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ナント王国王妃来航国賓晩餐会(16)

16

王子が誰かとコミュニケーションを取ろうとしたことなんて今までになかった。

だから本当に困惑した。

「王子が心を開いた」

王妃が信頼を置いている方なのだから、俺が疑う権利はないとは思っていたが、王子まで彼女に気を許すとは思わなかった。

「悔しいなぁ。」

今までずっと王子のお傍に仕えてきた俺よりも先に彼女に王子が心を開いたことに少し悔しさを感じながら、俺は目を閉じた。

いろいろな記憶が蘇る。

王子は今の王妃と王の間に生まれた1人目の子供だ。

王妃の再婚は2回目で今の王は王妃の3人目の夫に当たる。

俺は大学卒業後ナント王国王室の使用人として雇われ、王女や王子のお世話をしていた。

元気で優しく聡明な子供たちの身の回りのお世話をしながら、成長していく子供たちの姿を見ることが毎日の楽しみだった。

すくすくと成長する子供たちに関われることを光栄に思っていた。

そんな時、俺は使用人総長に呼び出された。

「今王妃が妊娠されていることは知っているな。」

「はい。」

「王妃はそのお子様の第1執事を任せたいそうだ。」

「わたくしにですか?」

「あー、おまえはまだ若く使用人になってからのキャリアも浅い。一度お考え直しいただきたいと懇願したが、聞いていただけなかった。これが王妃命令である以上私には何もいうことはできない。この命慎んで受けられよ。」

それから俺は王子が生まれるまでのあいだ、改めて乳児の育て方やお世話の仕方について勉強した。

生まれてくる大切な命の傍で、その命の成長を見守ることができる。

その喜びと、重く果てしなく重いプレッシャーを感じながら俺はただただ勉強に打ち込んだ。

王子が生まれたのはよく晴れた春先の朝だった。

4月6日土曜日6時35分ラニ王子はこの世界に生まれた。

俺は使用人の誰よりも早く王子と面会した。

「Neuman、あなたはとても優しく、真面目で、責任感の強い使用人と聞いているわ。この子のことをよろしくね。」

産後すぐの王妃が俺に見せてくださった笑顔を今でもはっきり覚えている。

「はい、この命をかけて王子のお傍にお仕えいたします。」

俺はあの瞬間から王妃と王子に俺のすべてを捧げると決めた。

王子にはご兄弟がたくさんいる。

王妃が王妃の座に即位して今年で20年、3代目の現在の王との間にはラニ王子お1人しか授かっていないが、ラニ王子を出産するまでに既に9人のお子様を産んでいる。

王子は10人兄弟の末っ子なのだ。

王子が生まれたばかりだからといって王妃は王子に付きっきりになるわけにはいかない。

王妃がいる場所には常に他のご兄弟がいて、王子はその1人に過ぎなかったのだ。

「王子。」

王子は物心ついた時からほとんど話さなかった。

言語障害があることを疑って医師に診てもらったが、そうではなかった。

王妃も俺もラニ王子は人と話すことが苦手なだけで、時間が経てば少しずつ改善するだろうと思っていた。

しかし、症状は改善することがなく、数年が経った。

王子は相手が王妃であっても俺であっても決して話そうとしない。

なぜなのか全くわからなかった。

使用人はおろか家族とも全く話さず、たまに王急にやってくる親戚とも全く会いたがらない。

これには王妃も俺も頭を抱えた。

人見知りと言っていいレベルではない。

だが、どうすれば治るのか見当もつかない。

頭を抱えていたある日、王妃がMYへの来航に王子をお忍びで連れて行くと言い出した。

「現状が何か変わるかもしれないわ。それに、MYの魔道良にはねラニに合わせてみたい人がいるの。」

そういわれて王子と俺は王妃についてきた。

そして彼女に出会った。

あんなに王妃に口答えをして、王妃に対して敬意を払わない人を俺は初めて見た。

何より、王子に対してあそこまで自然体に関われる人を俺は初めて見た。

俺でもあそこまで王子のパーソナルに踏み込めたことはない。

「どんな人なのだろう?」

興味が沸くと同時にやはり疑ってしまう。

人間の中に善良な人なんて存在しない。

心のどこかに何かしらの欲望や野心を持っているものだ。

王妃とあそこまで仲のいい一般人がいると知れば、国民の中には懸念を示すものもいるだろう。

「それでも。」

それでも今の俺にできることは彼女と協力することだ。

彼女と協力して、ラニ王子に楽しんでいただく。

それしかない。

「よし、やるぞ。」

俺が頷くと、扉が開いて彼女が俺を見た。

「お待たせしました。中へどうぞ。」

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