ナント王国王妃と雫(19)
19
アラームの5分前に目が覚めた。
(何時。)
私は左手をスマホに伸ばす。
(5時25分、完璧ね。)
私はアラームを解除して、ゆっくり体を起こす。
(よく寝てるなあ。今なら帰れるわ。)
私は靴を履き、カバンを持って王妃を見た。
(ここに置き土産の魔道石を置いていきますね。今日は本当に楽しかったです。また
来年ぐらいに必ず会いましょう。楽しみにしていますよ。お体に気を付けて。)
私は自分の寝ていた枕にレッドアイのルビーを置いて、その横に魔法の輝きで文字を
書いた。
(では失礼いたします。)
私は扉のほうへ進み、音を立てずにそっと開けて部屋を出た。もう1時間もすれば
王妃は起きる。いつも見送ろうとしてくれるが、この1時間があるかないかでずいぶん
変わるから、いつも寝てもらう様にしていた。
(今回は王妃がこの服をくれてよかったわ。着替えずにすんだし。)
私は昨日の夜、お風呂上りに王妃からもらった部屋着のまま部屋を出てきた。
「大丈夫よ。部屋着と言ってもりっぱなブランドのものだから、そのまま外に出ても
問題ないわ。明日はこれを着たまま帰りなさいよ。」
王妃の気遣いに感謝しながら、私はエレベーターで1階に下りて、エントランスから
外に出る。
(あの晩餐会の後、半年でアメリ王女がなくなって、たまたま近くにいた私が王妃を
訪ねたから、今のような関係性になったんだよね。)
「さてと。」
8月25日木曜日朝5時35分、今日も外はいい天気で暑くなることは天気予報を見なくても
察しがついた。
「今日も暑くなるわね。」
このホテルが建つ道は、大通りで、この時間はトラックや重機が多く走っている。
(さあどうやって帰るかな。飛んで帰るか、電車で帰るか。)
ここから飛んで帰れば、20分ぐらい、電車で帰れば30分ぐらいといったところだ。
(飛んで帰りましょうか。急ぎの用事はたまってるし、今日の準備も今からしないと
いけないし。)
私は歩行者や自転車がいないことを確認してフェザードを拡げて舞い上がった。
(さっさと帰ってお仕事お仕事。)




