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皇国召喚 ~壬午の大転移~(己亥の大移行)  作者: 303 ◆CFYEo93rhU
番外編
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番外編29『皇国軍の基地祭』

 メッソール港に停泊中の砲艦園部。姉妹艦の木津と共に、未だ情勢不安なリンド王国と周辺諸国に無言の圧力を加える、所謂“砲艦外交”のための艦である。


 また、同時にリンド王国防衛の最前線でもある。


 メッソールからは東に向かってシャトレ川という河川があり、その上流240kmには首都ベルグがある。

 喫水の浅く小型の園部型砲艦は、この河川を遡上してベルグに行く事が可能なのだ。


 園部と木津には、艦を運用する人員以外に、陸戦兵たる海兵隊が乗り込んでいる。

 ベルグやメッソールに限らず、シャトレ川の隣接都市に何かあれば、園部と木津が駆けつけ、主砲(兼高角砲)で火力支援をしつつ海兵隊を乗り込ませ、防衛展開する陸軍部隊を援護するのだ。


 小型艦なので、海兵隊の人員は両艦合わせても120名程にしかならないが、新式の百式自動小銃、百式軽機関銃等を装備する精鋭である。

 決定的な局面で重要な役割を果たすであろう。


 両艦ともメッソールを仮の母港としているのだが、現在は、園部がメッソールに、木津がベルグに停泊している。

 両都市とも、皇国陸海軍が苛烈な砲撃を行った事で、住民達の対皇国感情はあまり良くない。

 女王が皇国の皇族を夫に迎えたからといって、それですぐに友好的になれるほど、人間は優しくないであろう。


 一部の商人等は、皇国軍を“良いお客さん”として迎えてくれるが、多くの貴族や平民に、皇国人と積極的に付き合おう等という考えは無い。


 だが、リンド王国軍が再編中の今、この国を守れるのは皇国軍だけなのだ。

 お互いに複雑な感情を持ったままでは、外交や内政に差し障りが出る。

 そこで、園部と木津の艦長は、協議の上、東大陸派遣艦隊司令部にお伺いを立てると、両都市において祭りを開く事にした。


 思い立ったが吉日。

 都市の市長やその他の貴族、商人等との打ち合わせが行われた。


 参加人員は、両都市でそれぞれ陸軍の2個中隊と、海軍の1個分隊、海兵隊の1個分隊。

 歌や踊りに始まり、皇国料理の模擬店や、キャラメルやラムネ等の販売もある。

 皇国軍の実力を把握してもらうために、実弾の射撃演武も行われる事になった。


 特に、海兵隊は百式小銃による400m(2シウス)の距離からの狙撃演武を行い、皇国軍の精強さを内外に知らしめ、リンド国民の皇国軍に対する信頼を醸成し、逆に無用な叛乱等を起させないようにするという目的を持たされた。


 これは、皇国に敵対的な姿勢を取る国に対する圧力にもなる。

 2シウスの距離で鉄の胸甲を撃ち抜いて見せれば、常識的な軍人であれば皇国軍を相手に戦争を仕掛けよう等とは思わなくなるだろう。


 国内外に向けて大々的な宣伝が行われ、1ヶ月の準備期間を経て祭りは行われた。



 祭りの当日は、両都市とも晴天であった。

 黒船を見物に来た過去の皇国人のように、リンド国民は物珍しがって集まって来る。


 両国の軍人が皇国軍歌やリンド軍歌を歌い、市民がベルグ市歌やリンド民謡などを歌う。

 ベルグでは、祭りの開催に意欲的だったリンド女王の鶴の一声で宮廷楽団までも駆り出され、普段は平民が見聞きする事の出来ない宮廷音楽も演奏されていた。



 軍の演習場では、事前に皇国が買い上げていた胸甲を、海兵達が狙撃していく。

 あんな距離当たるわけが無い、等と思っていた貴族や平民達の期待を裏切り、海兵の放った銃弾は次々命中し、いとも簡単に胸甲を貫通していく。

 胸甲を着せられた木偶人形には大きな穴が開いてしまった。


 苦虫を噛み潰したような表情のリンド軍人に、驚きのあまり声が出ない他国の軍人。


 本当は、砲兵連隊から大砲を持ってきてそれの射撃演武も行いたかったのだが、演習場が狭すぎた。普通に撃つと、弾丸は確実に演習場から飛び出してしまうため、大砲は空砲のみを撃ち、その“迫力”だけを味わって貰う事になった。


 装薬の質、量ともにこの世界の一般的な野戦砲を凌駕する皇国軍の“砲撃”は、皇国軍を知らない他国の将校にはかなり衝撃的だったようで、

 特に砲撃時に発生する大量の白煙が無いという事に対して、質問があった。


 リンド軍人や市民は、皇国軍の砲撃をよく知っている。

 特に、メッソールは陸軍の野戦砲等とは比べ物にならない海軍の12インチ砲を受けている。

 空砲とはいえ、悪夢が甦る人も居た。


 皇国軍の将校は、この大砲も小銃も、今や女王陛下とリンド王国を守るものであり、リンド軍やリンド国民に向けたものではないと説く。

 皇国とリンド王国の友好は、東大陸の平和と安定に大きく寄与するものであると、リンド貴族や軍人に説明しつつ、平民に対しては悪夢は決して忘れられないだろうが、皇国は良い夢を見せる事も出来る。

 いずれお互いに良い夢を見ながら安眠出来るようになる。またそうして行かねばならないと、演説をした。



 3日間で、両都市合計でのべ3万人以上を動員した祭りは、無事に終了した。

 園部と木津の両艦は、侵略の尖兵ではなく、平和の象徴としてリンド王国の剣、そして盾になるという演説で、祭りを終えた。


 この結果が、リンド王国に与えた影響がどれ程か定量化するのは難しいが、手応えを感じた軍部は、これを手本に東西両大陸の同盟国や友好国でも基地や艦艇を中心とした祭りを度々開催するようになり、外交官や軍人等が列席し、相手国の軍人や貴族、平民達と交流を図るようになる。


 後に、定期開催され大規模になっていく皇国軍の基地祭は、その国の伝統的な祭りとは別に、国の名物行事となっていく。

 皇国本国で開催される基地際に参加する為に“旅行”しに来る富裕層も居た。


 『天皇陛下の御召艦になった戦艦を見学できる』

 『間近で戦車の実弾射撃が見られる』

 『本物の小銃に触われる』

 『皇国の兵隊さんと握手』

 『軍用カンパンも売ってます』


 このような宣伝文句を武器に、皇国軍は駐留する同盟国の国民を懐柔していくのである。

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