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ノーエルへの訪問(23)

23

 2次13分、激しい殺気と共に瑠璃湖の水面が大きく揺れた。

(きた。)

雫たちが一斉に構える。

瑠璃湖の水面が一瞬大きな穴が空いたかのように暗くなった。

「防衛魔法転回。」

雫の声でスマスたちが魔法を宣言する。

「防衛魔法「タワースラッシュスリー」。」

瑠璃湖周辺に緑の光の壁が現れる。

「次戦闘員第1戦闘態勢。」

Miraたちが一定の距離を取って正立する。

荒々しい音を立て水面からそれは現れた。

「あー。」

瑠璃湖から現れた、いや瑠璃湖からくねくねと長い首を地上に出し、その太い首から大量の水滴を瑠璃湖の周辺に降り注がせているのは、体長5mは優に超え、地上に立っている雫たちから月明りを奪ってしまうような超巨大生命体。

イレギュラー種の古代モンスターの蘇り、レッドネックだ。

「大きいですね。初めて見た。」

MEMCで円動が呟く。

「本来ならもっと小さいんだがな。ずいぶん久しぶりに見たよ。」

「チーフそんな暢気なことを言っている場合ではないと思われますが。」

「そうだったな。」

田野村が一度起立する。

「10人のGPS位置、レッドネックの行動と精密情報から目を離すな。」

「はい。」

 「大きいわねえ。」

雫の口から言葉が漏れる。

「そんな暢気なことを言っている場合ではありません。」

Miraをはじめクシーもシーナも少しずつ後ろに後ずさる。

「何をしてるの。後ろに引いてはだめ。あいつに私たちが自分より弱いと思わせてはだめ。」

雫のぴしゃりとした声にMiraたちが戻ってくる。

「すみません。」

「いいえ、私も逃げ出したいところだし。」

雫が赤いイヤホンをオンにする。

「田野村さん。」

「確認した。なかなかだな。」

「ええ。」

雫がポケットからルーペを取り出し、右耳に掛ける。

レンズに情報の羅列が映され、雫が右目で情報を読んでいく。

(体長5m50cm、うわーゲージ表示55000。)

雫が思わず笑いだす。

「先週の子たちがMSHMTを使ってしまった気持ちはわかるわね。」

「でも先週はもう少し小さかったんじゃないの。」

「ええそうよ。それにしても5m50cmって、ビル3階分ぐらいの高さがあるんじゃない。」

雫が目を細める。

(頭頂部らしきところに二つ、首と胴体との継ぎ目のようなところに二つ、そしてこちらからははっきり見えないけど、おそらく背中に二つ、合計目が六つ。それぞれ瞳の色が違い、それぞれが全く違うパターンで動いている。)

「木漏れ日映像の合成できたぞ。」

「送ってください。」

「了解。」

さっきスマスたちが木の枝に固定した生命体反応指数の計測器、瑠璃湖を囲む360度すべてに設置しているため内蔵されているカメラの映像をMEMCが合成することで。

「やっぱり目が六つありますね。」

雫たちの右目のルーペにレッドネックの全体像が映される。

「どうする。」

「どうするもこうするも消滅させる他にありません。引き続きサポートをお願いします。」

(さっきから確実に目が合う回数が増えている。覚醒が始まってるのね。)

「みんなまだ平気よね。」

「もちろん。」

「オーケー、それなら始めるわよ。いいレッドネックには手足がない。それにおそらく瑠璃湖の中から出てくることもない。ということは。」

シーナが続きを引き継ぐ。

「逃げられる心配がなく戦闘エリアがかなり限定される。」

「そう。」

「ですがこのレッドネックには目が六つあり、死角と言える死角がありませんよ。」

「死角からの隙を突いた攻撃ができないとなると正面突破で体当たりをしないといけないね。」

「ええゲージも55000あるし。取り合えず私が一発やってみて効き目とゲイジの減り方を見ましょうか。」

その時だった。

レッドネックが低く大きく刺さるような声をあげた。

雫たちの付けているルーペのレッドネックモデルの体内に赤い部分が表示される。

「スパイラル密度の上昇。構えて攻撃が来る。」

雫が叫ぶと同時にレッドネックが長い首をぴんと伸ばし、口を大きく開ける。

「典型的な攻撃魔法ですね。」

MEMCで円動たちもレッドネックを凝視する。

レッドネックの開けた口からオレンジの光が見え始め、それはみるみるうちに大きくなり、一つの光線となって放出された。

(6時の方向、あそこの防衛魔法はスマスの担当ね。心配ないと思うけど。)

