ナント王国王ひと雫(2)
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王妃が眠りについた後、私は自分の枕に頭を乗せて、あおむけに横になった。
天井をきらきらとした星屑が漂っている。
(疲れた。2日か3日徹夜しているとさすがにきついわね。)
私は王妃を見る。
すやすやと眠っていた。
この寝顔からは、外交の場面で王妃が見せるような凛とした表情は予想もできない。
(思っていたより、早く寝てくれたわね。さすがに王妃も疲れてるんだろうなあ。まだ3時半だし。)
私は頭もとに置いたスマホを見る。
あちこちから連絡が来ているが、今は返す気力が残っていない。
(明日まとめて処理しよう。)
私は5時半にアラームをセットして、王妃の右手を握った。
(あとはこの右手から東映魔法で思い出を見せれば、それで終わりかな。あっ、お土産どうしよう。今日は何の準備もしてないわよね。)
私は持ってきている革製のカバンに左手を伸ばす。
(何かあったかなあ?)
カバンの正面のチャックを開けて、中に手を入れると、硬いものに手が当たった。
(なに?)
左手でそれを持ち上げてはっとした。
(魔道石、レッドアイのルビー。あー。)
すっかり忘れていた。
(先週末にこうなることを予想して、カバンに入れておいたんだ。すっかり忘れてた。)
これだけ二人が多忙だと、まともにさよならなんてできない。
ここ数年は、いつも王妃が寝ている間に私が部屋を出てばかりで、王妃が目覚めたときに寂しくならないよう、何か置き土産を残すことが定番になった。
今日はこれを置いて行こう。
レッドアイのルビーの石言葉は「いつまでもお傍に。」だ。
(喜んでくれるかなあ。)
私は忘れないよう
に、自分の枕に魔道石を置いて目を閉じた。
(東映魔法、メモリアルドリーム。)
魔法を唱えてから、私も速攻で眠りに落ちた。これで王妃と同じ夢を見ることができる。




