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実家の雫(13)


  13

 昼食休憩は一般的に後半の会議に向けて、それぞれの担当部署の話し合いが行われることが多い。

実際、雫と貝もそうしていた。

会議の前半と後半では出席する顔触れが変わる。

その中でも最も大きいのは、木漏れ日家秩序会の職員が会議に来ることだ。

木漏れ日家秩序会とは、木漏れ日家内外における木漏れ日の立場や木漏れ日家の人間の立ち居振る舞いを監視し、適宜苦言を呈したり、一時的に行動を制限したりする権利を持っている木漏れ日家内の独立組織だ。

木漏れ日家全体の発展や地位の画一、存続や利益の追求を行う組織で、木漏れ日家内の重要な決め事に与える影響も大きい。

その職員が来るということは、公的な制度を使わなければ解決できないところまで膨れ上がった案件があるということになる。

対人トラブルだったり、金銭トラブルだったり、木漏れ日家内の人間同士のことだったり、木漏れ日の外の人と中の人とのトラブルだったり、多岐にわたる。

「雫様、貝様、そろそろお時間です。」

「分かった。」

雫と貝が立ち上がる。

「じゃあもう少しよろしくお願いしますね。ここからが雫さんの本番のようなものなんですから。」

「はい、貝さん。」

 12時5分前、会議室には午前中から出席していた面々は揃っていた。

だが誰も口を開かない。

全員この後の会議に気が重くなっているのだ。

雫が部屋の奥に掛けられた時計を見る。

(そろそろ来るかな?)

雫が目を細めると同時に扉がノックされた。

「失礼いたします。」

扉越しに室内に響くのはかっちり、きっちりとした女性の声。

続けて開けられた扉から職員が4名室内に入ってくる。

全員独特な黒色の制服を纏った女性二人に男性二人だ。

(あっ。)

雫の席は、他のメンバーの中で一番早く秩序会のメンバーの顔が分かる位置にある。

雫と秩序会の女性職員の目が合った。

金色の長い髪を低い位置で一つに括り、瞳は鋭い金色の光を放つ職員。

(今朝会ったからだろうけど、やっぱり似てるなあ。さすが双子。)

雫が立ち上がると同時に他のメンバーも立ち上がる。

「ご多忙の中本会議にご出席いただきありがとうございます。本日そちらの筆頭は華原木漏れ日家秩序会会員とお見受けいたしますが

「はい、本日はわたくし華原を筆頭といたしました木漏れ日家秩序会会員4名で伺いましてございます、雫様。」

雫の真正面の辺に4人1列に並んだ職員が深く一礼する。

「どうぞおかけください。」

秩序会の職員が座った後雫たちも着席する。

(秩序会の筆頭中の筆頭が、わざわざメインに腰を据えていらっしゃるとは。よほどの大ごとがあったのね。しかも私の把握し切れていない領域で。となると、魔道士専門学校関係か、研究所関係か。)

「それでは会議を再開いたします。」

心の中であれやこれやと必死になって考えていることを伺わせないような笑みを浮かべて、雫が会議の指揮を執る。

木漏れ日家秩序会の会員は、木漏れ日の人間や使用人とは決して親しくしない。

多くの権力を持っているのだから、当然だ。

だから、木漏れ日家秩序会の誰が会議に来るかは、その瞬間になるまで決して公表されない。

そして、雫は華原があまり得意ではない。

名前の通り、今ここにいる華原は水香の執事の華原の血縁で、水香の執事の華原の双子の姉だ。

髪と瞳の色がはっきりと違うのは、それぞれが生まれ持って手に入れた力が異なっていたからだという。

「それでは秩序会の方からご報告をいただけますか。」

「はい。」

華原が立ち上がる。

(嫌だなあ、華原怖いんだよなあ。この人を本気で切れさせたらさすがにどうにもならない。)

「それでは皆様にご報告申し上げます。今回わたくしども木漏れ日家秩序会から皆様にご検討いただきたくお持ちした議題は2点でございます。その1点目についてこれからご説明いたします。魔道良研究所所属の研究員である当家の者が架空の研究資金を研究所に請求し、それが発覚したという議題です。」

(あーあ、それはまずいな。)

「既に公的な関係各所がそれぞれに行動を開始しております。我々といたしましてもそれらの要請に対する全面的な協力はもちろんのこと、他にもこのような事例がないか一斉調査を行うことを決定いたしました。」

(つまり議題と言っても議論が必要なんじゃなくて、報告したかったのね。そして、議論をしないといけないのは、これではなくて。)

雫が頷く。

「畏まりました。我々からも魔道良や関係組織に席を置く者に通知をいたします。ところで、本案件に関するマスメディア対応はどのようにされるおつもりですか?」

華原が雫を真っすぐに見る。

(あーここが議題化。)

