ナント王国王妃と雫(4)
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「失礼いたします。ノンフェリーゼノースエリア担当魔道警備局より派遣されました。23グループ所属、木漏れ日雫と申します。」
舞踏会当日、会場になる王級に到着すると、使用人の人が派遣魔道士の集合場所まで案内してくれた。
「こちらへご案内いたします。」
私は、使用人の女性の後ろを歩いていく。
(綺麗に制服を着こなしている。髪も乱れていないし、立ち居振る舞いにしながある。やっぱり王室の使用人は格が違うわね。)
集合場所につくと一つのテーブルを6から8客程度の椅子が囲み、魔道士たちが自由に座り、軽食を摂りながら、談笑していた。
「おかけいただく前に、本日の警備担当責任者のところへご案内させていただきます。」
「よろしくお願いします。」
使用人の女性に連れられて、部屋の奥へと進みながら、私は周りに座る魔道士を見る。
(男女比率は男性6に女性が4。年齢はさまざまだけど、やっぱり30代の人が多いわね。魔道士としての能力も高い人たちばかり。でも。)
「クーネル警備担当責任者、ノンフェリーゼノースエリア担当魔道警備局よりおこしくださいました、木漏れ日雫さんです。」
使用人の声を聴いてこちらを振り返ったクーネルという男性は、がっちりとした体格の長身の男性だった。
年齢は40代前半といったところだろう。
「ようこそおいでくださった、魔道士木漏れ日雫。」
「今回のナント王国王妃主催王級舞踏会の警備任務に派遣されました。ノンフェリーゼノースエリア担当魔道警備局23グループ所属木漏れ日雫と申します。よろしくお願いいたします。」
私とクーネルは簡単な握手を交わした。
「後は俺が案内しよう。自分の仕事に戻りたまえ。」
「それでは失礼いたします。」
使用人の女性が離れて行った後、クーネルが私を見た。
「ぶしつけな質問かもしれないが、魔道士木漏れ日はいくつだね。」
「堅苦しい社交名は必要ありません。どうぞ木漏れ日とお呼びください。わたくしは現在21歳です。」
「その若さで、ノンフェリーゼの警備局に所属しているとは、よほど優秀なのだろう。今回の任務は警備レベル1公式警備だ。王妃のお傍で、王妃の安全と命を守るため、その身を挺してもらうことになるが、その覚悟はあるかね。」
「はい、任務に命を捧げることは常であり、今更それに恐れや迷いはありません。」
「いい返事だ。私は君を信頼しよう。木漏れ日にとって今回の任務が実りの多い物になるよう、私は尽力する。ゆえに木漏れ日は、王妃の安全と命を守ることに全力を尽くし、今回の任務から多くを得ようと努力してほしい。」
「承知いたしました。」
挨拶を終えて、私は空いていた椅子に座った。
すでにそのテーブルには6名の魔道士がいて、私はその談笑の輪の中に入っていく形になった。
「失礼いたします。ここに座らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
どう見ても、私より年上の魔道士たちのテーブルだ。
「あなた若いわね。いくつ?」
私の正面に座る女性魔道士が私を見る。
「21です。」
「所属は?」
茶髪の男性魔道士が私の方を見た。
「ノンフェリーゼの魔道警備局です。」
「ノンフェリーゼの。優秀なのね。」
「とんでもありません。」
私は首を振って、カバンを足元に置いた。
「みなさんは何を待っておいでなのですか?」
「あー、これは王妃への面会待ち。」
「王妃への?」
「そう、一応王妃の傍で警備をする私たちは、一度王妃に顔を見せておいた方がいいだろうってことで、面会を予定しているんだけど、王妃が忙しくてなかなか準備ができないんですって。だから、王妃との面会を待ってるの。この後の予定は。」
「喋りすぎよ。そこまで彼女は求めていないわ。」
「あー、いえ。ぜひお聞かせください。」
最初は近寄りがたい空気を放っているように感じたこのテーブルも、こうして話していると、意外と関わりやすい人たちの集まりだということがわかってきた。
性別、年齢、現在担当している仕事の内容まで、全く違う7人が集まったからこそ、貴重な話がいくつも聞けた。
先輩の話が聞けたことで、自分の将来のビジョンだって少し見えたほどだ。
(来てよかった。もう十分勉強させてもらったわ。)




