ナント王国王妃来航国賓晩餐会(14)
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(宝探しか。)
Neumanは雫といた部屋を出て、すぐに使用人たち数名に声をかけた。
「これから王子の宝探しの準備を始めます。私の指示通りに動いてください。まず、このホールの9か所にポイントを設置します。」
Neumanはポケットに入れていた紙にペンで準備のための課題を書いていく。
「これらの準備を進めていきます。一緒にホールを回ってポイントの設置場所を決めていきましょう。」
「畏まりました。」
それから使用人たちとホール中を回り、1階から4階までの9か所にポイントを設置した。
「それぞれのポイントで課題をクリアすれば宝物のパーツが集まり、最終的には一つの大きな宝物が出来上がるという仕掛けです。課題の内容は今までに王子ができるようになった計算問題や、文字の読み書き、日常生活の動作などにしましょう。」
「はい。」
(宝物はどうしよう。急なことであまり小道具の持ち合わせがない。)
Neumanは自分がいる廊下を見回した。
(何かないか。何か。)
Neumanは壁に掛けられた小さなガラス飾りを見る。
花形のガラス飾りで花びらが何層にも渡り付けられている。
ガラスでできているためホールのあちこちにあるライトを反射し、きらきらと輝いていた。
花の中心に小さな宝石が埋め込まれている。
「これは分解できるのか。」
壁からガラス飾りを取り外し、Neumanが解体していく。
「弁償しろと言われたら倍の金で返せばいい。これを使おう。実に美しい雑貨だ。王子にもこれなら喜んでいただける。」
ポイントに課題を書いた紙と道具を設置し、その中にガラス飾りの破片を入れていく。
「楽しそうね。」
晩餐会の会場の近くにポイントを設置していると、Neumanの後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「王妃。」
Neumanは王妃を振り返って一礼する。
「何をしているの?」
「王子の宝探しの準備をしております。晩餐会の会場に行くためのレクリエーションとして宝探しをすることになりました。」
「誰の提案?」
「木漏れ日さんです。」
王妃がくすくすと笑い頷いた。
「やっぱり雫に声をかけてよかったわ。とっても楽しそうじゃない。私たちにはなかった発想ね。」
「はい。」
「いい加減雫のことを信頼してあげなさい。顔に雫は疑わしいって書いてあるわ。」
「申し訳ございません。」
「雫を信じなさい。雫はね、今まで私がしてきたどんなお願いも叶えてきた天才なのよ。」
王妃が頷いて晩餐会の会場に入っていく。
(信頼化。)
Neumanが少し動きを止めてから、また課題の準備を始めた。
「宝の地図はこのようなデザインでよろしいでしょうか。」
ポイントの設置をすべて終え、使用人の1人がホールの間取り図にポイントを書き込んだ紙を持ってきた。
「もう少し宝の地図っぽいデザインにしませんか。」
「畏まりました。」
使用人の男性が色づきの筆ペンを取り出し、さらさらと紙の縁に模様を描いていく。
「いかがでしょうか?」
「素晴らしい、ありがとう。」
宝の地図の周りに唐草模様のデザインが施された紙をNeumanは封筒に入れた。
「手紙はできましたか?」
「はい。」
別の使用人がNeumanに渡す。
「いいですね。これでいきましょう。」
一通りの準備を整え、Neumanは王子の部屋に向かった。




