みんなの朝(1)
1
2029年8月24日水曜日、今日も慌ただしい朝がやってくる。
少しずつ空が明るくなり始め、魔道良2205室第37グループのグループメイトたちにも朝がやってくる。
慌ただしく賑やかでとても楽しい1日の始まりだ。
今日一番早く起きたのは上手だ。
「眠い。さすがに昨日あれだけ夜更かししたんだから仕方ないよな。」
上手はゆっくり体を起こして伸びをした。
「まさか魔道良の秘書室で仮眠を取らざるを得ないとは。」
上手はゆっくりベッドを出て、窓の外に目をやった。
「いい天気だな。これなら夕方からの護衛任務にも支障なさそうだ。」
上手は顔を洗い、髪の毛を整え、ジャケットを腕に通した。
(今日は10時から雫さまが会議に行かれて、12時からスマスさんと面談、13時から糸奈さんと面談、14時からチコさんと面談で、15時に魔道良を出発して、16時から警備任務か。学生のみなさんは空き時間に学校へ通って、大学生のお二人は今日は1日オフィスにいたはず。Miraさんやスマスさんはそれぞれ会議があって、クシーさんと彩都さんは何かあったかな。)
上手が今日の全員の予定をイメージしながら、カバンを持って秘書室を出た。昨日
任務から戻ってきたのが深夜でそこから雫が休まずに仕事を始めたせいで、3時まで上手は雫の仕事に付き合わされた。
だから、家に帰らず、秘書室のベッドで寝る羽目になったのだ。
「雫さままだねてるだろうなあ。)
エレベーターに乗り、36階まで上がる時間、上手はガラス張りの壁にもたれかかりながらぼうっとしていた。
(ちゃんとベッドで寝てくれていればいいが、机に突っ伏していたらどうしよう。)
上手が腕時計を見る。
(6時過ぎ、もう少し寝れたらよかったな。慣れないところは熟睡できなくてどうも困る。1時間半ぐらいしか寝れていないじゃないか。)
36階まで上がる途中で乗ってくる人に会釈をしながら、上手が心の中で溜息をついた。
「あらおはよう上手さん。」
「おはようございます。」
28階で乗ってきた若い女性が上手に声をかけた。
「こんなに朝早くからどうなさったの?」
「仕事が残っておりまして。」
「相変わらず真面目ねえ。」
女性が苦笑いを浮かべながら上手の隣に行く。
「これも何かのご縁よ。会えたついでに一つ言わせて。」
「なんでしょう。」
「この前お誘いした夕食会の件考えてくれたかしら?」
(忘れてた。)
上手の心の重荷がまた重くなる。
「まさか忘れてた。」
「もうしわけありません。」
「もういい加減にして。せっかく秘書会の集まりにあなたを誘ってあげているのに、来ないなんてありえないわ。今日の夜だから、必ずいらしてね。」
31階でエレベーターが止まり、女性がヒールの音高らかにエレベーターを下りた。
(はー。非常に不愉快だ。どうしよう。どうやって断るかなあ。「Silvia」を怒らせたら面倒なんだ。だが、今夜は警備任務に雫さまたちが行かれるから、グループルームで待機していないといけないし行けるわけがない。それに社交的なああいう場所はあまり好きではない。有意義な情報交換ができるとSilviaは言うが、ほとんどが愚痴のききあいと談笑と恋愛目的じゃないか。あそこに行く時間があったら、雫さまたちのサポートに時間を使いたい。)
36階でエレベーターが止まり、上手は前にいる人をかき分けてフロアーに下りた。
グループルームに向かって歩きながらついため息が漏れてしまう。
「よし、切り替えよう。Silviaにはあとで謝罪のメールを入れれば、それで済む話しだ。」
上手はドアの横につけられた機械にカードを翳しカギを開ける。
「おはようございます。」
上手が部屋に入ると、奥で誰かがパソコンを操作する音が聞こえてきた。
(雫さま起きてるのか?!)
上手が奥に進み、グループメイトの席があるスペースに行くと、雫が自分の席でブルーライト軽減眼鏡を掛けながら、すごい速さでキーボードを捜査していた。
「おはようございます。」
「あら、おはよう上手。こんな朝早くにどうしたの?」
「それはこちらのセリフです。まさか今夜徹夜したのですか?」
「そうしないと終わらないじゃない。」
上手が溜息をついて雫の前に行く。
「そう言ってもう三日ほど徹夜ではないですか。いくらノーマル月間で仕事量がポリス月間に比べて少ないといっても無理をしすぎてはいけません。夏が苦手な雫さまがこの時期に無理をしては任務に差し障りが出ます。今から1時間は眠れますから、仮眠室でお休みください。」
「お母さんみたい。」
「ふざけません。」
雫がコーヒーの入ったカップを置いて席を立った。
(寝る気になってくれたかな。)
「目覚ましに顔洗ってくるわ。早く自分のパソコン立ち上げてメールの確認しておいてちょうだい。」
「雫さま。」
「大丈夫よ。信じて。」
雫が上手にウィンクする。
「信じません。私は絶対信じませんからね。」
「強情。」




