ナント王国王妃来航国賓晩餐会(18)
18
雫が話題を本題に戻した。
「あー、そうなのです。王子宛にこのようなものが届いておりました。」
Neumanが王子に不思議な絵の封筒を渡す。
「開けてみてください。」
王子が指先に魔道で作った鋭い結晶で封筒を開けた。
(本当にどれだけの魔道が使えるのかしら?)
感心する雫とNeumanの顔が対照的だった。
「読めますか?」
雫が王子に聞く。
「うん、読めるよ。」
「読んで聞かせていただけませんか?」
Neumanが頼むと、王子がゆっくり読み始めた。
「ようこそラニ王子。このホールには王子に楽しんでいただくための仕掛けが施されております。王子はその仕掛けをクリアしながら宝物を見つけ出してください。」
王子が読み終えて雫を見る。
「きっとお城の人が考えたんだよ。気を遣わせちゃった。」
(何歳よ。)
雫が苦笑いを浮かべて首を振った。
「本当にそうでしょうか?王子はお部屋の中で過ごす方が好きだということぐらい、お城の使用人であれば知っているでしょう。」
「いや、そうとも限らないよ。みんなほかの兄弟のことで両手がいっぱいだから、僕のことなんて見てない。」
「それは違いますよ。」
Neumanが王子に話しかける。
「わたくしは王子のことしか見ておりません。他の使用人も王子のことをちゃんと見ております。たしかに、王子のお兄様やお姉様の身の回りのお世話も我々の仕事ですが、それと同じように王子の身の回りのお世話だってわたくしたちの仕事です。」
雫が頷く。
「それに、私は少なくともお城の使用人が王子に気を遣ってやっているとは思えません。むしろ、王妃のお考えではないでしょうか?」
「お母様の?」
さっきまでの王子の冷めた声から、少し弾んだ声に変わった。
「はい、せっかくMYに来た王子に一つぐらいは楽しい思い出を作ってほしいと思われたのではないでしょうか。」
雫がさらさらと嘘を並べて王子に話す。
「お母様。」
王子が封筒を手に取る。
(後で口裏合わせをしましょう。)
雫がNeumanにエスパー魔法で話しかける。
「王子、中にまだ何か入っているのではないですか?」
「本当だ。これなんだろう。」
王子が雫に封筒に入っていたもう1枚の紙を見せる。
「地図でしょうか?」
「地図。」
「今回の任務のためにわたくしが覚えたこのホールの間取りに類似していますよ。」
「じゃあ、このマークのところを回って行けばいいんだね。」
「きっとそうですね。どうなさいますか?やってみますか?」
雫が首をかしげると、王子が手紙と地図を順番に見て頷いた。
「やるよ。お母様が考えてくれたことだから。」