レッドネックが撃ち放った光線がスマスの張る防衛魔法と衝突する。

レッドネックの光線は途切れない。

「スマス持ちこたえられそう。」

スマスが瑠璃湖から南に向かう道の中央に立ち、防衛魔法をコントロールする。

「持たせるよ。このまま光線を突破させたら住宅地に直撃だからね。」

「よろしくね。」

雫がレッドネックをじーっと観察する。

(体皮に毒系統のスパイラルが付着しているわけではなさそうね。直接触れても大丈夫そう。攻撃系統の魔法も使うけど、攻撃の威力はともかくパターンは単純だからこうやって対処もしやすい。)

スマスとレッドネックの魔法比べは続いている。

「さすがにスタミナは有り余ってるんだね。仕方ないからお相手してあげよう。」

スマスが防衛魔法のレベルを上げる。

「この攻撃いつまで続くんだ。」

5時の辺りで糸奈がルーペを凝視する。

ルーペには赤く点滅した部分をまだ持っているレッドネックが映っている。

「スマス援護に行くよ。」

「いや糸奈はそのままそこに待機していてくれ。レッドネックが体制を変えた時にすぐ対応できるように。」

「わかった。」

 「どうしようかな。この攻撃が終わるまで私たちは動かない方がいいんだけど、レッドネックの意識があちらに向いているうちに終わらせてしまいたくもあって。」

ある意味の葛藤がある。

ここで雫たちが攻撃することでレッドネックの体制が変わり、それでもレッドネックが今の攻撃を続けた場合、レッドネックの攻撃がスマスが防衛魔法を張っているポイントからずれてしまう。

「雫指示を。」

Miraにせかされて雫が口を開く。

「サーバーはこのままレッドネックの攻撃を受け止めて。今回の一撃でわかったとおり、レッドネックの攻撃はかなり重いわ。油断しないように。次ホロアーはそのまま状況を注視して適宜行動して。最後に私たち戦闘員はこれからレッドネックへの攻撃を開始します。短距離からの直接攻撃を基本とし、私たちの攻撃がどれだけ通用するか試します。いうなれば、モニタリングの時間。全員レッドネックの戦闘パターンのデータが不十分だから、何があってもなんとか対応できるようにね。」

「はい。」

雫の合図でMiraたちが動き始めた。

湖に向かって一直線に走り、ジャンプしたまま空中に舞い上がったのはクシーだ。

右手にスパイラルで剣を作り、勢いよく切りかかっていく。

「攻撃魔法、「アクアカラーフラッシュ」。」

レッドネックの硬い表皮に当たった剣が激しく水色のスパイラル光を発する。

(クシーの剣でこれだけしか消化できないとは。)

雫が付けているルーペの数字が500程度しか下がらない。

戦闘に長けたクシーの攻撃なら1000から2000程度のダメージを与えたかった。

「あっ。」

雫の視線の端で球体のオレンジのスパイラルがレッドネックに直撃した。

シーナが木の陰からスパイラル弾を撃つ。

木と木の間を素早く動きながら瑠璃湖をぐるっと回るように撃って行く。

レッドネックは球を避けず、体で受け止める。

シーナが使っているのは魔道石内蔵型魔道拳銃IMSMG S 1,5式。

魔道拳銃内に魔道石を入れて使用者が消費するセルフスパイラル量を軽減させる。

またシーナのように戦闘魔法に特化していない魔道士でも放出するスパイラルを先頭に適した成分に変えられる。

(一発で150ぐらいか。足りない。)

「ホットリング。」

雫がぱっと顔を上げる。

Miraが10mの高さまで舞い上がり、魔法を宣言する。

するとレッドネックを中心に半径1mの周囲にオレンジの炎の円が出現した。

Miraが右手を右から左に動かすと円が縮まり、レッドネックに接した。

そこで右手を高く上げれば、炎の円がレッドネックを囲み大きく燃え上がる。

数秒でそれはすっと消えMiraが雫の隣に舞い降りた。

「今の出2600ってところね。」

「なかなかですね。」

「回復術を持ち合わせていなくて助かったわ。」

レッドネックが首をゆっくり持ち上げる。

「さっきと同じ攻撃が来るわ。サーバー構えて。」

雫がそれだけ言って高く舞い上がった。

「次は私の番ね。」

(今の攻撃の受け方でなんとなくわかった。この子も一般的なモンスターと同じで攻撃を受ければゲージが減るし攻撃の重さに対するゲージの減り方も一般的だ。シーナの銃よりクシーの剣、クシーの剣よりMiraの直接攻撃の方が受けているダメージが大きい。やっぱり直接魔道攻撃の方が効果があるわけだ。)