「本来であれば、魔道良研究所担当である一十様にご対応をお願いしたいところですが、個別に一十様をお訪ねしたところ、断固拒否をなさいました。そこで皆様にもご検討いただきたいのです。やはり一十様に担当いただくことが適任という判断を下していただけました際には、木漏れ日家秩序会として再度積極的な要請を行います。また、第1補佐をはじめとした他の担当者でも行えると判断された場合には、その旨をお伝えくださいませ。」

室内が静まり返り、華原が椅子に座りなおす音だけが響いた。

「雫さん。」

「何でしょう、四永さん。」

「発言を許可いただけますでしょうか?」

雫が一同を見回す。

(意義を唱える人はいなさそうね。)

「構いませんよ。発言を許可します。」

四永が立ち上がる。

「この度の不祥事において、皆様に多大なるご迷惑とご負担をおかけいたしますことを深くお詫び申し上げます。」

四永が深く頭を下げる。

数秒後頭を上げて発言を続けた。

「この度の不祥事に対し、我々魔道良研究所担当の木漏れ日内外の職員は、原因究明を進めると共に再発防止に努めてまいります。また、マスメディア対応の担当者決定に対して皆様のご意見を伺うこととなり、ご負担をおかけいたしますことを重ねてお詫び申し上げます。」

四永がもう一度頭を下げる。

「以上です。」

四永が雫を見る。

雫が一度頷いて、四永が席に座った。

「さて皆さん、どのようにお考えでしょうか。今回のことは、魔道良研究所担当内のお話ですから、厳密に申し上げれば、魔道良担当や魔道士専門学校担当の皆様には関係のない議題とも言えます。ですが、こういった内部トラブルには、皆様も覚えがあるのではないでしょうか。そして、場合によってはこの席で解決を図ってきたはずです。ですから今回の議題に対しても皆様のご意見をお聞かせください。ここまでで既にご意見のある方は?」

(まずは動機付けとその共有。)

誰も反論をしない。

「ありがとうございます。ではここからの議論は、四永さんにお任せしてもよろしいでしょうか。」

「畏まりました。」

(これで引き継ぎも完了。さてさて、どうしたものかしらねえ。)

雫はちらっと貝の顔を見る。

(穏やかな顔してるなあ。本当にポーカーフェースの上手い人。)

「それではこれまでの経緯をご説明いたします。先ほど華原秩序会会員からご説明の会ったとおりのトラブルが発生したのち、我々魔道良研究所担当の職員一同としては、魔道良研究所担当の一十にマスメディア対応の任を任せたいと考えております。そこで、木漏れ日家秩序会からのご助言も受け、我々や木漏れ日家秩序会から数回一十に要請をいたしました。ですが、頑なに一十は拒んでおります。そこで、皆様の一致した結論として、一十がマスメディア対応に適任と判断いただけましたならば、その旨を一十に伝え、再度秩序会と共に積極的な要請を行います。」

(つまりこの場では形式的にでもいいから、一十さんが適任だという結論を出せばいいわけだ。このメンバーは、これくらいの空気の読める人の集まりだと思うけど。)

「発言してもよろしいでしょうか。」

貝が手を挙げた。

「どうぞ。」

四永の返答に貝が頷いて話し始める。

雫がちらっと貝に視線を向けた。

「万が一ですよ。万が一一十さんがどういった説得にも応じず、マスメディア対応のポジションが空白のまま長期間が経過した場合、社会に対して木漏れ日家の悪印象が広がりかねません。マスメディアは、現代社会において世論を味方につけるために決して軽んじてはならない媒体です。マスメディア対応はそれだけ重要なポストだとわたくしは考えております。その点において、一十さんの行いは役割の怠慢と見なすことができます。これまでにも一十さんの目に余る言動や行動はいくつもありました。これを機に一十さんの役割解任の申請を秩序会及び木漏れ日家本部に申し出てみてはいかがでしょうか。」

室内が凍り付いた。

(あー、空気の読めない人がいた。本当に相手を潰すためのノウハウをマスターしている人が動いた。どうしよう。)

「華原秩序会会員、どのようにお考えでしょうか。」

貝が自分のターンとばかりに華原を見る。

(こうなったら貝さんの独壇場になる。四永君の議長の能力じゃ貝さんは止められない。それに、一十さんに対して悪印象を持っているのは貝さんだけじゃない。ここにいるほとんどの人が貝さんに同意するだろう。それに華原が賛成したら。)

「わたくしは良い考えだと思います。貝様の意見に賛同いたします。」

(ほらやっぱり乗ってきた。こうなったら同町圧力であっという間に。)

「わたくしも貝さんの意見に賛成です。」

「わたくしも。」

「わたくしも。」

次々に会議の席にいる者が起立する。

(こうなったらもう根本の議論はできない。ならばせめて、残された手段は二つ。)

