表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/173

ナント王国王妃来航国賓晩餐会(5)

5

魔道良を出て、10人は琥珀駅に向かって歩き出した。琥珀駅までは大通りをまっすぐ

行けばいい。

「暑い。」

チコが隣を歩く彩都にもたれかかった。

「歩きづらいからもたれかからないで。バランスを崩すよ。」

「はーい。」

「もう17時なのにこんなに暑いのは困ります。」

チコたちの後ろを歩くMiraが隣を歩くスマスを見た。

「そうだね、仕事中は日傘をさせないし、レディーたちにとっては辛いことだね。」

雫が1人で先頭を歩き、一番後ろをメーラが1人で歩く。これがさっき話していた

フロントとバックだ。こうやって市街を歩くのも任務の一つになっていて、駅へ向かって

歩いている人や街の様子を観察して、不審物や不審者がいれば、適宜対応するように

なっている。フロントとバックはそれをひたすらやる係で、2人ずつになっているほかの

8人は談笑することで、周りに警戒されないようにしながら任務を遂行するように

なっている。

「はい。」

雫が後ろを歩くシーナにスマホを渡した。

「ぐるっと回して返してね。」

「はーい。」

シーナから後ろにどんどんスマホが回っていく。

(17時8分発特急MYHall行に乗車せよ。このペースで歩いていたら、電車に乗るのが

ぎりぎりね。少しペースを上げましょう。」

雫が歩く速度を速めれば、後ろのメンバーもそれを察して速度を上げる。

「雫。」

雫の後ろをシーナと一緒に歩く糸奈が雫にスマホを返した。

「ありがとう。」

全員の「り」の文字が連絡事項の下についていた。

今回回したスマホに雫たちが乗る電車のことが書かれていたのだ。これを読めば、雫が

歩く速度を上げた理由には察しが付く。

駅の改札の手前で雫が止まり、後ろを振り返った。

「お疲れさま。早く歩いたから2分前に着いたわよ。今から、昨日みんなに渡した

データに沿って、3人から4人の班に別れます。私たちの担当は4両目よ。三つある扉から

3班に別れて乗車し、周りの警戒に当たってください。たぶん大きなことは何もないと

思うけど、まあ気を付けておいて。」

「はい。」

雫は一度頷いて、電子カードを改札機に当てる。

(一応連絡を入れておくわ。)

雫がグループルームでやったように右手を右耳に当てる。だが、今回は右手にスマホを

持っていた。はたから見れば、電話をかけているように見える。だが、これは

カモフラージュだ。今雫が持っているスマホは電源が入っていない。完全に見せかけの

おもちゃだ。

「こちら魔道良2205室第37グループグループリーダー木漏れ日、琥珀駅5番線に到着。」

「了解。17時8分発の特急に乗車し、警戒任務に当たれ。」

「了解。」

スマホを降ろして雫が後ろを見る。

「スマスと糸奈と彩都と一緒ね。」

「あー。」

スマスが額に着いた汗を拭きながら頷く。

「珍しい組み合わせだね。」

「そうねぇ、あんまりないわね。」

電車を待っている間、ホームでこんなアナウンスが流れていた。

「本日も花星線にご乗車いただきまして、ありがとうございます。お客様に

お知らせいたします。本日、ナント王国王妃来航国賓晩餐会がMYHallで開催されるに

あたり、花星線では12時から22時まで駅並びに車内に置いて警戒イエローカードの

設定がされております。駅や車内に掲示してあります持ち込み禁止物一覧表を

ご確認のうえ、駅並びに車内にお持ち込みになられませんようご協力をよろしくお願い

いたします。なお、駅並びに車内に持ち込み禁止物を持ち込まれた場合、従業員より

声をかけさせていただく、あるいは一度車内から降りていただく場合がございますので、

予めご了承ください。」

このアナウンスがさっきからしきりに流れていた。

「一応聞いておくけど、車内の警備任務の仕方はわかってるわよね?」

「もちろん。」

彩都が頷く。

「特急だから、人が多いのだろうね。嫌になるよ。」

「ちょっとの我慢よスマス。MYHallまで5駅だし、乗車時間は15分。3分に1回ぐらいの

ペースで扉が開くわ。」

「人が多いってことはマーキングをいっぱいしないといけないね。」

「ええ、マーキングはいっぱいしないといけないでしょうね。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