ナント王国王妃来航国賓晩餐会(17)
17
「王子、どうなさいましたか?」
Neumanが慌てて王子に駆け寄って王子の涙を拭う。
「いったい何があったのですか?」
Neumanの目には雫が何かしたのではないかという警戒の色と、それとは逆に、何か王子の心を動かすことができたのかという期待の色が混じっていた。
「王子、自分で話す練習です。Neumanさんにお話しできますか?」
王子が首を振った。
「わかりました。」
雫が頷いてNeumanに事のすべてを話す。
「王子は魔道適性をお持ちです。」
「魔道適性ですか?」
「はい。一つ気になったのですが、ナント王国の王族の皆様は魔道適性のあるなしを調べるための検査を行わないのですか?」
「はい。」
「帰ったらすぐにでも適性を検査してみてください。きっと、とても優秀な魔道適性の反応が見られると思います。」
「王子が魔道適性を持っている。」
「ええ、王子は魔道というものを知りませんでした。ですから、自分は普通の人が持っていない不思議な力を持っていると思っていらっしゃったのです。そして、自分が人が持たない不思議な力を持っていると言う勇気はありませんでした。」
「だから自分の不思議な力がばれないように人と話さなかったと。」
「おそらく。」
王子が横で小さく頷きながら話を聞いていた。
「そうですよね?王子。」
雫が話しかけると王子が小さく頷いた。
「大丈夫です。Neumanさんも今は驚いていますが、王子を嫌ったわけではありません。驚いているだけです。もう少しすれば、とても嬉しそうな顔をしてくれますよ。」
雫が微笑みかけるとNeumanが慌てて頷いた。
「ラニ王子、失礼いたしました。わたくしは王子を嫌ったわけではありません。王子が魔道適性をお持ちでいらっしゃることに心よりお喜び申し上げます。」
「ねぇ。」
雫が王子に微笑みかけると王子が嬉しそうに頷いた。
「お母様喜んでくれる?」
Neumanの目がぱっと開いた。
(王子のちゃんとした言葉なんて初めて聞いたな。)
「はい、お喜びになりますよ。」
雫が頷いた。
「でも話せない。」
「なぜですか?」
「どうやってお母様と話したらいいのかわからない。」
(たしかにそうか。ほとんど人と会話をしたことがないのに、これだけ話せていることが不思議なぐらいだ。)
雫は王子を見た。
「急がなくていいですよ。少しずつ話せるようになりましょう。」
「少しずつ?」
「はい、急がば回れという言葉もあります。王子には王子のペースがあるのですから、急ぐ必要はありません。周りのお友達がたくさんお話をしているから、王子も頑張らなければならないというわけではないのです。」
雫が王子の目の高さにしゃがんで微笑んだ。
(私と話したいのですか?今は王子を1人にしない方がいいと思いますが。)
雫はNeumanの視線に気づき、エスパー魔法で答えた。
(そろそろ話題を変えてもよさそうね。)
雫が王子の顔とNeumanの顔と、時計を見て判断する。
「そういえば、Neumanさん、さきほど王子あてに封筒を受け取ったとおっしゃっていませんでしたか?」