四永と雫以外の全員が起立した。

四永が雫を見る。

雫はそれに頷いて応じた。

「皆さんの意見はよく分かりました。四永さん、よければわたくしにこの案件、預けていただけますか。」

「はい雫さん。」

「ありがとうございます。皆さん、一度ご着席いただけますか。」

雫は穏やかな声で議論を進める。

「今のことで、秩序会の方々をはじめ、皆さんが、一十さんは魔道良研究所担当に相応しくないと考えていらっしゃるということが明白になったとわたくしは考えておりますが、異論はありませんか。」

反論はない。

「分かりました。では、わたくしから少しよろしいでしょうか。この提案をいただいたのは貝さんですから、貝さんにお尋ねいたします。」

「どうぞ。」

今の雫は魔道良担当ではなく、この会議の最終決定者として貝と対峙している。

「秩序会の同意は得られていますから、後は木漏れ日家本部に申請をして、受理されれば所定の手続きは完了します。ですが、その後魔道良研究所担当はどうなさるおつもりですか。マスメディア対応が急ぎの課題であるタイミングで、所定の手続きに乗っ取った代表選定をしている時間が、それこそもったいないように思うのですが。」

「緊急時やスピード感の必要な場合には、第1補佐が一時的に担当を引き継ぐことが木漏れ日家家束で可能となっています。今回の場合ですと、四永さんにお任せすることになりますね。」

(そうなるよね。)

「華原秩序会会員は、このことについてどのようにお考えでしたか。数年ほど前から、未成年者に担当の役職を与えることを最大限控える方針に沿って、木漏れ日家内の各部署は動いています。お分かりの通り四永さんはまだ未成年者です。」

華原と雫の目線が交差する。

(どっちだろう。華原がノーと言ったらこの議題は振り出しに戻せる。でも、いいと言ったら次の手に移るしかない。)

「四永さんは、第1補佐の業務を行っている間も学力や日常生活に大きな影響は見受けられませんでした。今回担当をお任せするのも長くて2か月ほどでしょうし、問題はないかと。」

(あーそっちに転んでしまうのね。)

「なるほど。貝さんもそのように?」

「はい、四永さんであれば安心して任せられます。」

「分かりました。皆さんは、今のことを十分に理解したうえで、それでも四永さんにお任せできるとお考えになりますか。四永さんの能力の問題ではなく、今お考えになっていただきたいのは、木漏れ日家の基本方針に相反する行動を取ってまで、第1補佐だからという理由で四永さんに担当をお任せすることの意義の問題です。」

室内の結束に僅かな綻びが生じた。

数名の職員や木漏れ日の人間の表情が曇る。

一十を悪役にすることで保たれていた結束に、木漏れ日家の基本方針に相反するというフレーズが若干の恐怖心を与えたのだ。

「いかがでしょう?」

だめ押しの一言だ。

(ここに代案に代わるようなものを入れれば。)

「では逆に。」

貝が反論を始める。

(止めに入ったか。さすが。)

雫が数回瞬きをする。

「一十さんに魔道良研究所担当を続けていただいたとして、どのようにマスメディア対応をお任せするおつもりですか。ここまできて、魔道良研究所担当の立場はそのままに、違う人間にマスメディア対応を任せるとおっしゃるわけではないでしょう。」

「はい、今回の役割怠慢による役割解任の申請を第2種申請にし、本人のマスメディア対応をはじめとした、他の業務への意欲を向上させられればと考えました。わたくしたちだけが役割解任についてお伝えをしたところで、一十さんはあまり気に掛けないと思いますが、今回は秩序会のお力もお借りできるとのことですし。マスメディア対応や他の業務への取り組み具合で申請を取り下げることも可能になる第2種申請にすれば、事が丸く収まった場合、事態の収束にも時間がかかりません。また、役割解任第2種申請は、秩序会の賛同が得られたうえで、本人の同意なしに決められます。つまり、今この場で決められます。」

「第2種申請ということは、木漏れ日家本部に解任の必要性に関する議論を求めたうえで、申請後一定期間本人の様子を見て解任の是非を決めるという申請内容のことで間違いありませんか。」

「その通りです。華原秩序会会員。」

(貝さん、一気に話を持っていきすぎましたね。私の勝ちです。)

雫が貝を見る。

微笑んでいるが目が笑っていない。

その目が雫を見つめている。

「皆さん、いかがでしょうか。」

「それでいいと思います。」

手を挙げて発言したのは実冬だ。

「確かにいきなり役割解任の申請というのは聊か強引ですし、通ったとしても第1補佐の四永さんにマスメディア対応からすべてを全般のことが落ち着くまでお任せするというのは、無理があります。」

