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ナント王国王妃来航国賓晩餐会(1)

          1

 結局雫が魔道良に戻ってきたのは10時5分前だった。

(走っても会議室には間に合わないわね。)

東棟の入り口から魔道良に入った雫の前に上手がいた。

「上手。」

「お持ちいたしました。」

「ありがとう。」

「次の会議は西棟の1583室です。」

「分かったわ。グループルームに戻っていて。」

「畏まりました。面談がうまくいったようでなによりです。」

「上手のおかげよ。ありがとう。」

さっきの面談で管理職を連れてきた後、上手はすぐ魔道良に戻り次の会議の荷物をまとめていたのだ。

まるで、最初からこうして時間ぎりぎりにならないと雫が魔道良に戻ってこないことを予知していたかのように。

(さてと西棟か遠いな。)

雫は上手に手を振ってからもう一度外に出た。

(どうやったって間に合わないけどこっちの方が早いはず。)

雫は横断歩道をダッシュして西棟に向かった。

建物の中を通ろうとすると、北棟か南棟を経由して西棟まで向かわないといけなくなる。

だが、外であればこうして横断歩道を三つほど通れば西棟に着くことができる。

1階にいるときはこうして外に出るほうが確実に早い。

(あとは。)

西棟に入った後はひたすら階段を駆け上がった。

15階ならエレベーターを待つより階段を駆け上がったほうが雫の場合早く着く。

(今いつかしら?)

腕時計は9時58分になっている。

(間に合って!)

15階につき1583室を目指す。

何人もこのフロアーの人とすれ違うが、みんなが雫を見ていた。

こんなに全力疾走をする社員はなかなかいない。

特に、このフロアーは一般職員が多いからこんなに体力がある人も少ないらしい。

「遅くなりました。」

簡単なノックをした後、雫は扉を開けて部屋の奥に掛けられた時計を見た。

(10時ちょうど。)

「若干遅刻だな。」

「10時5秒ですよ。」

「5秒でも遅刻だ。」

「申し訳ありませんでした。」

扉を閉めて雫が空いている席に向かう。

雫の息はまったく切れていない。

正直なことを言えばさすがに少し呼吸を整えたいところだが、そんなことをしてもオーバーなお芝居に死か思われない。

 この部屋は会議用に作られた部屋でとにかく大きい。

片仮名のロの字型にテーブルがセットされ、20人程度が席につくことができる。

一般的に、ドアから入って一番奥の辺に座るのがその会議のホスト的な人たちで、その正面と言うのはだいたい空く。

雫は今回の会議のホストの前に座った。

(ああ、必然的にホストたちと目が合ってしまう。ここって誰も座りたがらないのよね。)

ホストたちと雫の席との間にはぽっかりと空いた空間以外何もない。

「こんなことを聞くのは時間の無駄以外の何物でもないから一つしか聞かないが。」

雫の正面に座る女性が雫を見た。

「なぜ遅刻した?」

「グループメイトの担任面談に行っておりました。しかしこれは言い訳に死かなりません。スケジュール管理に問題があったと自覚しております。」

「ならいい。会議終了後反省文を持って来るように。」

「畏まりました。」

「それでは会議を始める。」

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