レッドネックが口を大きく開け、体内にスパイラルの高密度エリアが出現する。

「雫さん。」

MEMCで職員が声をあげる。

「大丈夫だ。何も問題ない。」

田野村が落ち着いた声で答える。

雫はレッドネックの顔の前まで行き、指を拡げた右手を前に突き出した。

息を吸い込み集中する。

(この迫力はなかなかね。)

目の前でレッドネックが大きな唸り声をあげる。

まもなく攻撃が放たれる合図だ。

しかし雫は怯まない。

「攻撃魔法アイスリリー。」

鋭い声で、冷たい声で雫が魔法を宣言すると、さっきまで唸り声をあげていたレッドネックがぴたりと止まった。

雫の手から放出される白く輝くスパイラルがレッドネックを覆っていく。

スパイラルが散布された空気中の温度が一気に下がっていく。

カチカチという音を立てながら空気が凍り付いていき、レッドネックを覆うように、氷の檻ができた。

檻の天辺がレッドネックの角の上でがちゃりと音を立てて固まったのを確認し、雫が口を開く。

「攻撃魔法ファイヤーリリー。」

次に雫の手から出てきたオレンジのスパイラルがさっきの逆で空気中の温度を上げ、氷の檻が一気に破壊されて、レッドネックを炎が襲う。

雫がぴゅーっとレッドネックと距離を取り、Miraの隣に戻ってきた。

「こういうのは勢いが大事だからね。」

雫がルーペを見る。

(これで2700、Miraの攻撃とほとんど変わらないわけね。今の1ターンでなんとか5500ってところか。)

レッドネックを覆っていた炎が少しずつ小さくなり、レッドネックと雫の目が合った。

「攻撃来るわよ。」

レッドネックが口から光線を発する。

さっきと同じ方向だ。

「スマス。」

「スタンバイならとっくにできてるよ。」

スマスが防衛魔法を強化する。

オレンジの光線がスマスの張る防衛魔法の緑の壁とぶつかってお互いのスパイラルが激しく弾けあう。

「今の攻撃を続ければあと10週ぐらいで倒せるかもしれないけど、それじゃしんどいわよね。」

「そうですね。」

「もう少し早く。」

雫が数秒間ぴくりとして動かなかった。

「よし。」

雫がほんの少し笑顔になる。

クシーとシーナがこの間も剣と銃で攻撃を続けている。

「クシー、シーナ、負担にならない範囲で攻撃を続けて。2人がスパイラル応用攻撃をしてくれてる間に私とMiraでスパイラル直接攻撃をするから。その間もしやりたくなったら声かけて。」

「了解。」

「Mira、リンク張って。」

「はい。」

雫とMiraがポケットからブレスレット型の機械を取り出し、雫が右腕にMiraが左腕に装着する。

この機械はブレスリンクだ。

「田野村さん、今からリンク張るのでホローお願いします。」

「了解。」

Miraと雫が声を合わせる。

「リンク。」

ブレスリンクが同じ色に光りだす。

「同系色リンク確認しました。シンクロ率85%って、すごい。」

円動のモニターに雫が付けるブレスリンクとMiraが付けるブレスリンクからの情報が表示される。

ブレスリンクを使うことでお互いのエントランスを繋ぎ魔道の威力向上を図るのだ。

エントランスとは魔道士の体内と外界でスパイラルのやり取りをするまさにスパイラルの出入り口のこと。

ブレスリンクは魔道士同士のエントランスを繋ぐサポートをする。

シンクロ率が高ければ高いほどその制度が上がる。

「シンクロ率更に上昇98.5%です。」

Miraと雫はリンクを繋ぎだして僅か数十秒でほぼ100%までシンクロ率を上げた。

「調子いいじゃない。」

「ええ。」

Miraと雫が対角線状に飛んで行く。

「我は聖なる女神ステファシーの末裔にして。」

「ロイヤルブラットが一つrain家の眷族なり。」

「光る花びらの舞によって夜空を照らし。」

「水の気泡が身を固める。」

「攻撃魔法「ゴールデンフラワーウォーター」。」

雫とMiraの中心にいるレッドネックは攻撃を続けている。

しかし、それにも構わずMiraと雫が攻撃を放つ。

雫の手から金色のスパイラルが花びらの形になって大量に飛んで行き、Miraの手から水色の球体のスパイラルが飛んで行く。

雫とMiraの攻撃がレッドネックの両サイドからぶつかる。

(3000ぐらいか。)