「他にご意見はありませんか。」

貝をはじめ誰も何も言わなかった。

「華原秩序会会員、いかがでしょう。我々魔道良関係者会議の総意は、一十さんにマスメディア対応をはじめとした役割怠慢を理由とする、役割解任第2種申請を秩序会及び木漏れ日家本部に申請し、その審査期間内に一十さんが、望ましい業績を上げられた場合にはその申請を取り下げるというものです。これはわたくし個人の見解ですが、一十さんはとても優秀な魔道良研究所担当です。役割についてからの年数も長く、各関係者とのパイプや人脈は非常に価値のあるものです。ここですべてを失い、一から築き上げるのは少々時間がかかりすぎます。もちろん、一十さんがそれに余りある怠慢を行った場合は別ですが、ここで一度気持ちを入れなおしていただければ十分なのではありませんか。」

「それが皆様の総意なら、我々はそれに従います。」

「ありがとうございます。それでは今の決定に沿って各担当の方々に置かれましては、業務を行ってください。」

雫が優しい笑みを一層深めた。


「それでは本日はこれで終了します。次回は来月の28日を予定しています。本日もありがとうございました。お疲れさまでした。」

「お疲れさまでした。」

2029年8月の木漏れ日家魔道良関係者会議は、予定より40分早く終わった。

後半の最初の議題の後の議題が、かなりスムーズに解決したからだ。

雫は席でパソコンを片付けている。

その顔は穏やかな笑顔。

「あの雫さん。」

「はい。」

雫が手を止めて顔を上げると正面に実冬がいた。

「実冬さん、お疲れさまでした。」

「お疲れさまでした。あの、先ほどの件、ありがとうございました。雫さんに途中で割って入ってきていただかなかったら、きっと予定通りの着地点に持っていけませんでした。」

「気にしないでください。大丈夫ですよ。後半はどうしても込み入った議題が増えますからね。準備も大変でしょう。」

「はい、もっと頑張って来月はご迷惑をかけないようにします。」

「別に迷惑なんて思ってませんから、あまり肩肘を張らずにきてください。」

「ありがとうございます。あの、ご多忙のこととお察しいたします。雫さんもご無理なさいませんように。」

「あらありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいものです。」

「それでは失礼いたします。」

「はい、お疲れさまでした。」

実冬が丁寧に一礼して部屋を出ていく。

(いいなあ、穏やかな会話っていいなあ。楽。)

「雫さん、この後のご予定は?」

パソコンを森崎に渡して席を立とうとした雫が貝に止められた。

「貝さん、14時から約束がありますが。」

「でしたらそれまで、昼食を摂った部屋でお話しませんか?」

(拒否権のない疑問形だ。)

雫が森崎をちらっと見た。

(問題なさそうね。)

「分かりました。ご一緒いたします。」

 昼食を摂った部屋に戻ってきた二人の前に紅茶とコーヒーが置かれる。

雫は紅茶、貝はコーヒーだ。

「いやあ、お疲れさまでした。今日も大変でしたね。」

「そうですねえ。」

雫が笑顔で答える。

「ところで、僕が呼び出した理由分かってますよね?」

「はい、おそらくですが。」

雫が森崎に視線を向ける。

「下がっていて。時間になったら声をかけてちょうだい。」

「畏まりました。」

森崎が部屋を出て行った後、二人が真顔になる。

「どうして止めたんですか?」

「止めたとは?」

雫が聞き返す。

「一十さんのことですよ。あのまま役割から解任したら、ひとまず四永君に一定期間すべてを任せて、雫さんに都合のいい魔道良研究所担当を決められたかもしれないのに。」

「それじゃあただの独断政治になりますよ。それにその言い方だと、まるで私が一十さんにやめてほしいって思ってるように聞こえるじゃないですか。」

「違うんですか?」

「揺さぶって楽しいですか?」

「質問してるのは僕です。」

雫がため息をつく。

(この人のペースに巻き込まれてうっかりはいなんて言った日には、あっという間にそれが広がって、私は足元を掬われかねない。貝さんだからそんなふうにはしないと思うけど、念のためにね。)

昼食を摂っていた時の水香の会話ではあえて貝が作り出す空気に抗わなかった雫だが、今は全力で抗っている。

雫にとってはかなりしんどいことだ。

「やめていただきたいとは思っていませんよ。」

「だからといって、一十さんのために第2種申請にしたというわけでもないでしょう。」

「そうですねえ。」

「四永君が気になりましたか?」

(これには同意していいか。)

「ええ。」

「彼は確かに未成年ですが、仕事は十分にできるのですから、任せて良かったのではないですか。」

「木漏れ日家の基本方針に盾ついてまでですか?」

「雫さんは基本方針を盾にして議論を進めましたが、実際には基本方針に逆らいたくないからではないはずです。それよりも、四永君個人の心身を案じたでしょう。その口実に基本方針を使った。」

「結果的に使う理由が同じならどちらでもいいでしょう。秩序会もそれでいいと了承してくれました。」

「そうですけど。」

(少し攻めてみるか。)

