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ナント王国王妃来航国賓晩餐会(20)

20

5時55分、ホールのエントランスで糸奈たちが警備任務に当たっていた。

(変な人はいないよ。)

チコがMiraに報告する。

(そうですか、他のみなさんはどうですか?)

エントランスホールにはMiraたち以外にもたくさんの警備員がいる。

Miraは意識的にグループメートたちにだけ届くようなエスパー魔法を飛ばした。

(問題ないよ。)

(こっちもだ。)

(暇なんだが。)

(わかりました。。)

Miraのいる位置は正面で手荷物検査を終えた人たちが会場に入ってくる場所だ。

美しいドレスやタキシードスーツに身を包んだ人たちが次から次へとホールに向かっていく。

(いつも思いますが、これだけたくさんの人がよく集まるものですね。)

Miraが左目で普通の景色を見ながら右目で魔道金属の探知を行っていると、若い男性が声をかけてきた。

「申し訳ないが、一つ尋ねてもいいだろうか?」

「はい。」

Miraが男性と目を合わせる。

「お手洗いの場所がわからなくて。」

「お手洗いでしたら、廊下を奥に進んでいただき右側の突き当りにございます。」

「ありがとう。」

Miraたちの服装はホールの従業員とほとんど変わらない。

ゲストたちでは区別がつかず、こうして聞かれることはざらにあり、最初から聞かれることを想定して、ホール内の地図やタイムテーブルを頭に入れていた。

(あの人。)

Miraが歩き出した。

(魔道金属反応があります。医療的治療の装具ではありませんね。スマス、反対側から見ていてもらってもいいですか?)

(了解。)

人の流れをすうっと分けながら、Miraが魔道金属の反応があった人物に近づいて行く。

Miraは赤いドレスに白いレースの飾りがふんだんにあしらわれた衣装をまとう少し高齢のマダムに声をかけた。

「ごきげんよう、マダム。」

Miraがマダムの後ろから声をかけて呼び止める。

「どうなさって。」

「失礼ですが、ネックレスに魔道金属の反応がありました。少しお見せいただけないでしょうか?」

「どうぞ。」

「失礼いたします。」

マダムからネックレスを両手で受け取り、Miraが精密魔法を掛けて調べる。

「ありがとうございました。お返しいたします。」

「どうも。」

マダムがMiraに背を向けて歩き出した。

(問題なかったのかい?)

(ええ、装飾品としての魔道金属でした。)

(了解。)

こういうことはよくある。

魔道金属を会場内へ持ち込むことは禁止されているが、装飾品の中に魔道金属が含まれていることはよくあるし、美しいため人気もある。

こういう立派な晩餐会などでは、どれだけの魔道金属を身にまとっているかが一種のステータスになるぐらいだ。

その反面、魔道金属を持っていれば犯罪を犯せるような魔道を使うこともできるため、未だに装飾品と医療的治療に必要な装具以外は持ち込みが禁止されていて、こうしてMiraたちが魔道金属探知魔法を使って1人1人見ていくしかないのだ。

(次は?)

こうして入場客が落ち着くまでの時間頑張って、一通り落ち着けば、あとは退場の時間まで何もない。

警備レベル4会場内公式警備は涼しい空調の効いたエントランスで姿勢よく立っていれば、それでいい。

(18時10分ですか。晩餐会の終了が21時ですから、あと3時間程度は小休止が取れそうですね。)

18時半を回り、人の流れがずいぶん落ち着いたところでMiraたちは一度合流した。

「この後は退場の時間までエントランスホールの警備だけだよ。報告書を書きながら警備に当たってもいいし、任務が終わったら直帰できるように準備をしておこう。」

「はーい。」

スマスの指示に全員が返事をした後、チコがメーラの腕を引っ張った。

「何?」

「雫もこっちにいれば、楽だったのにねぇ。」

「そうね。今頃何してるかしら?」

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