レッドネックが攻撃を停止し、雫と目を合わせる。

「嘘今終わったところなのに、もう次の高密度反応。」

蔵瀬が声をあげる。

「木漏れ日。」

田野村の声だ。

「わかってます。」

雫がレッドネックを見つめる。

(目から何か来る。)

「防衛魔法スモールボール。」

雫が右手を前に突き出し、そこからスパイラルの球体を作り、自分を包む。

「あれ私の後ろってメーラ。」

「そうよ。」

雫を見るレッドネックの二つの目から白い光線が2本発射される。

雫の作ったスモールボールに弾かれて光線がメーラの張る防衛魔法にぶつかる。

「お願いね。」

「重いって。」

メーラが防衛魔法を強める。

(口からだけじゃなく、目からも光線が出せるとは。)

雫がスモールボールを保ったままレッドネックに近づいて行く。

「雫。」

地面で待機しているクシーたちが雫を見上げる。

(このまま近づけるところまで近づいて、一撃を。)

右手でスモールボールを持続させ左手を軽くグーにする。

「攻撃魔法、プリズンソード。」

グーに下手をパーに死ながらレッドネックに向けると、鋭利なスパイラルがいくつもレッドネック目掛けて飛んで行く。

(当たるんだけど、思うほどゲージが下がらない。うーん、このまま続けて、約50000削った後で、完全消滅させるのに27500削らないといけないから、どうするかなあ。)

一通り攻撃を終え雫が地面に着陸した。

「一回攻撃を展開すると位置の変更ができないのかしら。」

雫がMiraを見る。

「わかりません。ただ確かにこれまでの3回の攻撃すべて位置が固定されていました。」

「攻撃も光線タイプのものしか出してこないし。」

雫が目を細める。

「雫よければ次は俺もやりたいな。」

「いいわよ。」

剣のスパイラルを消したクシーが左手にブレスリンクを装着する。

「Mira攻撃を続けて。」

「わかりました。」

雫とクシーが飛んで行く。

レッドネックの瞳からの攻撃はいったん落ち着いた。

「リンク。」

今度はクシーと雫のブレスリンクが同系色になる。

「リンク完了。」

円動の声を聞いて雫とクシーが宣言を始める。

「銀の剣が光を増して。」

「黒煙を一層強くする。」

「攻撃魔法、エクストラムスパード。」

雫の手から鋭いシルバーのスパイラルが放出され、クシーの手から黒い霧がレッドネックの視界を覆うように放出される。

レッドネックの視界を奪い、その間に雫のスパイラルが攻撃をするのだ。

すばしっこい相手には効果的だが、全く移動しないレッドネックに対してはあまり差がない。

「あっ。」

雫のルーペに赤いポイントが見えた。

「四つ目の攻撃来るわよ、構えて。」

次はレッドネックの背中についた目から光線が放たれた。

「彩都。」

「持たせるよー。」

(サーバーのスパイラル消費が早いわ。あまり長期戦に持ち込むべきではないか。)

雫が時計を見る。

(2時23分、対戦開始から10分で攻撃が4回、こちらが減らせたゲージは10000、単純計算で瀕死状態に持って行くのに子1時間はかかってしまう。そんなに持つわけがない。)

 リンクのホローとモニタリングを続けながら田野村が難しい顔をする。

「いまいち決め手に欠けるな。」

雫がレッドネックを凝視する。

(これ以上モニタリングに時間を使えない。本気で狩りに行かないと。)

雫がゆっくり息を吐く。

「全員に通達。現時刻を持ってレッドネックのモニタリングを終了。これより瀕死状態へ持って行くわ。使える支援グッツはすべて使って少しでも早くレッドネックを瀕死状態にすることを最優先します。サーバーは防衛魔法を続けて、消費が激しいと思うからホロアーにケアをしてもらいながら耐えて。レークはホロアーから戦闘員に変更。」