雫の声のトーンが変わる。

「先ほどから私のためとおっしゃいますが、実際には違うでしょう?貝さん個人が一十さんを気に入っておられないからというのもあるでしょう。一十さんを摘まみだす絶好の機会と踏んだのではありませんか?」

貝がふっと笑う。

「さすがに察しがいいですね。大切な会議を欠席する彼も悪いですよ。そういった場所で足元を掬われるのに。今日のようにね。」

「結果的には即時退場とはできなかったけれど、第2種というイエローカードが出たことで、最低限の目的は達せられたわけですか。」

「はい。」

「結局私はいいように使われたわけですね。毎度のごとく。」

「そうですね。助かりました。けどいつもより抗ったじゃないですか。そしてその抗いはきちんと結果にも繋がっています。比較的良い成績でしょう。」

貝の満足げな顔に雫は長い溜息で答える。

「素直にありがとうございますでいいんですかね?」

「いいと思いますよ。僕にいいように転がされるのは嫌いですか?」

「もちろん、好きではありませんよ。ただ、今の私の能力では仕方のないことだとは理解しています。ですから全面戦争はしないじゃないですか。いつも部分的に勝を取れればいいと思っていますよ。だって、貝さんは私の見方でしょう?」

今度は雫が不敵な笑みを浮かべる。

「味方ですかねえ。雫さんは中立な立場を選んだじゃないですか。」

「当然です。私は、貝さんが母と再婚するための積極的な支援は行いません。逆に、貝さんが母と再婚しないように画策することもしません。そして、母が貝さん以外の誰かと再婚した場合の責任の一切も負いません。それが私が2年前に貝さんと結んだ契約です。」

「ならばなぜ、中立な立場を取る雫さんに僕が味方するとお考えに?」

「私は水香の娘ですから。再婚どうこうの問題以前に私は彼女の娘です。良好な仲でありましょう。そしてこれからもわたくしにどうぞご指導ください。木漏れ日の内政に疎く議論に不慣れなわたくしを今日のようにご指導くださいね。」

言葉の最後で雫が不敵な笑みを濃くすれば、貝はそれに首を振って応じる。

「このまえよりはそれらしくなりましたね。その調子で頑張ってください。わざと悪役を演じる技術はそろそろ身に着けておいたほうがいいですよ。」

「はい、頑張ります。」

雫の顔からすーっと力が抜ける。

(あー疲れた。突然始まるから怖いのよねえ。うまくできて良かった。)

貝が雫の力の抜けた顔を見て立ち上がる。

「お客様がお見えのようですよ。彼らの用事はあなたにあるでしょうから、僕はこれで失礼します。そうそう、次の資料の締め切りは守ってくださいね。」

「はい、ありがとうございました。」

貝が扉を開けると目の前に森崎と四永がいた。

「貝様お帰りでございますか?」

「はい失礼します。四永さん中へどうぞ。僕の用事は済んだから、今度は座ってゆっくりお話しするといいですよ。」

貝は二人を避けて歩いて行った。

「四永さん構いませんよ。森崎、お片づけをお願いします。」

「はい。」

森崎が貝の飲み物を下げる。

「森崎、しばらく外してください。声を掛けます。」

「畏まりました。」

 森崎が退出し、今度は四永と二人になった部屋で雫が正面に座る四永を見る。

(来るかなあとは若干推測してたけど、本当に来たのね。そういえば、二人で話すの久しぶりだ。)

「四永さん?四永君?どちらでお呼びしましょうか?最後に私的な場でお話をしたのは半年くらい前だと思いますので、念のため。」

「雫さんにお任せします。」

「分かりました。では四永君でも構いませんか?」

「はい、ただ敬語はお控えいただきたいです。雫さんは僕よりも年上なわけですし。」

「あまり気にしていなかったのだけれど、分かりました。」

沈黙が流れる。

(さすがにお昼に会った時よりも疲れてるなあ。午後は午前中より気を張り詰めて議論に臨まないといけなかったし、仕方ないか。)

「さて四永君、どういったご用件かしら?」

「先ほどの案件のお礼に伺いました。」

(うんうん。)

雫はにっこり微笑む。

「構わないわ。こちらこそ勝手に進めてしまってごめんなさいね。あのままお任せした方が良かったのかしら?」

「いえ皆さんが起立した段階で僕にはもう打つ手がありませんでしたから、雫さんが引き継いでくださって助かりました。」

「貝さんがあー発言することは想定していなかったの?まあ、貝さんに限った話じゃなかっただろうけど、誰かが役割解任の申請を提案するっていう推測はしていなかったのかしら?」

四永が少し下を向く。

「正直なところ、魔道良研究所担当の職員間にも、一十さんは担当に向いていないという意見や、一十さん個人に対する不満が高まっていました。それを抑え込むという意図も込めて、今回議題として持ち込んだのですが、かえって逆手に取られてしまいました。」

