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皇国召喚 ~壬午の大転移~(己亥の大移行)  作者: 303 ◆CFYEo93rhU
番外編
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番外編13『贅沢は敵だ』

『お出かけは公共交通機関で。自家用車の利用は慎みましょう』


 区役所の屋上からアドバルーンが上がっている。

 3月を迎え、日差しも暖かくなってきた。行楽に出かける人もこれから多くなるだろう。

 それに水を差すように自家用車禁止令(実際は法令ではなく、政府からの要請)が出ている。


 皇国は石油の産出量ゼロではないが、消費量から見れば国産石油の量は微々たるものだ。

 転移前から備蓄してある石油量も、軍民両用として1年分しかない。


 自動車を乗り回して行楽地に行き、ガソリンが無くなったらガススタンドへ……という情勢ではなくなった。

 転移前の石油の輸入元であるアメリカは、この世界にはない。



 先頃、国内の自動車台数が100万台を突破したというニュースが新聞の一面を飾った。

 多くは公用車(軍用車含む)だったり、華族や成金の持ち物であったが、都市部の中流以上の家庭でも自動車を保有しようという動きは加速している。


 特に欧米の高性能車に対して安価でそこそこの性能という国産車の躍進が目覚しく、100万台のうちの半分弱は純国産のセダンやトラック、バス等である。


 100万台という数字はアメリカの持つ3000万台以上という数字には遠く及ばないものの、それでもイギリスやフランスの半分程度であり、この20年間で急速に発展した産業の成果としては十分に満足すべき数字と言えよう。


 しかし喜びもつかの間。

 転移によって情勢が変化すると“大量の自動車”は重荷になってしまった。

 自動車は当然ながら石油燃料が無ければ動かない。そして、皇国は石油を殆ど産出しない。

 国家が備蓄する石油を使い切ればその後は……。


 つまり、石油燃料は極力節約せねばならない。

 故に公用車やバスなどの公共交通機関、物流を担う商用車を除いて、自家用車や社用車に対して政府から“使用の自粛”が要請されたのだ。


 せっかく手に入れた新車で郊外に出かけようと思っていた人も、渋々電車やバスで目的地を目指す事になる。

 しかも、倹約令はその公共交通機関にも波及し、都市部ではバスの運行本数すら減らされている。


 神賜島という僥倖を得た皇国ではあったが、全くの手付かずであるこの島を開発して油田の操業が軌道に乗るまで、少なくとも半年はかかる。


 しかも、転移してからの対外戦争で軍の石油消費量が平時を上回っている。

 そうすると、その皺寄せは民間に向く。悪循環だ。


 窮屈な時期になったものだと、多くの国民は感じていた。

 せっかくソ連の脅威とおさらば出来たというのに、目減りしていく食糧や石油等の資源量に怯えつつ暮らさねばならない。



 最近新車を購入した東京の某一家は、それに乗る事無く電車でピクニックに出かけていった。

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