「へいへい。」

レークがリュックを背負いひょいっと雫たちの横に並んだ。

「では行きましょうか。」

「ねえ雫、5人で一回共同攻撃魔法作ろうよ。」

シーナがにこっと笑ってみせる。

雫がレッドネックに目をやると少し硬直していた。

「さっきの攻撃のリバウンドが来てるのね。いいわよ。」

5人が一斉に唱える。

「リンク。」

「5人でリンクですか。」

蔵瀬の声が裏返る。

「できなくはないからな。」

「それは理屈の上での話しです。普通3人以上のエントランスを繋ぐのは負担が大きいはずですよ。」

「あいつらには関係ないんだよ。」

ブレスリンクが同系色に光、雫たちが姿勢を整える。

「ねえ、スパイラル直接攻撃の威力向上でいいのよね。」

「はい。」

「じゃあ行くわよ。」

雫の合図でレークから詠唱を始める。

「我こそは偉大なる魔道士レークアラバー。我が求めに応じ対極たる水と炎のスパイラルが。」

「激しい気流に乗って直撃し。」

「その身に自然の脅威を思い知れ。」

「激しい脅威は圧倒的な凶器と化し。」

「その身を覆う。」

「攻撃魔法オリジナルマジオ。」

レッドネックを中心に放射線状に待機する5人の手から魔法が放たれそれがレッドネックの遥か上空で集合し、一気にレッドネックに降り注ぐ。

「これで1万ぐらいは。」

雫が目を疑った。

「これで9000しか減らないの。」

ゲージの数字は41000だ。

「雫気を付けて。」

Miraの声に雫がはっとする。

雫を正面に見る瞳の辺りに高スパイラル反応が出現した。

「私の後ろは。」

「僕だよ。」

スマスが少し緩めていた防衛魔法を張り直す。

「メーラ今の間に少し回復しよう。」

このバタバタの中木にもたれかかって少し息を切らせていたメーラにチコが駆けよる。

「チコありがとう。大丈夫よ。」

チコが魔道石をメーラに持たせ、両肩に手を当てる。

「回復魔法「ヒールスパイラル」。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。彩都のところにも行ってくるね。」

スマスとレッドネックの魔法合戦がまた始まった。

二つの魔道がぶつかり合う激しい音と、激しく飛び散るスパイラル光里が緊迫した状況を伝える。

「あと41000か。」

雫が自分の体内に意識を向ける。

(消せなくはないけど、後にスパイラルを残しておきたい。ここで無茶をするのは。)

「雫。」

シーナの声に雫がはっとする。

「私たちはみんなで一つのグループだから、無茶は考えないで。」

「よくわかってるわね。」

「さすがに6年の付き合いですから。」

「そう、それなら。」

雫がイヤホンに向かって話しかける。

「今と同じあるいはそれ以上の攻撃魔法を展開して5回の攻撃以内にレッドネックを瀕死状態にします。そのあと一気に消滅レベルの魔法を展開するので、その時はみんな協力してね。」

雫が4人を見る。

「よし行くわよ。」

その時だった。

モニター越しに蔵瀬が叫ぶ。

「6か所すべての目に高スパイラル反応。」

すぐに気づいた雫が叫ぶ。

「All member save yourself。」

「「タワーウォールスリーマックス」。」

スマスたちが最も強固な防衛魔法を宣言する。

戦闘員とホロアーは自分の周りを防衛魔法で覆った。

大きすぎる唸り声の後、レッドネックの背中側と角側から放出された四つの光線はスマスたちが張った防衛魔法にぶつかり、首の付け根辺りについた目から放出された光線は雫を直撃した。

(ここにいたのが私だけでよかった。避けきれなかったのはミスね。)