四永の顔には、自分の力のなさを恥じるような困った笑顔が浮かんでいる。

(なるほど、想定外だったのか。そして秩序会と若干連携が取れていないようにも見えるわね。)

「貝さんの方が1枚上手だったということね。大人は怖いわねえ。」

雫も苦々しい笑みを浮かべる。

「そういう雫さんも大人です。」

「確かにそうだけど、私もまだまだ皆さんに足元を掬われそうになって、必死で踏ん張ってるわよ。ところで、その言い方だと四永君は一十さんを担当から外したくないの?」

「はい。」

「そう、どうして?」

四永は答えなかった。

1分ほど沈黙が流れる。

「答えたくないのなら、答えなくていいわ。ともかく私は、結果として四永君の味方になったのかしら?」

「はい、感謝しております。」

「そう、まあいいわ。今後の一十さんを信じるしかないわね。」

「はい。」

(話の本筋が見えてこない。時間はまだいいけど。)

「四永君?」

「はい。」

さっきから表情がほとんど変わらない四永に雫が優しい笑顔を見せる。

「私に何か読ん営君の力になれることがあるのかしら?それとも私に何か聞きたいのかしら?お礼は伝えてもらったけれど、他にも何かあるんじゃない?」

四永の目つきが変わる。

感情の籠った視線だ。

(やっぱり何かある。)

「それではお尋ねしてもよろしいでしょうか。」

「はい。」

「雫さんが第2種申請を提案された理由は、もし第1補佐である僕が担当になったら力不足だとお考えだからでしょうか。」

(あー、それが聞きたかったのか。)

雫はゆっくり首を振る。

「議論の場でも伝えたけれど、四永君の能力の問題で第2種申請にしたんじゃないわ。ことが性急すぎたというのもあったし、四永君はまだ未成年だから担当の役職にはできれば就かせたくなかったの。」

四永の顔が曇る。

「本当に未成年だからなのですね?」

「はい。」

「だとしたら僕は悔しいです。高々年齢が足りないというだけで、やれることをやらせてもらえないなんて。だとしたら、そもそも未成年を宙ぶらりんな役職に就けなければいいのに。」

「それは第1補佐のようなということ?」

「はい。」

(感情的になってる。四永君が珍しい。)

「第1補佐も忙しいものね。担当のように表で華やかなことはほとんどないけれど、縁の下の力持ちたちの責任者のような立ち回りを求められて。」

(たぶん今彼が抱えている不満は二つだ。一つは未成年と言うだけで自分の能力を十分に評価されていないという不満、もう一つは十分な評価は与えないくせに無駄に仕事量も責任も多い役職には就かせるという大人の都合のよさに対する不満かな。)

雫が声をかけた後四永は何も言わずにいた。

「四永君、ずっと気に入らなかったのね。」

四永がはっとする。

「気に入らない?」

「現状に不満があるんでしょう?」

「それは。」

「正当な評価も無しに、仕事ばっかりさせる周りの大人が気に入らないと思っていない?」

四永が雫を真っすぐに見る。

「そうですね。不満はありますね。でも雫さんは、僕のことをきちんと見てくれていると思ってました。なのに、結局雫さんも僕のこときちんと見てくれてなかった。」

「担当に就けようとしなかったこと?」

「はい。」

(議論になってない。でも今は四永君の感情を優先すべきか。裏切られたみたいに思ってるのかなあ。)

「それは木漏れ日家の方針が。」

「方針に全く沿わずに例外ばっかり作り出してきたあなたにそんな綺麗ごと言われたくないんですよ。」

四永が怒鳴った。

(森崎がこっちを気にしてる。)

雫が四永の目を盗んですっと魔法を飛ばす。

(大丈夫だから、入ってきちゃだめよ。)

雫が四永を見る。

あくまで穏やかな表情を保ったまま会話を始める。

「そう、そういうふうに思ってたのね。本来木漏れ日の家に縛られるべき私は、ずっと外の世界に生きていて、そういう自由を与えられている私が、木漏れ日の家の規則や風習がどうこうと言うのは筋が違うと言いたいのね。」

四永が俯いている。

(確かにそうだけど、本当にそうだけど、それでもやっぱり四永君を担当の役割には就かせたくない。私の願いのためにも、春宮様の志のためにも。)

「けどやっぱり私は四永君にまだ魔道良研究所担当の役割に就いてほしくないわ。今からその本当の理由を話すから。」

四永がぱっと顔を上げる。

雫は四永の顔を真っすぐに見て答えた。

(ごめん、部分的に飲み話すから。今春宮様のことは話題にできない。それでも説得させるだけの話術を使って話すから。)

