ナント王国王日来航国賓晩餐会(19)
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(よかった。)
雫もNeumanも同じことを考えていた。
「畏まりました。それでは準備をいたしましょう。」
「うん。」
Neumanが王子のカバンを持って来る。
王子が走ってNeumanのところへ行った。
(宝探しの地図と課題はどんなものになっているのかしら?)
Neumanのことだから、ほとんどの準備を済ませているだろうと見切った雫は王子が机の上に置いた宝の地図をもう一度見た。
(マークから推測するに、魔道を使わなくてもできる課題でしょうね。)
雫はNeumanを見る。
「少し席を外してもよろしいですか?」
「はい。」
「ありがとうございます。すぐに戻ります。」
雫は部屋を出て、さっき鞄を預けた使用人を見た。
「お呼びでしょうか。」
「はい。みなさんは今回の宝探しのことをご存じですか?」
「はい。」
「ではNeumanさんがポイントごとに考えた課題の内容もご存じですか?」
「はい。」
「その内容を変更したいのです。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
女性がポケットに入れていた大量のメモ用紙から1枚抜き取って雫に差し出した。
「こちらがNeuman執事がお決めになられた今回の課題です。」
「拝見します。」
雫が一つずつ目を通していく。
「なるほど。今から私が新しい課題内容をご提案します。可能な範囲で準備をしてください。Neumanさんには私から許可をもらいます。」
「畏まりました。」
(せっかく魔道を使えることがわかって、本人も前向きになっているのだから、魔道に関連した課題内容にするのも悪くない。)
雫は新しい課題内容を書いて、使用人の女性に渡した。
「あとこの紙をNeumanさんが部屋から出てきたら渡してもらえますか?」
「はい。」
雫はどういう課題内容に変更したのか、その理由、今後の流れなどをまとめたメモ書きを使用人に渡した。
「そういえば、Neumanさんは晩餐会会場での課題は特に指定されなかったのですね?」
「はい、王子が会場に入ることができれば、それでいいとおっしゃいました。」
「なるほど。」
雫は少し考えてからさっきNeuman宛に書いたメモ書きを一度返してもらい、追加の質問を書いた。
「これを渡してください。」
「畏まりました。」
部屋に帰ると王子が地図をじーっと見ていた。
後ろでNeumanが準備をしている。
「Neumanさん。」
「はい。」
「外で使用人の方が呼んでいましたよ。今夜の宿泊先に着いて相談したいそうです。」
「わかりました。」
(外にいる使用人にメモ書きを渡しています。目を通しておいてください。それから、宝探しの準備が整ってから戻ってきていただけませんか?Neumanさんが戻ってきたら出発することにしますから。)
エスパー魔法で雫が声をかけると察しのいいNeumanは部屋を出て行った。
王子が珍しく気づいていない。
「王子。」
「なあに?」
「準備は整いましたか?」
「うん。」
「では、Neumanさんが戻ってきたら出発しましょう。」
「うん。」
「それまでどうされますか?」
「これを見ながら待ってるよ。」
「畏まりました。」
Neumanが戻ってきたのは18時半を回ってからだった。
(準備は整いましたか?)
Neumanに雫がエスパー魔法を飛ばす。
Neumanが頷いた。
(では、もう出発してもよろしいですね?)
Neumanがもう一度頷く。
雫は王子を見た。
さっきからずっと地図を見ている。
(18時半を回ってる。ゲストの入場は既に終わっているわね。今からなら部屋の外に出ても問題はないでしょう。)
雫は王子に話しかける。
「王子、お待たせいたしました。まいりましょう。」
「うん。」
王子が地図をしっかり握って、扉の方へ歩いていく。
「王子。」
雫がはっと思い出して声をかけた。
「なあに?」
「私とNeumanさんは本日王子の後ろをついてまいります。先頭をしっかり歩いてください。回るコースも王子にお任せいたします。」
「わかった。」
雫がNeumanを見る。
(なぜですかと顔に書いてありますね。王子の意思を尊重すると共に、積極性を養うためです。それに、後ろから周りを見ていた方が警備がしやすいので。)
Neumanが一瞬雫を見た。
「開けるよ。」
「どうぞ。」




