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ナント王国王妃来航国賓晩餐会(15)

15

雫が部屋に戻るとラニ王子が既に着替えを済ませていた。

小さな王子がりっぱに見える衣装だ。

「王子、よくお似合いですよ。」

雫が王子の方に行くと、王子が雫を見上げた。

「Neumanさんはどこに行きましたか。」

きっと王子は何も答えてくれないだろうと思いつつ雫が尋ねた。

(やっぱりだめか。)

案の定長い沈黙が続いた。

(さっきから気になってたけど。)

雫には一つ気づいていることがあった。

(王子の警戒心が下がりつつある。今日は目を合わせることさへ無理だと思っていたから、思っていたよりは順調に進んでいるのよね。)

雫は微笑みを絶やすことなく、王子に少しづつ近づいた。

王子はさっきまで王妃が座っていたソファーに座っている。

「一緒にNeumanさんを待たせてもらってもいいですか?」

返事はないが、雫は王子の隣に行った。

座るとドレスに皺が行くから座れないが、王子をできるだけ観察する。

「さっきから何をされているのですか?」

雫は王子の手元にピントを合わせる。

会った時から体は微動だにしないが、手元だけ動いている。

「魔道パズル?」

王子の手元には外見的には何もない。

しかし、魔道を見る目に変えれば見えてくる。

王子は透明魔法で手元を隠しながら、パズルをしていたのだ。

(だからさっきから微妙に手元が動いていたんだ。)

「王子は魔道をたしなむのですね。」

雫が話しかけると、王子がぱっと雫を見た。

「わかるの?」

「えっ。」

王子が話しかけてくれたことに驚きながら、雫は答えた。

「はい、わかります。」

「誰も気づかなかったよ。」

「透明魔法を使っていらっしゃいますし、王子の年齢でこんなに魔道を使いこなす子供がいるとはあまり思いませんから。」

「なんでわかったの?」

「なぜでしょう。私にもわかりません。王子をお傍で見る中で感じたのです。」

雫は首をかしげながら、掌をお皿にした。

「王子は何魔法が使えるのですか?」

「わからない。」

王子がすぐに答える。

「王子がしているパズルが魔道だとご存じですか?」

「うーん。」

(何も知らない。)

「王子はこのパズルのことを王妃にお話ししたことがありますか?」

「うーん、ないよ。」

何となく見えてきたものを雫は頭の片隅に置きながら王子を見る。

「Neuman遅いね。」

「そうですね。」

さっきまでの黙り込んだ王子がどこかに行って、普通に話してくれるようになった。

(どんな心境の変化があったんだろう。)

雫はよくわからないまま王子の隣に立つ。

時刻は18時過ぎ、ロビーの人だかりが落ち着き、ゲストたちはホールに入場しているころだ。

「失礼いたします。」

Neumanが戻ってきたのは18時10分を回ったころだった。

「大変よくお似合いですね。」

「恐れ入ります。」

Neumanが着てきたのはばっちりときまったタキシードスーツだ。

雫は王子を見る。

(さっきまでの漢字だと王子はNeumanにも何か話せそうなのに。)

雫は王子に話しかけた。

「今から何をしましょう?」

王子が雫をじーっと見る。

(2人でいたい。)

(エスパー魔法?)

雫が頭の中ですぐに返事をする。

王子がびくっとして雫を見た。

(王子は今私に声を飛ばしましたか?)

(うん、やっぱりすごいね。他の人には聞こえてないのに。)

(そうでしょうね。)

雫がNeumanを見た。

今雫と王子の間に起きたことを全く理解していない。

理解していないというよりは雫と王子がコミュニケーションを取っていることにすら気づいていない。

(これはすごいわね。)

雫は心に防衛魔法を掛けてから考えた。

(もしこの仮説が正しければ。)

雫がNeumanを見た。

「少し2人で内緒の話しがしたいので、部屋の外で待っていてくれませんか?」

「えっ。」

Neumanが困った顔をしていると王子も頷いた。

「畏まりました。」

Neumanがしぶしぶ頷いて外に出た後、雫は王子を見た。

「王子、少し質問をしてもいいですか?」

「何?」

「Neumanさんがいた時言葉を話さなかったのはなぜですか?」

王子が黙ってうつむいた。

「自分が不思議な力を使えるからですか?」

雫が呟くと王子が雫を見上げた。

「他の人たちは王子のような力を持っておらず、王子は人と違うことができている。それを周りにばれたくないと考えていませんか。ばれないようにするためには自分が話さないように心がけなければならず、誰とも話さないという選択に至ったのではないですか?」

王子の目にみるみる涙が溜まっていく。

(やっぱりそうか。)

雫は王子の前で両手をお皿にして唱えた。

「我は聖なる女神ステファシーの松江にしてロイヤルブラットが一つ木漏れ日家の眷属なり。今私の手の中に光の泉を作れ。」

雫が魔道を唱えると雫の手の中に光の泉がみるみるうちにできあがった。

「今私が作った光の泉も王子がこっそりやっているパズルも、これらはすべて魔道と言う力です。王子が持っている力は決しておかしいものではありません。むしろ素晴らしいものなのです。隠すようなことではないのですよ。」

「そうなの?」

「はい。堂々と胸を張っていただいてよいのです。」

王子の目からぽろぽろと涙がこぼれていく。

「何も心配することはありません。何も怖がることはないのです。」

(本当は抱きしめてあげたいところだけど、王子は王子。一国の大切な王子を私が抱きしめるわけにはいかないわ。)

「泣いてください。今までよく頑張りましたね。今まで辛かったですね。」

雫は王子の頭をなで続けた。

(今までずっと辛かっただろうなぁ。自分は人と違うけど、それを人に言うことはできなくて。)

一通り王子が泣いた後、雫はNeumanを部屋に入れた。

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