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レークと雫の三者面談(1)

          1

 ミーティングを終え、レークたちを送り出してから30分が経った8時45分ごろ、私が今月の魔道物資の購入に使ったお金の会計簿を作っていると、携帯に電話がかかってきた。

「上手でて。」

「はい。」

後ろに向かって声を飛ばすと、後ろのデスクで仕事をしていた上手がぱっと席を立って私のスマホを手に取る。

「はいお待たせいたしました。」

上手がしばらく電話対応をした後私の肩を叩いた。

「雫さま。」

「なに?」

「「舞薔薇(まいばら)」先生からです。」

「舞薔薇先生?」

舞薔薇先生はレークの担任だ。

「お電話変わりました。木漏れ日です。」

「おはようございます。舞薔薇です。」

舞薔薇先生は30代前半ぐらいの女性の先生で、声が少し低く、そのせいで若干怖く見えてしまう。

ここの専門学校に勤務して10年程度になるらしい。

レークはいつも舞薔薇先生のことを嫌っていた。

「本日9時より面談のお約束をしておりましたが、おこしいただけそうでしょうか?」

忘れていた。

すっかり忘れていた。

10時からの会議の準備物は出来上がっているから行けなくはないが、心の準備ができていない。

「はい、問題ございません。お時間を取っていただきありがとうございます。9時ごろに正門で待ち合わせていただいてもよろしいでしょうか?学園内の地図に疎いもので。」

「了解しました。それでは9時ごろに正門前でお待ちしております。」

「はい、失礼いたします。」

電話を切った後私はその場に突っ伏した。

「申し訳ありません。わたくしが面談のスケジュールを見落としておりました。」

「いいえ、上手は知らないと思うわ。たぶん言い忘れてたの。それに、今回の面談はかなりむりやりセッティングされたのよ。」

私が机に頭をこすりつけていると糸奈が私に声をかけた。

「レークの担任の先生って面談多くない?」

「私もそれは思います。」

Miraも会話に入ってきた。

「多いわよ。毎月セッティングされるの。」

「メーラやシーナのところはどうなんだい?」

スマスが聞いてきた。

「メーラは何かあった時だけね。シーナに関しては毎学期に一回だけよ。」

「レークが問題児だからじゃないの。」

クシーがレークの席を見る。

机の上が乱雑すぎて目の当てようがない。

「いや、問題児ではあるけれど、学園でトラブルを起こすタイプの問題児じゃないから。」

「たしかに。」

チコが頷く。

「たぶん、舞薔薇先生の考え方がこうさせてるのよ。」

「どういうことだい?」

「メーラやシーナの担任の先生は学生が魔道良に所属して仕事をすることに理解があるわ。だから、1週間に1回必ずどこかの授業に出ていれば何も言わないし、むしろ二人のことを気に掛けてくれている。でも、舞薔薇先生は違うのよ。学生の本文は学業であって、魔道良で働くことではないと思ってる。だから、レークがほとんど学校に行かなかった週はメールが送られてくるし、グループリーダーである私がレークに甘いからレークが学校に行かないと思ってるみたいよ。」

「逆だよ。雫はあんなに嫌がるレークを容赦なく学校に行かせてる。それに、レークの成績が悪いのはレークのせいだよ。雫も私たちもみんな勉強は教えてるもん。」

「チコその通りだね。」

彩都が頷いた。

「とにかく行くしかないわねえ。あー。」

私は席を立って洗面台に向かった。

「どこ行くのー?」

「洗面台でメークなおさなきゃ。」

「ねえ雫。」

洗面台で鏡を見ながら、アイラインを入れていると後ろにMiraが来た。

「なに?」

「舞薔薇先生に何か要求をされたことはありますか?」

「あるわよ。」

「具体的には。」

「レークの魔道良解雇。」

その声はほかのグループメイトたちにも聞こえていたようで一気に視線が増えた気がする。

「メークしたら戻るから、詳しくはその時に。」

「ええ。」

あまり時間がないので、部屋に戻って荷物をまとめながら話した。

「さっきのこと本当かい。」

スマスが私を見る。

「ええ本当よ。学生の本分はあくまで学習にある。魔道良には専門学校でたくさんの知識を得て、学生らしい経験を積んでから入ればいいって。これ以上成績が落ちるのであれば学園から魔道良にレークの解雇を要請するって言われたわ。」

「おかしいよ。」

糸奈の声が大きくなった。

「ええ、おかしいです。魔道良に要請しても断られるのに。」

「話を聞く限り、舞薔薇先生は少し思想に偏りのある先生だと思うが。」

「ええそうよ。これ以上状況がひどくなるなら然るべき措置を取ろうと思っているわ。」

部屋の空気が重くなる。

「レークには伝えてる?」

彩都が私を見る。

「いいえ、これを言ったら本人が学校に行かなくなる気がする。」

「たしかに。」

クシーが頷く。

「難しい年齢ですね。男の子ですし。」

「ええ。」

私は上手を見た。

「準備はできているわね。」

「はい。」

「なら行きましょう。」

私は入り口の前で部屋を振り返った。

「たぶんこのまま10時からの打ち合わせに行くわ。また12時ぐらいに戻ってくるから。」

「はい。」

グループメイトに手を振って私は部屋を出た。

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