれることはないし、それらが日刊などのランキングに上がることは滅多にない
この数少ない小説を世界設定までキッチリカッチリ読んでくれる読者の方々も少しいる
おそらくはスコッパーと呼ばれる方々だと思うのだが、彼らとても目が肥えていて知識も豊富で読む目は確かだ
実は独自世界、テンプレ外しの物語というのは、結構矛盾が出やすいのだ
もちろん作者の力量の問題ではあるのだが・・・
例えば出版社持ち込みで書籍目指す場合などは、必ず編集の方などからチェックが入るのだろうから、世に出るとすれば、そこまで酷い矛盾や設定ミスは残ってないだろう
しかし、なろうなどフリー投稿では、自分の書いた物語を世に出す前にをチェック出来るのは基本的に自分だけである
自分のミスは結構気が付きにくい、ましてや書いている方々は皆素人である
誤字脱字はもちろん大小様々な作品のミス、矛盾に気が付かないまま世に出してしまう
そして、読んでくれる極小の方からこれらのミスに関しての怒涛のツッコミを受ける
もちろん修正するが、修正するたび別の所に綻びが出てくる事は少なくない
結局、最終的には誰にも見向きもされなくなる
結局大半は、どこかで折れて投稿を辞めるか、読んでもらう事を諦めて好きな事だけ書いて投稿するかになると思われる
正直、自分で書いてみて思ったのは、なろうで『テンプレ外しの新世界』を隙なく構築出来る人は天才だ、という事だ
そしてそれを読者に飽きずに読ませる事が出来る人がいるとすれば、それはもうチートであると思う
テンプレ外しを求める読者の方々は、なろう投稿者に『現実チート』持ちを求めているのだと理解して欲しい
私はチートなど持っていないし、大半のなろう作者の方もそうであろう
テンプレ外しの作品が増えない事に嘆く読者の方々
その思いは理解できます
ですが、テンプレ外しの作品を本気で読む覚悟が無いのであれば、あまり作者の方々にそれを求めないで上げて欲しいと思う
恐らく、そういう方々が仮にテンプレ外しの作品を2~3作読んだとすれば、その後はテンプレ作品に戻るのだろう、と思うから
筆者が過去投稿した作品で、多少だがテンプレを外し、かつまだ読めるかな?
と思われる作品が残っている(世界丸ごと新構築ではないし、面白い訳ではない)
テンプレ外した作品ってどんなもんぜ?
と思った人は読んでみるのも一興かもしれない
個々の方々が持つ感想にまでは責任は持てないけれど
テンプレ外作品でランキングに入らなくても自主的にそれらを検索して読むような方が増えればいいなと思う