雫が一度深呼吸をする。

ゆっくり目を閉じてもう一度開ける。

そしてその瞳で四永を見つめて話し始めた。

「それはね、四永君にはまだ学生として、未成年の人間として保障されている自由を感じてほしいから。」

「自由?」

「ええ。」

「どういう意味ですか?」

「四永君は、確かにとても仕事ができる頼りがいのある木漏れ日家の一員よ。それは客観的事実だし、誰が評価してもそう結論付けられるわ。でもそれと同じくらい変わらないもう一つの事実は、四永君はまだ中学生だということ。中学生だから制限される自由があるように、中学生だからこそ保証される自由もあるわ。でも今の木漏れ日の大人たちのほとんどは、保証されるべき事由を大幅に制限して、木漏れ日の家に縛り付けて、周りからの高い評価こそがすべてというふうに四永君に思い込ませておきながら、それを十分に与えないことで四永君の心を苦しめている。私はその大人が私に掛けようとした柏から、あの手この手で逃げて、四永君の言う例外ばっかり作ってきた人ね。こういう大人はいけないと思ってる。こういう教育ばっかりするのはいけないと思ってる。四永君のような学生に保証された自由をしっかり守っていきたいの。これは少しずつ木漏れ日の家に広まりつつある考え方ね。だから、基本方針だってできたのよ。」

(あれ、何言ってるんだろう、私。まだまだだなあ。こうなったら勢いで押し切るしかないか。)

「だからね、まだ木漏れ日の中の世界や評価がすべてだと思うのはもう少し待ってほしいの。もう少し外を見て、他の自由に触れて、それから考えてほしい。」

四永が目を伏せる。

雫は何も言わずに待った。

(伝わったかなあ。自信ないなあ。)

「一十さんは僕の憧れなんです。」

「えっ。」

「驚きましたか?」

(ここではいって行っちゃだめよ、私。)

「いいえ、素敵な方だものね。仕事もできるし、仁義に厚い人を思いやれる優しい方よ。知ってるわ。残念ながら私は好いていただけなかったけれど、いい方だってことくらい知ってるわ。」

四永が嬉しそうに頷く。

「だからまだ一十さんに担当の役割から外れてほしくないんです。でも僕が何か言ったところで、一十さんはまだ僕が学生だからと真面目に取り合っていただけなくて。それでいらいらしていたんだと思います。八つ当たりのようなことをしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。」

四永が深く頭を下げる。

(八つ当たりでもあながちないと思うけど、良かった。落ち着いてくれた。)

「いいわ、気にしてないから。ちょっとすっきりした?」

「はい。もう少しだけ余裕を持ってみたいと思います。」

「ええ、そうして。」

(次のお客様がお待ちかねね。そろそろ終わらないと。)

雫がちらっと腕時計を見ると四永は慌てて立ち上がった。

「長居をしてしまいました。申し訳ありません。それではまたの機会に。」

「ええ、またね。」

四永が立ち上がり雫に一礼した。

「失礼いたします。」

「はい。」

四永が扉の方へ歩いていくとき、ふっと視線を動かして雫がはっとする。

(これたぶん盗聴器だ。しかも魔具。こんなに手の込んだものをこんなにこっそり置いて行くなんて、相変わらずねえ。気づかなかった。)

 四永が扉を開けると森崎が一礼して四永を見送った。

「雫様もう一人お客様が。」

「ええ分かってるわ。お通しして、華原秩序会会員でしょう。」

「はい。」

森崎が廊下に出るのと入れ違いに華原が入ってくる。

「突然伺ったにもかかわらず、お通しいただき恐れ入ります、雫様。」

「華原秩序会開院、ご挨拶申し上げます。いかがなさいましたか?」

(絶対にこの人を怒らせ茶いけない。絶対に。)

「雫様に少々お話をしたきことがございます。」

「伺いましょう。どうぞおかけください。」

雫は華原に四永がさっきまで座っていた椅子を促し立ち上がる。

「いかがなさいましたか?」

「いえ何でも。」

そのままテーブルの下に身をかがめ、小さい金色の金具を手に取る。

(四永君の会話を聞かれたのは百歩譲って大丈夫としても、これからの話し合いは聞かせられないなあ。)

「少々お待ちください。」

部屋を出た雫は森崎に無言でそれを渡した。

(決して壊さず、絶対に棄てずに、無音の場所に置いておいて。)

(畏まりました。)

部屋に戻った雫が、華原の正面の席に座りなおす。

ずいぶん前に淹れた紅茶はもうほとんど残っていない。

紅茶一杯で相手にできる時間はとっくに過ぎている。

「お待たせいたしました。どういったご用件でしょうか?」

「その前に、質問に質問で返すご無礼をお許しください。先ほどの魔具は?」

雫がポーカーフェースを作り直す。

「さすがですね、入ってすぐにお気づきになられるとは。」

「誰の仕組んだ小道具ですか?」

「おそらく貝さんかと。」

「四永様とお会いになる前にこちらにいらしていたのですか?」

「ええ。」

「なぜ四永さんとお話になる時に処分されなかった?」

「今しがた気づいたのです。全くしてやられましたわ。あの方にはいつまでたってもかないません。」

華原が雫を睨む。

(何か敵視されてる。不本意だなあ。)

