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ナント王国王妃来航国賓晩餐会(9)
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私が会場警備責任者に電車での一見を報告するため、グループメートたちのいるソファーから数歩
歩き出した時だった。
「木漏れ日さん。」
後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
「幸詩さん。」
後ろから駆けてきたのは広報部の幸詩さんだった。
「お疲れ様です。」
息を切らしながら幸詩さんが私に話しかける。
「お疲れ様です。」
「王妃がお呼びなので、ついてきてもらえますか?」
「王妃が?」
「はい。」
幸詩さんが息を整えながら私の腕を取る。
「早く。」
「待ってください。」
私は慌てて幸詩さんを引き留めた。
「今から電車であったことを警備担当責任者に伝えに行こうと思っていたんです。」
「それは私が後でやりますから、早く。」
幸詩さんに引っ張られて私は連れていかれる。
「行ってらっしゃーい。」
後ろからチコたちが苦笑いを浮かべながら手を振っているのが見えた。




