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ノーエルへの訪問(8)

8

 たくさんの患者さんに治癒魔法を使ってへろへろになった。

「大丈夫。」

「うんサラサ先生。」

私はエントランスのソファーに座った。

「もうすぐ松葉先生も来るはずよ。」

「うん。」

夕方の赤いお日様が医療院の中に差し込んできている。

「みんな早く治るといいなあ。」

「うん、チコちゃんが治癒魔法を使ってくれたんだもの。きっと治るわ。」

(眠い。)

私はそのまま隣に座るサラサ先生の肩にもたれかかった。

「眠くなっちゃった。」

「うん。」

「松葉先生が来たら起こしてあげるから、少し休んで。」

「うん。」

 「ここどこ。」

「医療院からの帰り道だよ。こんなになるまで無理をしちゃだめだろ。」

ゆっくり目を開けると糸奈の顔がすぐ近くにあった。

「あっ、糸奈だ。」

私は糸奈の両頬に両手を当てる。

「何するの。」

「だめ。」

「いいよ。」

私は糸奈の頬をつんつんする。

「どうしたの。」

「うーん。」

「何もないのにそんなにつんつんされたら痛いよ。」

「痛くないはずだよ。」

「どうしてそう思うの。」

「痛くしてないもん。」

糸奈が困ったように笑いながら私を見下ろす。

「糸奈ごめんね。」

「なんのこと。」

「お昼間、糸奈にひどいこと言っちゃった。」

「気にしてないよ。僕ももう少しきちんと気持ちを伝えられればよかったんだと思う。ごめんな。」

「いいよ。」

にこにこしているとまた眠くなってきた。

「いいよ宿舎に着いたらそのまま寝室に連れていくから、もう眠って。」

「ありがとう。」

糸奈にお姫様抱っこされたまま宿舎まで連れて行ってもらって次に目が覚めたのは柔らかいお布団の中だった。

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