「わたくしが嘘をついていると?」

華原は答えない。

(そうですか、ではその嘘つきにどういったご用件でしょう。)

「そうですか、それではそろそろ本題に入りましょうか。こちらの都合で恐縮なのですが、この後14時から約束がありまして。」

「承知いたしました。それではお言葉に甘えまして。」

華原の目つきが鋭くなる。

「いつまでおふざけをお続けになるおつもりか。」

華原の声が大きくなる。

雫は決して取り乱さない。

「何のことでしょう?」

「なぜあの時一十様を魔道良研究所担当の役割から解任されなかった。」

(ええ、いいって言ったじゃん!なんで!)

「あの場でもご説明をした通り、あれらの理由から早々に第1種申請をすることは性急すぎると判断したためご提案いたしました。そして他の出席者からも合意を得ましたし、あの場において秩序会から出席された筆頭である華原秩序会開院からも合意を得たとわたくしは認識をしておりましたが。」

(もし、ご不満をお持ちなら私だけでなく、あの場で申していただきたかったですねえと言うのは我慢しよう。)

雫はこれでもかというほどに穏やかな表情を崩さない。

「木漏れ日の家の秩序においてあの方の役目は既に終わっている。」

「ここ最近の一十さんの立ち居振る舞いが木漏れ日の品位に反するというお話は噂で聞き及んでおりますが、それだけで決めつけるのは少々論理性を欠いていると思われませんか。」

華原が急に黙る。

(おっ、伝わったかな。)

「確かに不用意な発言でした。お詫びいたします。ですが、雫様がされていることは、四永様を甘やかしたことに他なりません。あの方には、木漏れ日家で今後重要な地位に就いていただかなければなりません。まだ未成年だからと甘やかされては困ります。」

(あれ、華原って四永君の担当だっけ?たぶん違うよね。今の四永君は、教育係が付くような状況じゃないし。だとしたら、華原は何にそんなに腹を立ててるんだろう。)

「未成年者を担当の役割に就けないという基本方針には、秩序会からも賛同を得ていると理解しておりましたが。」

「ケースバイケースという言葉や本音と建前という言葉が、雫様の辞書にはないのですか。」

(ねえなんで今日はそんなに怒ってるの。私何したよー。さすがにこれだけ一方的に責められたら、こっちだって攻撃したくなるけど、今は我慢。ただただ我慢。)

「華原秩序会会員、恐れながら何か焦っておられるのですか。華原秩序会会員らしくない。わたくしは、華原秩序会会員はもっと冷静な方だと思っております。もっと周りを俯瞰できる方だと思っております。」

華原の表情が落ち着く。

(よししばらく黙っておこう。)

「取り乱しました。申し訳ありません。」

「いえ、こちらこそ察しが悪く申し訳ありません。木漏れ日の内政に疎いものですから、華原秩序会会員が焦っておられる理由が分からないのです。」

二人の間に沈黙が流れる。

「今回の一件、大ごとになりそうなのですよ。その時、一十様ではきっと十分な対応ができないと思っております。」

(本音だ。たぶん本音だ。なら確認しておかないと。)

「そのご発言は、華原秩序会会員ではなく、華原個人の発言として私は聞けばいいでしょうか?」

「そうしてください。」

「であれば、それは忠告ですね。お願いいたします。」

「雫様が基本方針を盾として、四永様を魔道良研究所担当にされなかったご判断は、賢明だと思います。この基本方針は、春宮様が頑として譲らず押し切って成立させたものですから、それに背いたとなれば、それはそれで問題になります。」

「はい、わたくしの世代代表としての立場もありましたので。ですが、反対派が根強く、今現在も残っているということも理解しております。」

二人が長い溜息をつく。

「決まってしまったものは仕方ありませんね。雫様、責任をもって最後までやり遂げてくださいね。」

「はい。」

(内容が全然伴ってないけど。まあいいや。)

「そして貝様にはくれぐれもご注意を。」

「承知いたしました。」

「あと、水香様にはどうか精いっぱいのお心配りを。」

「はい、そのようにいたします。」

「そして、春宮様をはじめとした他の木漏れ日の方々との繋がりをどうか大切に、慎重になさってくださいね。」

「はい、最善を尽くします。」

「それから、魔道良担当や世代代表のお仕事も手を抜かれませんように。」

「はい、そのようにいたします。」

(いつまで続くんだろう。会った時はいつもこんな感じだけど。)

「最後に。」

華原が雫の両肩に手を置いた。

「今日の会議の進行役、大変お上手でした。まだまだ改善の余地は山ほどございますが、その調子で腕を磨いてくださいませ。」

(あー。)

「はい更に邁進いたします。華原。」

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