雫が防衛魔法を展開したまま上空に舞い上がり、レッドネックに気づかれないよう木の間に隠れる。

「ふうっ。まさか一回で6発も光線を同時に撃てるとは恐れいる。全員無事。」

「取りあえず。」

「雫きつい。」

メーラの声だった。

雫がぱっとメーラが決壊を張る方角に目をやる。

肉眼では確認できないが魔道とスパイラルの動きは感じられる。

「糸奈。」

「今向かってる。」

糸奈が全速力でメーラが防衛魔法を展開する方角へ向かいメーラの防衛魔法に被せる形で魔法を展開する。

「急ぐわよ、サーバーのみんなが持ちこたえてくれてるうちに。」

「はい。」

5人がまた声を揃える。

「リンク。」

戦闘員のブレスリンクが同系色に輝く。

「5人のシンクロ率80%を突破。すごい。」

リンクを合わせる人数が増えれば増えるほどシンクロ率を保つのは困難になるのがセオリーだ。

5人となると50%にも行かないのが普通。

それを雫たちは圧倒的に上回っている。

「宣言してる時間がもったいないわ。攻撃魔法オリジナルマジオ「フィフスソード」スタンバイ。」

5人が矢を構える体制になると、スパイラルでできた弓が巨大化し、その輝きを増していく。

「カウントダウン開始。」

田野村が大きめの声で始める。

「5、4、3、2、1。」

「ゴー。」

Miraの矢は金色、クシーの矢はシルバー、シーナの矢はオレンジ、レークの矢は水色とオレンジが半分ずつ、雫の矢は七色に輝く太陽色、5本の矢がレッドネックに突き刺さる。

レッドネックが大きな唸り声をあげ、報復措置と言わんばかりの高スパイラル密度エリアを出現させる。

「今度はどこから。」

雫がレッドネックを肉眼で注視する。

「正面よスマス。」

「はいはい。」

「スマス持ちこたえて、すぐ次の攻撃を撃つから。」

(今のが思いのほか効いた11000叩けた。あと25000。)

雫が叫ぶ。

「攻撃魔法オリジナルマジオ「フィフスストーム。スタンバイ。」

両手を正面に出し、掌の前にスパイラルで渦を作っていく。

「5、4、3、2、1。」

「ゴー。」

田野村のカウントダウンに合わせ雫たちが一斉に魔法を放つ。

強大な魔道には必ず放った本人にリバウンドが返ってくる。

当然5人にもリバウンドはあって、さっきから半分息が切れている。

魔道を出すこと自体はなんの問題もないのだ。

これだけ連続してこの威力の魔道を使うことに限界がある。

だがそんなことに構っていられない。

サーバーはさっきからずっと強度トップクラスの防衛魔法を展開しっぱなしなのだから。

「早く終わらせないと。」

雫が息つく暇もなく指示を出す。

「全員持っている「ストーンストックネックレス」を使って。次行くわよ。」

Miraたちが首に少し大きめのリングを嵌める。

ネックレスタイプのこのリングに等間隔に魔道石が取り付けられている。

「魔道石アシストフルオープン。」

雫も同じものを付けこう宣言するとネックレス型の機械に付けられた魔道石がすべて光始める。

これは魔道石を使用し、魔道士をアシストする機械で名前は「ストーンストックネックレス」。

(一度で21000、一気に叩いてしまいたい。よし。)

雫が息を吸い込んだ。

「この5人で出せる最も強力な技で一気に仕留めてもいい。」

「雫の望むがままに。」

「あー、今はそれを使うべき時だ。」

「異論ありません。」

「しゃーねーなあ。」

「よしありがとう。」

雫の目つきが変わる。

「リンク再シンクロを開始。」

「「リンク再シンクロ開始。」

雫の声を聞き、Miraたちも宣言をする。

「5人のリンク再シンクロ作業開始。」

モニターに移された横棒があっという間にいっぱいになる。

「完了シンクロ率95.8%。」

イヤホン越しにその声を聞き雫が叫ぶ。

「合同攻撃魔法「オリジナルマジオフルスパイラルプラネット」スタンバイ。」

「まて木漏れ日。」

「大丈夫ですよ。」

雫が体制を変える。

Miraたちも同じ姿勢を取る。

レッドネックはまた大きな攻撃の準備を始めていた。

「ごめん、もう君は攻撃できないよ。」

「木漏れ日やめろ。おまえだけじゃないんだろ。」

「チーフ大丈夫です。」

「私たちも承認のうえですよ。」

「こうすれば一発で瀕死状態まで持って行けるからな。」

「本当に無茶だと思うなら絶対にやりません。それが僕らの決まりですから。」

「そういうことです。カウントダウンを。」

雫たちの掌の前に巨大なスパイラルの球体ができていく。

「わかった。カウントダウン開始。」

地上でスマスたちも雫たちを見上げる。

MEMCでも職員が手を止めてメインモニターを見る。

「5、4、3、2、1。」

「ゴー。」

雫たち5人が天高く舞い上がりレッドネックの遥か上空でスパイラルでできた球体を融合させ、一気に手を下に降ろせばレッドネックに直撃する。

「衝撃波に備えなさい。」

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